再会と帰還

 セバスはいつも通りに朝から街へと出ていた。宿に一人残ったデミウルゴスは自分も出掛ける事にした。行き先は情報屋の元だ。調べるよう頼んでおいた様々な情報もそろそろ集まった頃合いだろうと踏んでの事である。
 回る順番を特に決めていた訳ではなく何となく最初に訪れた情報屋の男は、デミウルゴスの姿を認めると愛想よく笑いかけてきた。
「おはようございます、デミウルゴスの旦那」
「やあおはよう。頼んでいた情報はどうなっているかな?」
「集まってますよ。まずリ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級「漆黒」についてなんですが、裏が取れました。エ・ランテルの共同墓地でアンデッドが大量発生した事件で数千のアンデッドを薙ぎ倒して首謀者を討ち取ったのは本当だそうです。その他にも、二人でギガントバジリスクを討伐したとかゴブリン部族連合の殲滅とか。本当にこの短期間で二人でやったなら堕落の果実に並ぶ実力を持ったパーティかもしれませんね」
「ほう、それは興味深い」
 心の底から興味深いとデミウルゴスは思い返事を返した。この国で最強と言われるレメディオス・カストディオの実力を見て人間の強者があの程度ならば大した事はないと思っていたが、人の中にも警戒すべき強さを持った者はまだいるかもしれない、という事だ。
「二人組といいますがどんな構成なのでしょうね?」
「グレートソード二刀流の戦士と第三位階を使う魔法詠唱者マジックキャスターの二人組だそうです。名前は、戦士がモモンで魔法詠唱者マジックキャスターがナーベ、とかいうらしいですね」
「モモンとナーベですか…………モモンとナーベ……」
 その名前に引っかかるものを感じデミウルゴスは目線を伏せ考え込んだ。
 あまりにも都合良く考えすぎだろうか、だが符合してしまう。モモンとナーベが、もしモモンガ様とナーベラル・ガンマならば、漆黒の業績も少しも不思議ではないのだ。まさかモモンガ様御自ら人の中で冒険者に身を窶し情報収集に当たっているのだろうか。偉大なる魔法詠唱者マジックキャスターであらせられる筈のモモンガ様がグレートソード二刀流の戦士という点が解せないがモモンガ様ならば戦士に変装する魔法を使われる事も可能だろう。ナーベラルは二重の影ドッペルゲンガー故にナザリックの中では数少ない人間の中に溶け込める容姿を持った者、供回りとしては最適かもしれない。
 ただの偶然だという可能性だってある、だがただの偶然で片付けてしまうには漆黒の業績は飛び抜けすぎているし、偶然なら偶然でいい、また探せばいいだけの話なのだ。
 漆黒の二人、モモンとナーベがモモンガ様とナーベラル・ガンマかどうかを確認する。それが急務と思われた。
「漆黒はエ・ランテルを拠点に活動しているのですね?」
「はい、そのようで」
「聖王国からは北に向かえば着きますか?」
「大城壁から街道をずっと北上していって、リ・エスティーゼの王都から南東に街道を辿っていけば一ヶ月位で着きますかね」
「それでは時間がかかりすぎます! もっと近い道はないのですか!」
「……えっ、あの……そうですね、大城壁を北上して山脈を越えたところにある砦から山脈沿いに東に向かうともっと近いと思いますが……街道はないですよ?」
「構いません!」
 デミウルゴスの勢いに情報屋の男は気圧されている様子だったが構っている余裕はデミウルゴスにはない。こういう時に地図がないのが本当にもどかしい。金を入れた革袋を取り出して無造作に金貨を掴み取り情報屋の男に握らせる。
「いい情報をありがとうございました」
「……えっ? いいんですか? 他にもまだ頼まれていた情報が……」
「今の話が聞ければ十分です、それでは」
 革袋をしまうとデミウルゴスは踵を返し駆け出した。その後ろ姿を情報屋の男はぽかんと眺めた。いつも優雅で余裕を崩さないデミウルゴスのあんな姿を見たのは初めての事だったからだ。
