覚えさせられた味
仕事中に立ち眩みふらついてしまったのを他の仲間達に大袈裟すぎるほどに心配されてしまったリンドウは、今日一日休んでいるようにときつく言い渡され自分のキッチンカーに戻ってきた。最近ずっと顔色が悪かった、どこか悪いのではないかと口々に心配されてしまうのが何とも心苦しく、無理をしてでも仕事をこなしたかったが諦めて皆の言葉に従う事にした。
原因は分かっている、睡眠不足だ。夜毎に身体を求められその疲労を癒すに足るだけの睡眠時間を確保できていない。次の日の準備がある事を考えると就寝を早めることもできないし朝起きるのを遅らせることもできない。自己管理の甘さではあるがにっちもさっちもいかない状況でもありどう解決したらいいのかは分からなかった。
毎日何事もなく就寝できればそれで問題は解決なのだが、そうは行かずに毎回流されてしまう。どうにかしなければと気ばかり焦るのにキキョウを前にするとどうにも押し負けてしまう。
とりあえず今日は睡眠をとり身体を休めよう、そう思ってベッドに入ったものの昼日中から寝ることなどほとんどなく不慣れなせいか寝ようとすればするほど意識が冴え渡っていく。
静かな部屋の中で意識に上ってくるのは昨夜の情事の記憶ばかりだった。振り払おうとぶるぶると頭を振るが何の効果もなく、昨夜触れられた箇所に順番に火が灯るようにじわりと熱を帯びる。
右に寝返りをうち布団の中に頭を潜り込ませ目を固く目を閉じるが息遣いや汗の匂いなどの付加的な記憶までもが蘇ってきて何の解決にもならないどころか逆効果を招いてしまう。熱に浮かされたように喘ぎ善がる己の姿が思い起こされてかぁっと頭に血が上る。布団の中がむわりと熱く息苦しくなってきて布団から顔を出すと呼吸はしやすくなるものの身体に灯った熱はそう簡単に消えそうになかった。
身体を休めるためにこうしているのだから余計な事は考えずに眠らなくては、そうは思うものの疼き出した身体を鎮める方法が分からない。このままではとても寝る事などできそうになかった。
とりわけ熱が篭り疼くのは、長い指でいいように掻き回されずっと絶頂に留め置かれるような気が狂うほどの感覚を味わった箇所だった。
あの感覚を思い出すだけで熱い吐息が漏れ出る。意思に反して物欲しげに窄まりが収縮し誘い込むように蠢いてしまう。身体はすっかり熱をもって布団を被っていると汗ばみそうなほど暑く、身体を苛む甘い疼きは強まるばかりだった。
このままでは耐えきれそうになかった。布団を剥ぎ枕に腰を預け上体を起こし、首筋に指で触れると甘やかな快感が身体を走り抜ける。そのまま昨夜キキョウの舌先が辿った跡を辿り指先を滑らすと、感触が鮮やかに蘇って息が荒くなる。
己がこれだけ快楽に弱く抱かれることを身体が求めてしまっているという事実はどうしようもなく情けなかったが、最早欲求に逆らえないほど身体は昂ぶってしまっている。作務衣の襟合わせの隙間から手を滑り込ませもう硬く立ち上がっている乳頭を指先で弄び潰すと、切なげな呻き声が押さえ切れず漏れ出てしまう。欲求のままに弄び続けると身体の中心に血流が集まっていき熱が増していくのを感じる。帯を解き下着の上から触れてみると硬く滾ったものがぴくりと動く。
このまま自慰で熱を吐き出せばきっとこの昂りは落ち着くだろう。だが今はそれよりも物欲しげにひくつく後ろの方に意識が向いてしまっている。めちゃくちゃに掻き回し快楽を貪りたい、そればかりが思考を占めてしまう。
下衣を脱ぎ去り、既に滴り始めていた先走りのぬめる液を指先に取り奥に手を伸ばす。指先が触れると誘い込むかのようにひくついてしまう事に激しい羞恥を覚えるが、穴を埋められる快感を覚えてしまった身体はそんな事では止められなかった。
滑った指先は思っていたより簡単に狭い孔に入り込むが、前からの挿入ではどれだけ背中を丸めても指先は浅い箇所で留まってしまう。構わずそのまま浅い箇所で出し入れを繰り返すと、押し寄せる快感がぞくぞくと背筋を駆け昇り同時に更に奥底が疼きを強めるのを感じた。
たまらなくなり一度指を外して身体を横に倒し横合いから中指を挿し入れ直す。前から挿れるよりは多少奥まで届くものの、疼く箇所を捉え切れずにもどかしさばかりが募っていく。
「あ、あぁっ……は、んんっ……ふ……」
指先が擦れる箇所から次々に快感が生み出されていくのに絶頂に至るにはどうしようもなく足りない。物足りなさともっと奥まで掻き回されたい欲求がどんどん強まって息が詰まる。このままではどうしようもない、諦めようかと思い指を抜いた時だった。
「もうやめちまうのかよ。そんなんで満足できんのか?」
