瓢箪から駒も大魔法使いなら可能
夕食の賄いが出来たので、リンドウはまだ姿を見せていなかったディルとチューベローズを探していた。特に食事となると異様な執着を見せるチューベローズが飯時になっても現れないのは珍しい。あちこち探し回っていると、茂みの向こうから二人が争うような声が聞こえてきた。
「やめてくださいチューベローズ様! それは生命の理を曲げる禁呪でしょう!」
「何を言うか、我輩がこの魔法を成功させれば食品流通に革命が起き飢える民が減るのじゃぞ! そのような偉業を目の前にして禁呪がどうのと怯んでなどおられるか!」
どういう訳かは分からないが何やら言い争っているようだった。とりあえず止めなければと思い声のする方向へと向かうと、揉み合うディルとチューベローズの姿が見えた。
「おい、二人ともやめないか」
声を掛けたところで呼び掛けに気を取られたディルの腕の中から僅かな隙を見逃さずにチューベローズが抜け出し宙空に飛び立つ。
「レーナ・ニ・リトワニ!」
チューベローズが呪文を唱えると辺りが眩い光に包まれた。あまりの眩しさに思わず腕で目を覆い、しばらくしてそっと目を開けると光はもうなかった。だが様子がおかしい。ディルが何やら慌てた様子でこちらを見ているし、先程までは丁度いいサイズだった筈の服が妙にだぼついて下衣がずり落ちそうになり、慌てて手で引き上げる。留め紐はしっかりと結んでいた筈なのにどういう訳だろう。上着も肩幅と袖が余って手の甲を覆ってしまっているし、足にぴったりだった筈の靴も爪先が余ってぶかぶかになっている。どうにも自分が縮んでしまったようにしか思われなかった。
「……おかしいのう、吾輩は確かにそこの蛙に呪文をかけた筈なのじゃが」
「おかしいのうじゃありませんよチューベローズ様! 明らかに失敗してるじゃないですか! 早く元に戻してください!」
チューベローズの目線の先には確かに茂みの葉の上に乗った小さな蛙がいた。しかしその蛙に呪文をかけるのに失敗した、だとしたらこの身体の異変はもしかして、リンドウに呪文がかかってしまったという事なのだろうか?
「あの、ディル殿……俺は今、一体どうなって……」
声を出してみて明らかな違和感に気付いた。いつもの自分の声ではない、この声はまるで変声期前の少年、というよりは女性の声だ。
「あの……大変申し上げにくいのですが……リンドウ殿……」
「はい……」
「どうやら呪文の失敗で、あなたが女性の身体になってしまったようで……」
「……は?」
ディルの言葉がすぐには理解できず、リンドウはただ呆然とディルを見つめた。少し落ち着いたところで腰に手をやると確かに女性のような丸みのあるくびれが確認できたし、目線を胸元に落とすと作務衣は膨らんだ胸元に押し上げられていた。
「え……えっ?」
「申し訳ない、すぐに元に戻させますので……チューベローズ様、早くしてください!」
「残念じゃが、元に戻す方法は今の所分からん。調べるにはちと時間がかかるのう」
「えっ、え、えぇっ!?」
あまりにも想像を超えた不測の事態にリンドウの頭は完全に混乱しきっていた。自分が? 女に? 何で? しかも今の所戻す方法は分からないようだし見つかるかどうかも不確定だ。これから一体どうやって生きていけばいいのだろう、急にそんな漠然とした不安が胸を包んだ。
とりあえず下衣の紐を出来る限り引き絞って結び直したリンドウは、ディルとチューベローズと共に仲間たちの元へと戻った。
「えっ、どうしたのリンドウさん!」
「リンドウさん……? ですよね……?」
「おっ、女の人に、なっちゃってます……!」
マジョラムとユーカリとミツバが口々に心配そうな声を上げるが、無理もないだろう。リンドウ自身にだって今のこの状況は飲み込めていない。
「それが……チューベローズ様の呪文が失敗してこのような姿に……止めきれず本当に申し訳ない……」
「そうじゃ、お主のせいじゃぞディル、お主が邪魔をしなければ吾輩は蛙相手に呪文を成功させていた筈なのじゃ!」