 宿までデミウルゴスは必死に駆けた。セバスが外に出ているのももどかしい。宿に戻って影の悪魔シャドウ・デーモンを使ってセバスを探し出し呼び戻してこの話をしなければならない。ホバンスになどいる意味も価値ももう欠片もない、今は一刻も早く漆黒についての真実を確認せねばならない。
 宿まで戻ると、不思議な事にセバスが部屋にいた。慌てた様子でドアを開け駆け込んできたデミウルゴスの様子をセバスは不思議そうに眺めていた。
「お帰りなさいませ、随分と慌てたご様子ですが何かあったのですか」
「ああ、あったとも。今君を探して呼び戻そうとしていたところだ。どうして宿に?」
「冒険者組合から手紙を預かって参りましたので、わたくしでは読めませんし一人で開けるのもどうかと思いお待ちしていたのです」
「……手紙? 誰からだね」
「漆黒、という冒険者チームからだそうです」
 それを聞いた途端にデミウルゴスはテーブルまで駆け寄り、上に置かれた手紙を手にして急いで封を切っていた。
 もしかしたら、という予感がある。もしかしたら、デミウルゴスとセバスの名声が彼の方に届いたのではないか。彼の方の名が遠いこの国にまで届いたように、デミウルゴスとセバスの存在も見つけて貰えたのではないだろうか。
 中に入っていた便箋を開くと、そこに書かれていたのは紛う方なき日本語だった。

『拝啓
 突然のご連絡失礼いたします。
 堕落の果実のお二人のご高名は遠くこのエ・ランテルにまで届いております。
 もしかしたら私の知る方ではないかと思いお手紙を認めさせていただきました。
 アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ、この言葉に覚えがあればご連絡ください。
 我々はエ・ランテルの黄金の輝き亭という宿に逗留しています。
 それでは用件のみですが失礼いたします。
敬具
モモンとナーベより』

 ――アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ。
 間違いがない。間違えようがない。興奮でデミウルゴスの手は震えていた。何も言わずに便箋をセバスへと差し出す。
「わたくし字が読めませんが……」
「君にも読める字で書かれている。いいから読みたまえ」
 デミウルゴスの言葉に不思議そうな顔を返しながらもセバスは便箋を受け取り目線を落とした。その鉄面皮が驚愕の色を帯びるのにそう時間はかからなかった。
「……これは」
「モモンとナーベ、この名前で連想されるものはないかい? 私が急いで宿に帰ってきたのはそれを君に伝えて一刻も早くエ・ランテルに発ちたかったからだが、これではっきりした。セバス、急いで支度を。すぐにエ・ランテルに向かう」
「かしこまりました」
 この手紙を見てしまってはセバスとて否も応もない、手紙を大事にしまいこむとすぐに身支度を整える。足早に二人は部屋を出て廊下を抜け階段を下りる。
「親父、我々はエ・ランテルへ向かいますので冒険者組合にはそのように伝えて下さい!」
「あっ、はい」
 宿の親父はセバスの言葉に慌てて返事を返したがセバスは返事など聞いてはいなかった。デミウルゴスとセバスは宿を飛び出して東の城門へと急いだ。
 もしかしたら罠という可能性もないではない。デミウルゴスとセバスのようにユグドラシルからやってきた存在ならば有名なギルドだったというアインズ・ウール・ゴウンの名を知っていても不思議ではない。だが侵入された事のない第十階層をずっと守っていたナーベラル・ガンマの名を知る者はアインズ・ウール・ゴウンの外部にはそう多くはないだろうし、何より罠なら罠でそんな不愉快で人を虚仮にした罠を張るようなふざけた者など全力で叩き潰すだけだ。
 それから二人はただひたすらに駆け続けた。東へと駆け抜け続け、大城壁に至って北上し、険しい山脈の道を抜けて砦へ至るとそこから山脈沿いに東へと向かう。二人とも睡眠も休息も食事も必要としない、不眠不休で走り続けられる。雨も風も関係はない、何の言葉もなく、ただ黙々と全速力で二人は走り続けた。