唐突に上がった声にドアの方を見やるとキキョウが腕を組んでこちらを眺めていた。慌てて身体を起こし布団を引き寄せる。
「あ……兄弟子…………あの、どうして……」
「おめぇが具合が悪そうだっていうからあいつらにせっつかれてわざわざ様子を見に来てやったってのにいいご挨拶だな。まさか真っ昼間から欲情してドア開けた音にも気付かないほど夢中になっててめぇで慰めてるほど元気だとは思わなかったぜ」
「これは……その……」
どうにか言い繕いたかったがあんな恥ずかしい行為を目撃されてしまったのだから言い訳などある筈がない。語尾を濁してリンドウが目線を伏せ黙り込むと、ふんとキキョウが鼻で笑ってみせた。
「どうしたよ、続きはしねぇのか? 遠慮すんなよ」
「……それは…………」
夢中になっていたところを遮られて幾分頭は冷えたが、無遠慮な視線に晒されていることで動悸は速まっているし身体の奥底の疼きもまるで消えようとしない。むしろキキョウの姿を目にしてしまったことでもしかしたらという期待が意に反して膨らんでいく。言われた通りまだ昼日中だというのにこんなにも欲求が止められなくなっている己の自制心のなさには情けなさを通り越して呆れるしかないが、抑えきれないほど強いものが身体を苛んでいた。
「あの……兄弟子…………」
「んだよ」
「その……手伝って…………いただけない、でしょうか……」
恥ずかしさのあまりに語尾が消え入りそうなほど小さい声になってしまう。はしたない事を口に出した羞恥は自己嫌悪となって胸を締め付けるが、自分一人ではもうどうしようもないほど身体が欲してしまっている、あの長く美しい指に激しく掻き回され乱れたい、高まる期待に胸が高鳴る。
「自分では、うまく……できなくて、だから……」
「んで? 手伝うっつっても何すりゃいいんだ?」
「あの……指を……」
「指を? どうすんだよ」
「挿れて、ください……」
たまらなくなり顔を上げてキキョウを見ると面白げな顔でこちらを眺めていた。懇願するように目を見つめ口を引き結ぶとキキョウがにやりと口角を上げる。
「ゆうべあれだけしたのにまだ足りねぇのか? どんだけ好きなんだよ」
「……っ」
「ま、いいぜ。こんな真っ昼間からヤッちまうのを覚えたらますます抜け出せなくなっちまうかもしれねぇけどな」
楽しげな声で言い放ってキキョウはベッドまで歩いてくるとリンドウの下半身を覆っていた布団を剥ぎ取り、ベッドに膝を掛け乗った。身体を倒して息がかかるほど顔を近づけ、にいっと笑ってみせる。ごくりと息を呑むと、キキョウの指が口に突然突っ込まれる。
「おら、きっちり舐めろよ」
二本の指が口の中で動き回って舌を弄び、一人では得られない他人に触れられ与えられる快感にリンドウは思わずうっとりと目を細め飴でも味わうようにキキョウの指を貪り舐め回した。やがてキキョウの指が口から離れていくと、口寂しさに吐息が漏れる。
「おら、挿れてほしいんだろ、とっとと脚開け」
にやついたキキョウの言葉に逆らうことなどできずにおずおずと開脚し、恥ずかしい場所を陽の光の元に晒す格好をとらされてしまう。だが今のリンドウはもう羞恥よりも指に犯される期待に心を支配されていた。己の唾液に塗れた指先が窄まりに宛てがわれひやりと冷たさを感じ、先程己で広げておいたせいかつぷりと根元までスムーズに挿入される。
「はぁっ……あ……」
「挿れたぜ? これで満足かよ」
「あっ……そんな…………ぁ、動かして……掻き回して……ください…………」
「こんな所掻き回されて善がるなんざ本物のドスケベ野郎だな、そんなに欲しいのかよ」
「欲しい、です……」
声を絞り出すと、キキョウは楽しげにくぐもった笑いを漏らした。挿し入れられた指が蠢き始めもう一本の指が無理矢理孔を広げ入り込んでくる。
「ああぁっ! あっ、うぁっ、あ、ああっ……」
「指で掻き回されんのがそんなに好きかよ、ドスケベ野郎」
「は……あっ、きもち、いい……っ」
うねうねと動き回り内壁を擦り回す予測不能なキキョウの指の動きがずっと燻っていたもどかしさを振り払い絶え間なく与え続けられる快感がどんどん身体を昂ぶらせていく。待ち望んでいた分身体が敏感になってしまったのか、二本の指に犯されているだけで脚がぴんと張り背中が跳ねて絶頂をずっと味わわされる。
「ひぐっ、あっ……ああっ、あっ、ああぁっ……」
間断なく与えられる快楽は待ち望んでいたもので、欲望を満たしていくけれども、更に別の欲望を生み出してしまう。もっと硬く太く熱い肉で抉られたい、激しく犯されたい、そんな口に出すのを憚られるはしたない願望が高まっていく。思わず腕が動いて手がキキョウの上腕を掴んでいた。