「どの口が言いますか! もう勘弁なりません、今日の夕食は抜きです!」
「何じゃと! お主は吾輩が飢え死にしてもよいと申すか!」
「一食抜いたぐらいで死ぬような繊細さは持ち合わせておられないでしょう」
チューベローズとディルのやり取りを横で眺めながらマジョラムが深い溜め息をついた。
「まあ、要するに呪文が失敗して、今の所戻せないのね。オッケー、チューベローズ様を手伝ってあたしも元に戻す方法を一緒に探すからさ、そんなに気落ちしないでよリンドウさん」
「ああ……すまんな」
「……声まで女の子だからなんか誰と話してんのかよく分からなくなっちゃうわね……。オレガノも手伝ってくれる?」
「うん、勿論だよアネキ。何かその……このままだと目のやり場に困っちゃうし……」
マジョラムの横にいたオレガノはリンドウから目線を逸らし心持ち頬を赤らめながら返事をした。出来るだけ紐は引き絞ったもののこのぶかぶかの作務衣では、胸元が大きく開いてしまっているから確かに年頃の少年にとっては目のやり場には困る光景だろう。どうしようもない申し訳なさに襲われ遣る瀬ない気持ちになる。
「うーん……とりあえずまずはご飯にしよっか。お腹が空いてたらいい考えも浮かばないしさ!」
「そーだな、腹減っちまったぜ! とっとと食おうぜ! 今持ってくっからよ!」
場の空気を払拭するようにブーケガルニがランチの提案に乗り、鍋を運んでくる。食事をするような気分にはとてもなれないが、午後もよく働いたので腹は空いている。あまり皆に心配をかけてもいけないだろうとも思いリンドウは食卓に着き、胸を覆った不安を隠せないながらも食事を始めた。反省が必要だろうという事でディルの宣言通りにチューベローズは夕食抜きになり、恨めしげな目線をディルに向けている。女性慣れしているフェンネルは多少の驚きは見せたもののもう平静そのものだし、ブーケガルニは魔法って凄えなといういかにも彼らしい反応を返していた。明らかに性的なキキョウの視線が刺さってくるし、他の者はちらちらと心配そうな目線を送ってくるし、バジルに至っては恥ずかしいのか目を合わせてもくれなかった。身の丈に合う服が今すぐ欲しい、心からそう思った。
「リンドウの今の背丈はわたしと大体同じくらいかな? 明日になっても戻れなかったら服を貸すから、すぐ声をかけておくれよ。あっ、いつもの作業着じゃなくて街に遊びに出る時とか用の普通の服だから安心しておくれ」
「あ、ありがとう、ネリネ」
「どういたしまして」
俯きがちなリンドウの内心に気付いたのか、ネリネがそう声をかけてくれた。普段のネリネのの作業着だと今よりも露出が増してしまうのでとても着られないが、普通の服ならばこんなありがたい申し出はない。後はエプロンがあればマルシェのスタッフとしての体裁は整うだろう。
あと、当面残る問題は一つ、とても重要なものがまだ手付かずで残っていた。
食事を終えた後ランチがリンドウの元へやって来た。丁度相談しようと思っていたところなのでランチの言葉を待つ。
「ねぇリンドウ、寝る場所なんだけど……さすがにその身体で男の人と一緒はちょっとまずいよね……」
「ああ……」
「だからさ、今日は私と一緒に寝ない?」
ランチが口にしたのはリンドウがまさに抱えていた一番の懸念だったのだが、解決策が想定外すぎた。ランチと、一緒のベッドで、寝る? 到底そんな事はできはしない、どう考えても無理に決まっている。リンドウは必死にふるふると首を横に振った。
「そ、それはいかん! 絶対にいかん! いくら今は身体が女とはいえ俺は心は男のままなんだぞ!」
「えっ、でも……」
「あまりにも無防備すぎる、前々から思っていたがランチは自分が妙齢の女性であるという自覚が足りないのではないか!? 俺が変な気を起こしたらどうする! 何か間違いがあってからでは遅いのだぞ!」
「うっ……うう……でもじゃあ、どうするの……」
あまりのリンドウの剣幕にランチはたじろいで弱々しい声で尋ねてきた。さすがに語気が荒くなりすぎた、反省して一つ息をつく。