 一分でも、一秒でも早く、あの方の元へ。その思いにおいて事ここに至って二人の心はようやく一つとなっていた。山脈を抜けてからは村落を探し道を聞き、一心不乱に二人はエ・ランテルへと向けて駆け続けた。
 どれだけの日数がかかったのか正確なところをデミウルゴスすら把握していない。それ程に夢中だった。ようやく平野の向こうにエ・ランテルの堅固な城壁が見えてきた。
 心が逸る。デミウルゴスは勿論の事セバスも必死だった。城門へと急ぎ、アダマンタイトのプレートを見せて名乗り足早に検問を抜ける。通行人に黄金の輝き亭の場所を聞く声色も必死になってしまっていた。エ・ランテル一の高級宿屋の建物は立派ですぐに分かった。抉じ開けるように入り口を開け飛び込むように中に入ってカウンターへと駆け寄り、漆黒の二人が逗留している部屋を聞く。
 部屋番号を聞いてどたどたと階段を駆け上がり目的の部屋のドアをノックする。ドアを開き中から顔を見せたのは、紛う方なきナーベラル・ガンマ、その人だった。
「セバス様、デミウルゴス様……! アインズ様が仰っておられたのはやはり本当だったのですね」
「アインズ様……? それは一体誰なんだ、ナーベラル、どういう事なのだね、君と一緒にいるのはモモンガ様なのではないのか」
「ここでは何です、とりあえずお二人とも中へどうぞ」
 確かに廊下でするような話ではない。言葉に従いデミウルゴスとセバスは部屋の中へと入り、ナーベラルが情報収集対策の魔法をいくつか部屋にかける。
「わたくしと一緒に冒険者をしておられるのはモモンガ様なのですが、モモンガ様は今はアインズ様……アインズ・ウール・ゴウン様という名前を名乗っておられるのです」
「成程そういう事だったのか。それで、モモンガ様……いや、アインズ様は今どちらに?」
「今はナザリックに戻っておられます。お二人が到着した事をお知らせしますのでしばしお待ちを。〈伝言メッセージ〉」
 ナーベラルが〈伝言メッセージ〉でデミウルゴスとセバスの事を伝え、しばらくすると〈転移門ゲート〉ののっぺりとした黒い闇がぽっかりと開いた。デミウルゴスとセバス、ナーベラルは跪き頭を垂れる。
 はっきりと伝わってくるその気配だけで頭を上げなくても分かる。ゲートの闇の中から現れたのは、再会をどれ程待ち望んだだろう、ナザリック地下大墳墓に唯一人最後まで残って下さった慈愛溢れる至高なる主人、その人に違いなかった。
「三人とも、面を上げよ」
 威厳ある声が響く。我知らず心が歓喜に打ち震えてしまう。頭を上げると、黒に金の縁取りをした豪奢なローブに身を包んだ尊き白磁のかんばせ、記憶と寸分の違いもないモモンガその人の姿があった。
「セバス、デミウルゴス、よくぞ戻った。手紙が届くのにかかる日数を考えると連絡が来るにしてももう少し先になるかと思っていたが……」
「モモンガ様、いえ、今はアインズ様でございましたね。書状を賜り、我等二人一秒を惜しんで急ぎ馳せ参じました。シモベたる我等の事を気にかけて頂けた事感激の至りにございます」
「当然ではないか、ナザリックの者は全て我が友が残してくれた子供のようなもの、一人たりとも欠ける事があってはならぬ。そして、まずはアインズ・ウール・ゴウンの名を勝手に名乗った事を謝ろう。もしお前達に異議があるというなら名を戻す事も考えるがどうだ?」
「そんな、異議などあろう筈がございません、その名を名乗られるのにアインズ様以上に相応しい方などおられません」
「同意見でございます」
「そうか、それならばよい。この地に来てお前達の姿が見えなかった時は肝を冷やしたが、生きている事はマスターソースで確認出来た故探していたのだ。原因は不明だがナザリックがこの地に転移してくる際、二人だけが聖王国に飛ばされてしまったという事か……謎が多いな」
 そう言うとアインズは顎に手を当て考え込んだ。邪魔は憚られるが気になる事、聞きたい事は山のようにある。まず一番気になる事からデミウルゴスは聞く事にした。