「あっ……兄弟子……」
「なんだよ、もう満足しちまったか?」
「その……兄弟子のが…………欲しい、です……」
堪えきれずに口に出してしまうと、その内容のあまりのはしたなさに猛烈な恥ずかしさが遅れて襲ってきてキキョウを正視できず目を逸らしてしまう。くっくっと低い笑い声が聞こえてくるが、目を合わせることはできない。
「やっぱり指だけじゃ満足できねぇんだな、とんだドスケベになっちまったもんだ」
「……っ、あっ……」
指が引き抜かれる際の感触と開放感に甘い声が漏れる。孔を埋めていた存在感が失われて羞恥を忘れさせるほどの疼きはいや増すばかりで、もっと力強い存在に蹂躙されることに対する期待で打ち震えている。早く欲しい、そんな欲求がどんどん高まってキキョウの腕を掴む手に力がこもる。
「そんなに待ちきれねぇのか? ククッ、いっそこのままここでやめちまうってのも面白いかもしれねぇな」
「そんな……ひどい、です……このまま、なんて……」
思わず顔を上げると、愉快げに自分を見下ろすキキョウと目が合う。切なく吐息を漏らしながら訴えるように見つめると、キキョウはにいっと笑みを深めた。
「そんなに欲しいならお望み通りくれてやるよ、精々いい声で啼けよ」
キキョウの言葉に口中に溜まった唾を飲み込み、ごくりと喉が鳴る。帯を解く衣擦れの音が鳴って下帯が放られ、脚の間に割り入ってきたキキョウが腕を伸ばして枕を持ち去り、リンドウの背中の下に敷き腰を浮かせる。息を詰め見守っていると、先端が双丘のあわいを往復して撫ぜる。
「ああっ……兄弟子……もうっ……」
「そう急かすなよ、今くれてやるよ」
焦らされるのがたまらなくなり訴えると、ようやく先端が窄まりを押し広げ侵入を始める。
「ふあぁっ、あ、ああっ……あぁ、いいっ……」
「おいおい、まだ先っぽしか入ってねぇぞ、そんなにオレのチンポがいいのかよ?」
「はっ、あ……きもち…………いっ……あっ」
己の中に遠慮なくめり込んでくる、指とは比較にならない質量の熱と存在感に飢えが満たされていく。ゆっくりと引いては戻ってくる動きがもどかしくてキキョウの腰を足で抱え込み引き寄せて腰を動かすと、低い笑い声が漏れ聞こえてきた。
「てめぇで勝手に腰振って善がってるなんざどんだけドスケベなんだよ、他の奴らにも見せてやりてぇな」
「そんな、意地悪っ……言わないでくださ……っ……あ、もっと、強く……っ」
「ガンガン突かれねぇと満足できねぇのか? この分じゃ突っ込んでもらえんなら誰にでも股開く淫乱になっちまうな」
「は、ちがっ……ああっ、あっ! は、あっ、うあぁっ、あっ、ああっ!」
希望通りに突き上げが急激に激しさを増し、襲い来る快楽の波に飲まれ思考などどこかに四散してしまう。奥を突かれる度に背筋が震え高い声が漏れ出て息苦しさが増し全身が痺れてしまうような強烈な快感が頭の芯を溶かしてしまう。
突き上げが緩まないままキキョウの肩に左脚を抱え上げられ、結合がより深まる。より奥を抉り擦られ、強すぎる快感に意識も朦朧としてくる。
「はっ、あ、いいっ……そんなっ……あ、イクっ……も……イクぅっ……!」
「好きなだけイッちまえよ、このドスケベな穴にチンポ突っ込まれねぇとイケねぇんだろ? 下手な雌豚より男狂いじゃねぇか」
「ちがっ、ああっ、あ……っ、も、うあっ、だめっ……イクっ……!」
罵られればそれだけ淫蕩な己を自覚してしまいいけないと思うほどに快感が強まる。堪えきれずに絶頂を迎えてしまい背筋が大きくしなる。己が吐き出した白濁が腹や胸を汚し熱さに身震いするが、内側を突き上げる激しさはまだ止まずなお激しさを増していく。
「オレも、そろそろ……出すぞっ……!」
「はぁっ、あっ、あにでしぃっ……はっ、ああっ、あああっ!」
程なくして内側でキキョウの剛直が膨らみ弾け、どろりと熱いものが奥底へと注ぎ込まれる。その熱さにリンドウはもう一度背をしならせ身を震わせた。
その後リンドウが目を覚ますと夕方になっていて、身体は拭かれて服を着せられてベッドに寝ていた。キキョウに礼を言わなければと思うもののそもそも大元を辿れば今日動けなくなりあんな醜態まで晒してしまったのはキキョウに原因がある。複雑な思いを抱えているところでユーカリが夕食の準備が出来たと顔を見せたので、休んだのかそうでないのか疲れのあまり取れていないリンドウは覚束ない足取りで夕食へと向かうのだった。
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