「……すまん、言い過ぎたな。俺は今日はキッチンカーの作業場で寝る」
「ダメだよそんな所、床で寝たら身体痛くなっちゃうし寒くて風邪引いちゃうかもしれないし……」
「慣れているから問題ない。徹夜の作業をする事もあるから毛布もちゃんと用意してある。兄弟子を床で寝かせるわけにもいかないしな」
尚もランチは何か言いたそうだったが、正直ランチと一緒のベッドで眠るという責め苦を味わうくらいなら床で寝る程度の事など問題にもならない。折れるつもりがないのを察したのか、しっかり暖かくして寝てね、と少々しょぼくれた声で告げてランチはその場を離れていった。
キッチンカーに戻ると、先に戻っていたキキョウがベッドの上に座っていた。ドアを開けて入ってきたリンドウを見て楽しげな笑みを浮かべる。
「……今日は俺は作業場で寝ますので。ベッドは使ってください」
手短に言うとキキョウに背を向けて刀と前掛けを外し、荷物の中から毛布を取り出そうと葛籠を開ける。屈んだリンドウの背中を後ろから近寄ってきたキキョウの身体がすっぽり包んで抱き締める。
「その必要はねぇぜ、どうせする事ぁいつもと変わらねぇだろ」
「ち、違います……んっ、あ……っ!」
「違わねぇよ、せいぜい入れる穴が違うってだけだ」
熱っぽい声のキキョウの息は既に荒い。背後から回った手に膨らんだ胸を揉みしだかれると、耐え難いほどの甘い疼きがどんどん生まれて身体を熱くさせる。
「やっ、あ……離し、て……くださ……あぁっ!」
キキョウの手首に手をかけどうにか引き剥がそうとするが、どうやら腕力も女性のそれになってしまっているようでキキョウの腕はびくともしなかった。
「結構でけぇじゃねぇか、揉み甲斐があるってもんだな」
「や、そこ……も、やめて、くださ……っ、やぁ……っ」
「ただでさえ感度いいのが、女になったら増々敏感になっちまったみてぇだな。そろそろ女の身体も恋しくなってたところだ、あの梟も丁度良く失敗してくれて助かるぜ」
他人事だと思って呑気な事を言うという腹立ちも、揉みしだかれ続ける胸の膨らみから生まれ全身を甘く痺れさせる快感の波の前に儚くも飲み込まれ消え去ってしまう。キキョウの舌先が首筋を舐め上げ、思わず鼻にかかった高い声を上げてしまう。
「あぁっ! あっ、は……も、あっ……やめてっ……くださ……ぁっ」
「そりゃ無理な相談だな。分かるだろ……? おめぇを抱きたくてたまらねぇんだよ」
どこか追い詰められたような切なげな声で言いながらキキョウはリンドウの背面の腰の辺りに熱く硬い昂ぶりを押し付け擦り付けてくる。その感触と温度に、身体の奥底が甘く熱く疼いてしまう。ただいつものように後ろがその熱さを受け入れるのを期待する以上に、もっと内側の真ん中の辺りが強く疼いてたまらない気持ちにさせられる。キキョウの言う通り感度もいつもより上がってしまったようで、キキョウが触れる所全てがぴりぴりと電流でも走っているように甘く痺れてしまう。普段とは違う己の身体の状況は不安と恐怖を煽り立て、やめてくださいと幾度も懇願するが耳を食み首筋を舐め噛み両の乳房を揉みしだくキキョウの動きは止まるどころか激しくなっていくばかりだった。
「やだっ……あっ、あぁっ、んっ……ああぁっ……も、やめ……っ、おねがい……ですからぁっ……!」
「ほんとに嫌なのかよ、そんな可愛い声出しまくってよ」
「勝手に……出ちゃ、うからっ……あっ、やっ、やだぁっ……!」
「じゃあ、ほんとに嫌かどうかおめぇの身体に聞いてみるか?」
いやに艶めいたキキョウの声が耳にかかる。キキョウは手を右の乳房から離すとそのまま下に降ろしていき、留め紐を引き絞っても尚緩い下衣とだぼだぼで用を為していない下着の中に易々と滑り込ませた。指先が奥まった茂みを探り当て、更に奥へと進んで行くとぬちゃりとぬるついた感触が伝わってくる。
「あぁ……ほら、もうこんなにグショグショにしてんじゃねぇか……欲しくてたまんねぇんだろ?」
「ちがっ……あぁっ…………そこ、さわら、ないで……くださっ!」