「恐れながらアインズ様、先程ナーベラルがアインズ様はナザリックに戻られていると言っておりましたが、ナザリック地下大墳墓ごとこの世界に来た、という事なのでしょうか?」
「ん? ああ、そうだ。このエ・ランテルからそう遠くない場所にある。この世界、という言い回しからするとお前は我々がユグドラシルとは別の世界にいるという結論に独自に行き着いたという事か、デミウルゴスよ」
「左様でございます」
「成程、ナザリック一の智恵者という設定は伊達ではない訳だな。戻ってくれた事心強く思うぞ」
「勿体なきお言葉にございます」
 ナザリック地下大墳墓がこの地にあり、ナーベラルがいるという事は他の者も恐らくはナザリックごとこの地にやって来ているのだろう。栄光あるナザリックと仲間達の存在を確認出来たデミウルゴスとセバスの顔に安堵が浮かぶ。
「それで冒険者として名声を高めて名を広げる作戦をとった、という訳か」
「左様です。その他にも冒険者として地位を高めれば身一つで聖王国に放り出された我々の身分の問題も解決出来ましたし様々な情報が集まりやすくなりましたので。またナザリックを探し旅をする事を想定しておりましたので、アダマンタイトのプレートは人類の生息圏であれば何かと役に立ちます。御自ら冒険者をされているアインズ様には釈迦に説法でございましょうが」
「そんな事はない。ただな……亜人十傑だったか? それと、最近聞いたが聖王国の王都の悪魔事件……かなり華々しい活躍なのだが」
「お褒めに与り恐縮です」
「うむ……ただな、我々漆黒の名声を高めるに当たってな……我々の名声と堕落の果実の名声が半々ぐらいになってしまってな……」
 言いづらそうなアインズの言葉にデミウルゴスもセバスも顔色を真っ青にする。特に作戦を考案したデミウルゴスなど生きた心地がしていない。
「申し訳ございません! アインズ様の名声を広めるお邪魔になってしまうなど一生の不覚、この不手際、一死をもって報いたく……!」
「待て待て待て、お前達はどうして何かあるとすぐに死にたがるのだ? いいかデミウルゴスにセバスよ、死ぬことは許さん。お前達がもし何かあって命を落としたとしてもすぐに復活させる。軽々しく死ぬなどと二度と口にする事のないようにな」
「何と慈悲深い……! しかし、それではどうやってこの過ちを償えば……!」
「よい、気にするな。全てはナザリックに戻る為にやった事なのであろう? それならばナザリックの利益に適った行いであろう。ナザリック一の智者とナザリック格闘戦最強の二人がいない事はナザリックにとっては大きな損失なのだからな」
 (ナザリックのシモベにとっては)あまりにも寛大なアインズの言葉に三人の忠誠心ゲージは既に天井を突き抜けていた。自分が墓穴を掘っている事にも気付かずアインズはうんうんと自分の発言を噛み締めて頷いていた。
「しかし二人とも本当によく私の元まで戻ってきてくれたな」
「それについてはデミウルゴスの智謀あってのものです。そうでなくてはこれ程短期間でアインズ様まで届く名声は高められなかったでしょう」
「それを言うならセバスのおせ……善行は名声を高めるのに大いに役立ちました。わたくしだけでは人間の間で名声を高めるのは難しかったかと」
 互いに称え合う二人を見て、二人で支え合ってきっと絆が深まったのだなとアインズは考えた。故に提案してみることにした。
「二人とも今回の事で絆が深まったのだな。それではどうだ、これからも一緒にコンビで働いてみるか?」
「そればかりは! いくらアインズ様の仰せと言えども了承いたしかねます!」
「わたくしも同意見です! それだけはどうかご勘弁を!」
「お、おう……」
 ある意味ぴったり息が合っている二人の答えにアインズは気圧されたので話題を逸らす事にした。
「というか堕落の果実とは凄いパーティ名だがデミウルゴスが考えたのか?」
「わたくしは反対いたしましたがデミウルゴスが強引に決めました」