ぬるついた割れ目の表面を指先が行き来するだけで、たまらない程の快感が身体を走り抜ける。複雑に重なり合う襞をそっとなぞられるだけでびくびくと身体が震え、頭の中が快感で塗り潰されて何も考えられなくなっていく。やがてキキョウの指が前方のしこりのような部分に触れると、まるで男の身体で射精の瞬間を迎えた時のような強い快感が襲い来て、激しく身悶え身体を捩る。
「ひぁっ! あっ、やっ、そこ……っ、やだぁっ、ああっ、はっ……ひっ……ん」
「嫌じゃねぇだろ? ここが一番悦いんだろ?」
「やあぁっ、あぁっ、はっ、あぁ、んっ……ふっ、んっ、んっ、はぁっ、もっ……やめ、やめっ……!」
左の乳房を揉みしだいていたキキョウの手はすっかり尖り硬くなった乳首を指先で摘み押したりつねり上げたり押し潰したりと様々にいじり始め、陰部に入り込んだ右手は陰核を小刻みに擦る。指先だけで頭がおかしくなりそうな程の快感を与えられ、逃れようと必死に身を捩るが力は入らないし身体を包み込んだキキョウの腕も少しも動かせない。抵抗もできずただ高められていくばかりで、その高まりも頂上がまるで見えずどこまでも昇りつめさせられて、果てが見えない事が恐ろしくてたまらなかった。
「感じてる声、可愛いな……いつもの声もいいけどよ……」
「やだっ、やめ……もっ、ひぁっ、あっ、やっ、こわ、いからっ……はっ、あぁっ、も、やめ……っ」
「やめねぇよ、もっと、悦くしてやるから……」
宥めるような穏やかな、しかしながら欲情の熱も帯びたキキョウの声がリンドウを許さず逃さない。身も世もないようなあられもない嬌声は止めようとしても間断なく喉から漏れる。己のものとは思えない高く甘くはしたない声と耳元のキキョウの荒い息が耳を犯して頭の中をぐちゃぐちゃに掻き回し、ねちっこく与えられ続ける強すぎる快感の他には何も感じられなくなりそれがますますリンドウを追い詰める。
「そんな……っ、や、やぁっ、は、ふ……んんっ、は、あぁっ、あっ、ひぁっ、あぁんっ、んんっ、いっ、いやだぁっ、なんか……おかしくっ……!」
「イきそうなんだろ? いいぜ、イッても……ほら、イけよ」
陰核の外側の包皮を繰り返し擦り続けていたキキョウの指先が僅かにずれて包皮の奥深くに包まれ硬くなった部分を刺激してくる。苦痛なのか快楽なのかもよく分からない強烈な刺激がリンドウの身体を跳ねさせる。
「――…………っ! ああぁっ、はぁっ、ひ……んんっ…………!」
身体ががくがくと震え、目を閉じている筈なのに視界が真っ白に染まる。男の身体で射精を伴わずに達する時の感覚と似ているが、もっと強く深く長い。キキョウの腕の中で荒い息をどうにか整えようとするが、絶頂の余韻はいつまで経っても引いてゆかずそれどころか中心の疼きは強まってさえいた。
「もっと、欲しいだろ……?」
僅かに掠れたキキョウの声が耳許に忍び込んできて、ぞくりと身体を震わせる。あんなに強い快感を与えられたのに満足するという事を知らない、己の身体の浅ましさと淫らさに恥じ入りたい気持ちで一杯になるが、それでも欲求は依然として消えはしない。
「床ですると痛ぇだろ、ベッドでもっと気持ち良くしてやるよ。立てるか?」
聞かれて首を縦に振ったものの、腰に力が入らずに上手く立ち上がれない。すぐに痺れを切らしたらしきキキョウが膝裏と背中を抱えてリンドウの身体をひょいと持ち上げた。
「あっ……兄弟子……」
「男のおめぇじゃこんな抱え方はできねぇからな、こういうのもたまにゃいいだろ」
少し得意げに笑んだキキョウは、リンドウの身体をベッドに横たえると待ち切れぬ様子で上に伸し掛かり、身に付けた衣服を脱がしにかかる。身の丈に合わずぶかぶかになった衣服は苦もなく剥ぎ取られ床に放り捨てられ、キキョウの眼前に裸身を晒すこととなってしまう。
裸体は何度も晒しているが、女の姿の自分の身体など自分でも見たことがないというのに満足気な笑みを浮かべたキキョウにしげしげと眺められ、恥ずかしさに耐え切れずに思わず股間を手で覆って隠してしまう。他にも隠したい所があるのは山々だが、とりあえずはそこだけは視線に晒したくない。
「元の色が白ぇから女の身体になっても唆んな……まぁオレは男のおめぇの方が好みだけどよ」
「なっ……何を急に言うのですか……!」
「ククッ、赤くなってらぁ、面白ぇなほんと。もし元に戻れなくてもオレが嫁に貰ってやるから安心しろよ」
「縁起でもない事を言わないでください……」
少しむくれてみせると、キキョウは笑いを噛み殺しながら顔を寄せてきてそっと口付けてきた。唇を軽く食み合いながら、素肌の温もりが欲しくてキキョウの帯に手を伸ばし結び目を解く。次に肩口に手をかけて着物を脱がそうとするとこちらの意図を察したのかキキョウは着物と下帯を脱ぎ捨て放った。
素肌を重ね合い、今度は深く深く口付ける。深く抱き合って胸に腹に脚に、人肌の温もりが直に伝わってくる。その温もりに胸を満たされていくのを感じながら夢中で舌を絡ませ合い唾液を貪る。口内を舐られるごとに甘い疼きは増していって、もっと欲しいという気持ちが抑えきれなくなっていく。鼻から漏れる甘ったるい喘ぎ声は誰か知らない別人のもののようで、妙な倒錯感を起こさせて興奮を深めていく。
自分のものの筈なのに誰か別人のもののような身体の感覚に慣れず着いていけずに、ただ欲しいという欲求の高まりだけが胸の内を支配していく。もっと欲しい、全身を隈なく愛されたい。身体が変わる前は快感をただ追い求めるのに夢中でそんな思いは薄かったのに、変化してしまった女性の身体は強くそう要求する。身を捩り脚を絡ませ、下腹部に押し付けられたものの熱く硬い感触に腰がうねる。
長い口付けの後に唇が離れていくと名残惜しさがこみ上げてくる。強く激しい情欲の炎が灯ったキキョウの粘ついた視線に捉えられ、恐ろしいと感じるのに目が離せなくなる。
おもむろにキキョウはリンドウの首筋に吸い付き、思う様にその肌を貪り始める。舌先で舐められ痕が残らない程度の強さで食まれ吸われていく毎に、もっと欲しいという欲求はますます高まる。胸元を降りていった唇が右の乳首を含み、やわやわと唇で食まれながら舌で舐め回されるとそこから全身に染み渡り頭の中を蕩かすような甘やかな快感が絶え間なく襲ってくる。腹の辺りを探っていた右手は左の乳房を捉えて先程よりも荒々しく揉みしだき、腹を辿って下へ降りていった左手は腰回りを一通り撫で回してから内股の際どい部分を撫で擦る。体中をいじられ犯され支配されてしまったような感覚が頭を甘く痺れさせ悶えさせる。
「あっ、あぁっ、あ、あんっ……んっ、あ……いっ、いいっ……もっと、もっといっぱい、欲し……あ、ああっ!」
乳首をやや強く噛まれ高い声を上げてしまう。内腿を撫で回す手が触れそうで触れない部分がどんどん熱を帯びて自覚できるほどにぐっしょりとぬるついていく。
「男の時でもここだけでイけんだからちゃんとここでイけるよな?」
「そんな……あぁっ……やぁっ、もっと、他の……ところも……んんっ、は、あぁっ……」
「ダメだ、ちゃんとここでイけたら他のとこも触ってやるよ」
ちろちろと紅い舌先で突起の先を舐めながら残酷な宣告をキキョウが告げる。身体の内側をもどかしさが占領してしまって今にも爆発してしまいそうだった。左の乳房を揉みしだいていた右手も指先で乳首を捏ねくり回し始め、左手は相変わらず一番触ってほしい箇所を微妙に掠めながらも決して触れずに敏感な内腿を擦り続ける。大きく膨らんでいる分だけ男性の身体の時よりも快感を感じる神経が集中しているように思われる両の乳首を執拗に責め立てられ、鼻にかかった喘ぎ声を浅い呼吸に合わせて短く漏らし続けながら幾度も軽く背中が跳ねる。先程のようなどこまでも果ての見えないような快楽の高みに昇りつめさせられるのを恐れる気持ちと、もっと欲しいという欲求がせめぎ合ってぐちゃぐちゃになった頭の中はますます混乱していく。
「やぁっ、あ、ああっ、は、あぁっ……んっ、んんっ、あっ、あぁっ……あん……っ、んんんっ……」