「そうか、セバスは反対だったのか……私はなかなかいい名前だと思うのだが……」
「そ、そんな、アインズ様……わたくしは! わたくしは自分が堕落と関係しているなどと思われる事は至極心外でございます! わたくしは堕落とは無縁! 堕落が甘い果実と思っているのはこの悪魔だけで十分でございます!」
「お、おう……」
「何を言おうが負け犬の遠吠えだねセバス。アインズ様が認めて下さったパーティ名なのだよ? アインズ様が認めたのならばつまりそれはナザリックにおいては正義となるという事だ」
「ぐ……ぐぬ……」
 正義ってそこまで? と思わず素でアインズは聞きそうになりぐっと堪えた。悔しそうにギリリと歯噛みしているセバスは少し可哀想だが中々いい名前じゃないかとアインズは思うので仕方がない。
「それで、アインズ様。計画の現在の進捗はいかほどなのでしょうか」
「ん? 計画、進捗? 何の話だデミウルゴスよ」
「無論、世界征服でございます。聖王国について情報収集いたしましたがナザリックの力があればあのような弱小国を支配下に収める事などいとも容易い事にございます。ご命令さえ頂ければ直ちに征服して参ります」
 一瞬、何を言われているのかがアインズには分からなかった。というか頭が理解を拒んだ。デミウルゴスは一体何を言っている? 世界征服? 何で?
「……デミウルゴスよ」
「はっ」
「世界征服とは一体どこから出てきたのだ?」
「ナザリックひいてはアインズ様の威を示されるものと当然考えておりましたが……違う、のですか?」
「……お前がいない間に決めたのは悪いと思うが、ナザリックの方針は既に決している。優先すべき第一はナザリックの存続、次にナザリックの強化だ。維持費用の調達方法についてはいずれ考えなければならない故税収を得る為の領地を求めることもあるだろうが……世界征服を企ててまだ見ぬ強者を敵に回しナザリックの存続が危うくなるような事はしない。今はまだ周辺国家の情報収集の段階だ」
「はっ、浅慮を晒し大変失礼致しました……」
 しないのですか……と言わんばかりにデミウルゴスの表情はしょんぼりと萎れた。したかったんだな、世界征服、と思ったがそんなリスクを背負うにはこの世界の事はまだ分からない事の方が多いので可哀想だが黙殺する事にアインズは決めた。
「征服はしないがナザリックの強化の為に色々と調べねばならぬ事も多いし、情報もまだまだ集める必要がある。二人にはこれから目一杯働いてもらう事になるが頼めるか」
「なんと勿体ないお言葉……! わたくし共はあなた様のシモベ、ただお命じ下さればこの身が朽ちる時まで働き続けます!」
「デミウルゴスの言う通りです。アインズ様のご命令さえ頂ければどのような困難な命であっても遂行してご覧にいれます」
 はぐれていたこの二人も他のシモベ同様の強い忠誠心を見せるので正直なところアインズは若干引いていたのだが、それはそれとして無事に帰ってきてくれた事は本当に喜ばしい。様々な不安があったろう、苦労があったろう。それをねぎらってやりたい気持ちで一杯だった。
「その前にまずは二人ともナザリックに戻ろうではないか、皆に無事も知らせてやりたい。そして、それからお前達二人の冒険譚をゆっくりと聞くとしよう。ナーベ、引き続き留守を頼んだぞ」
「かしこまりました」
 そうして帰還したナザリックでセバスもデミウルゴスも感涙にむせんで号泣してしまったのも、書類に埋もれていたアルベドが幾分疲れた顔をして二人を出迎えて仕事を割り振れるデミウルゴスが帰還した事に(これでアインズ様との二人の時間が作れると)狂喜したのも、嬉々としてデミウルゴスが語った聖王国でのいともたやすく行われたえげつないマッチポンプの内容にアインズがドン引きしたのも、二人の小さな冒険のちょっとした後日譚としてアインズの心に残ったのだった。

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