切なさに身悶えてキキョウの頭に両手をかけるが大した力は入らず引き剥がせる筈もない。執拗に責められ続けた乳首は痺れたような感覚を帯びているのにそれでも感じ取る快感は変わらないどころか増していく。視界がぼやけ意識が白じんで朦朧としていく代わりに快感を感じる感覚はどんどん高みに引き上げられていって、どこまでも浮き上がっていく。
「だっ、も……だめっ……ああ、あっ、や、ああっ、あんんっ……んうぅ……は、あ、ああっ、だめ、だめで……あっ、ああっ」
漏れる声は切迫したものになっていき、脚に力がかかってぴんと伸びて張ってしまう。もうこれ以上は限界だ、助けてほしい、そんな思いとは裏腹にじんと痺れた乳首を強く噛まれ、痛みとも快感とも判別の付かない激しい刺激が身体を駆け抜け頭の天辺を震わせ、限界まで張り詰めた弓の弦のようになっていた身体はびくびくと幾度も大きく跳ねた。
「ああぁっ――……! あ、ああっ……は、はぁっ、あああぁっ……!」
身体の痙攣はしばらく収まらなかった。体中どこもかしこもが少し触れられただけでも跳ね上がってしまいそうなほど敏感になって、そっと頬を包む手の感触にすら身体は大きく跳ねる。宥めすかすように労るように頬に唇にそっと触れるだけの優しい口付けが幾度も繰り返されて、ますます強まる奥底の疼きは止まないながらも呼吸が楽になっていく。優しく触れられる毎に胸を暖かいものが満たしていくようで、まだ引かぬ絶頂の余韻の中でその暖かさを感じるのは心地良かった。
「ちゃんとイけたな、いい子だ。他の所も一杯可愛がってやるよ」
「あ……ん…………ください……いっぱい……もっと、ほしい……」
「そんなエロい顔で言うんじゃねぇよ、こっちが我慢できなくなっちまうだろうが」
苦笑いしたキキョウはもう一度軽い口付けを落とすと、両手で乳房を柔らかく揉みながら腹の辺りに顔を埋めて腹部にそっと唇で触れ、リンドウがぴくりと身体を震わす箇所を探り当てると舌先でつつき強く吸う。
「あぁっ……そんなに、したらっ……痕……っ」
「こんな所見えねぇだろ、それとも見えるようなはしたねぇ服着るつもりか?」
「着ません……けど……んっ、ふ……ぁっ」
二度の絶頂の余韻が未だに消えやらない肌は敏感になっていて、柔らかな刺激にも鋭く反応してしまう。ただでさえ弱い脇腹に舌が這い回ると、それだけでびくびくと身体が震え、甘ったれた喘ぎ声が荒い息に合わせて短い間隔で漏れる。
「やっ、そこ……っ、やだぁっ……も、やめっ……ん、んんっ……あ、ああぁっ……」
「嘘つけよ、好きだろ? そんなに感じまくってんだからよ」
「くるし……っ、は、あぁ……っ、からだっ、おかしく、なって……は、あ、あぁっ」
柔らかで穏やかな愛撫を受けているというのに鋭敏に身体が反応して、先程まで己の身体にはなかった入り口がぬるつき物欲しげにひくついて蠢いてしまっている。しとどに垂れた蜜はシーツを濡らし、尻の辺りが夜気に冷やされた湿度を感じている。男の身体ならば求めるものを与えられ頂点まで達すれば後はすっと熱が引いていくのに、この女の身体はいくらでも貪欲に快感を求め果てもなく高まっていく。触れているのは同じ舌先、同じ指先なのに感じ方がまるで変わってしまっていて、今愛撫を受けているのは確かに自分の筈なのに自分ではない誰かの感覚を味わわされているような意識と感覚のずれが生じてしまっている。こんな、感覚は知らない。しているのはいつもと同様の事の筈なのにまるで初めて体験しているような錯覚が起こる。揉みしだかれる乳房の柔らかい感触が、女として犯されようとしているのだという事を示してくる。意識は男のままなのに身体は女の感覚を味わっているこの状況はひどく倒錯的で、これは自分ではないという思いと全てを投げ出して快楽の波に身を任せたい欲求が胸を掻き乱す。
「や、あっ、もう……っ、ん、んんっ、あ、おかしく、なっちゃ……あ、ああっ、あ……」
「おいおい、まだ早ぇよ、本番はこれからだぜ? そんなに待ち切れなくなっちまったか?」
楽しげな声で言うとキキョウは乳房から手を離し、身体を少し後ろにずらして両腿の裏に手をかけ持ち上げる。秘部がキキョウの眼前に晒されて恥ずかしさのあまり激しく身を捩るが、腿を掴んだキキョウの手はびくともしない。
「あぁ、こんなにグチョグチョにしてたら待ち切れねぇよなぁ。後ろまで垂れてんじゃねぇか」
「やっ、やだ、ああっ……見ないでください……っ!」
「今更何恥ずかしがってんだよ。何度も見せてんだろ」
「それとこれとは、話が、別です!」
必死に脚を閉じようとリンドウは足掻くが、腿を抱えて広げるキキョウの腕は少しも動きはしない。男女の力の差とはこれほどのものかと恐怖すら覚えてしまう。
「もっと悦くしてやるから大人しくしてろ」
「えっ、あ、やっ……何を……ああぁっ!」
上体を倒して脚の間に顔を埋めたキキョウが、ぬめる蜜で濡れそぼった場所をべろりと舐め上げる。舌の熱さに背中がびくりと跳ね、ずずずと音を立てて分泌物を啜られ消え入りたくなるような恥ずかしさで身体が熱くなる。舌先は複雑に重なり合った襞を丁寧になぞって動き回り、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立て聴覚を犯す。指とは違う柔らかくしなやかな舌の粘膜の感触に下腹部の奥底がどうしようもなく疼き、勝手に誘い込むように腰がうねってしまう。
「あぁ、めちゃくちゃ濃い女の匂いだ、たまんねぇなぁ……」
「やっ、やだ……そんな、匂い……っ、嗅がないで……くださ……っ!」
「やたら粘ついた本気汁こんなに垂らして……そんなにオレが欲しいのかよ、どっちにしろ淫乱なのは変わんねぇんだな」
「ちがっ……勝手に……出ちゃう、から……あぁっ……!」
徐々に上へと昇ってきた舌先が、先程指で散々嬲られた箇所を捉える。舌先は器用に包皮を割り、内側の硬い核を舐り責め立てる。先程指で少し触れられただけで絶頂させられたような刺激に弱い箇所を、舌先は容赦なく舐り回してくる。強すぎる快感は急速にリンドウを絶頂寸前の状態にまで意志とは関係なく引き上げてしまう。
「あっ、あ、ああっ、そこっ、も、やだっ、あ、やめっ、んんっ、だめっ、も、むり、は、あぁっ、だめ、も、イクっ、イク、イクっ……!」
舌先に秘部をいいように弄ばれた身体はぴんと張り詰め震えて今日三度目の絶頂の瞬間を迎えようとしていた。その様子を見て取ったキキョウは舌先でぐるりと陰核の外側を舐め回した。強烈すぎずだが充分過ぎるほど強い快感に襲われて、腰がぴくりと跳ね上がる。
「あ――……っ! あああぁっ……は、ああぁ……っ」
一瞬呼吸が止まり、跳ねた身体は幾度も震える。絶頂の余韻はあまりにも甘く身体を包み、しどけない声が呼吸と共にどうしても漏れ出てしまう。極度に緊張した後弛緩した全身からはすっかり力が抜けてしまって、もう身動きもままならなかった。リンドウの前まで身体を戻したキキョウがそっと肩を抱いてきて、唇に頬に柔らかい口付けを幾度も落とす。温もりをもっと感じたくてキキョウの背中に腕を回すと、開いた脚の間に熱く硬いものが押し当てられる。
「なぁ……もう、したくてたまんねぇんだ……挿れて、いいだろ?」
「はっ……あ、あぁっ……」
擦り付けられるものの熱さに、受け入れることを期待してひくつく入り口からじくじくと蜜が湧き出るのを感じ、思わず顔を背ける。はしたなく浅ましく、欲してやまない己を感じて羞恥に頬が熱くなる。
「ちゃんと、痛くねぇようにしてやるから……」
引き続き唇に優しい口付けを落とし続けながらキキョウの右手がリンドウの脚の間に降りていき、茂みの奥底に秘められた入り口を容易く探り当て、つぷりと指先が挿し入れられる。きつく閉じた後ろを抉じ開けられるのとは違い痛みもなくすんなりと肉壷は指先を受け入れるが、受け入れるのにも既に慣れた後ろではなくもっと身体の中心に異物が入り込んでくる感覚に、違和感が生じ眉根が寄る。
「ううっ……はっ、そこ……っ、やだ……っ」
「痛くはねぇだろ?」
「痛く……ないです、けど……っ」
「だろうな、もうトロトロに解れてるぜ……熱くて、柔らかくて……たまんねぇな。早く、無茶苦茶に掻き回してぇ……」
キキョウの声から先程までは存在していた余裕は失われてきている。内側を動き回る指の感触は感覚が鈍いのか蠢いていることを感じ取れる程度だが、押されると今まで感じたことのないずっしりと重い痺れのような甘い感覚が身体を震わせる箇所があって、どうやらその箇所を探っていたらしきキキョウの指は見つけ出した箇所を重点的に責め立ててくる。
「あっ、や、やっ、そこっ、なんか……おかし、からぁっ……やめっ、やめて、くださっ……あぁっ!」
「おかしいんじゃなくて悦いんだろ? 中もこんなに悦んでよ……」
強い快感に歪むリンドウの顔を眺めながら荒い息と共に告げるキキョウの声は楽しげで、どうする事もできずに身を捩るばかりのリンドウをよそに中に挿し込まれる指がもう一本増やされる。乱暴な動きはせず慎重に感じる箇所を探り見つけ出すと的確に刺激してくる二本の指先は別々の生き物のように身体の内側で蠢いていて、後ろを責められるのとは質の違う感覚を与えてくる。後ろの感じる箇所を責められる鮮烈な快感とは違う、身体の奥深くを侵し疼かせて欲しいという欲求を否が応にも高め駆り立てていく。もっと確かなものが欲しい、こんな細い指などではなく、空洞を埋め広げて埋め尽くすようなものが。そんなさもしい欲求が頭の中を埋め尽くしてしまいどうにかなってしまいそうだった。
初めての経験なのだ、本来ならば躊躇や恐怖を少なからず伴うのだろうけれども、後ろで受け入れる事に慣らされた身体はこの疼きが犯されることでしか鎮まらないことをなまじ知ってしまっている。中で蠢く指に掻き回され泡立つ、後から後からいくらでも溢れてくるぬるついた欲望の証が何よりも雄弁に求めているという事実をリンドウ自身にもキキョウにも示している。
「なぁ……ほんとはもう、欲しくてたまらねぇんだろ……? ちゃんと言わねぇと分からねぇだろ?」
「そん、なっ……あ、はぁっ……あっ、あ、やっ……」
「それとも指でもイっときてぇのか? 欲張りだよなぁ、そういうとこ」
「や、ちがっ……あ、あぁっ、ああっ!」
挿し込む指がもう一本増やされ肉壷が押し広げられる感触にリンドウは身悶えた。既に探り当てられていた弱い箇所を三本の指先がばらばらに責め立てて、下腹部の奥底に強く響くような強烈な疼きと快感が意識を支配してしまう。
「やっ、だめっ、それ……やめっ……も、もう……っ、あっ、そんなに、したらぁっ……!」
「初めてなのに指でイけちまうなんて、こっちの穴もドスケベだな。ほんとは、指なんかじゃ足りねぇんだろ?」
「んっ、んんっ、そんなの……や、あ、あぁっ! は、あっ、やめ……もっ、おかしく、なっちゃい、ますから……っ!」
「おかしいんじゃなくて、イきそうなんだろ? 女の身体でこんなにイきまくってたら男に戻ったら満足できなくなっちまうかもな」
「やっ、そんなの、いやっ……ああっ、やあぁっ、もっ、もうっ、あっ、だめっ、だめっ、イっちゃ、あぁっ! イク、イク……――っ!」
全身の筋肉が極度に緊張し張り詰め、意識が白く焼き切れる。今日はもう何度この感覚を味わわされたのか覚えていない。ようやく薄っすらと意識が現実の認識を再開し始めると、今度は過敏になった肌が僅かな刺激にも身体が跳ねるほど反応してしまう。指が引き抜かれていく感触にも耐えきれず鼻にかかった甘い声を漏らし、引き抜かれたキキョウの指に纏わり付いた粘液が粘ついて指の間で糸を引く様を見せつけられる。
「すげぇな、こんなに糸引いてよ……まぁこれ見りゃ一発で分かっちまうけど、何かオレに言いてぇ事があるんじゃねぇのか?」
楽しげに笑んでキキョウはいやらしい汁で汚れた指を咥え舐めしゃぶり、引き抜くと両手でリンドウの頬を包み顔を近付けてきた。
「どうなんだよ、おら」
「……それは、駄目です……口でしますから」
「何で駄目なんだよ」
「その……今後もし男に戻れなかった場合、万一子供でも出来てしまったら、困るではないですか……」
言いづらそうにリンドウが口にした言葉を聞いて、何だそんな事かとでも言いたげな顔をしてキキョウは一つ息を吐いた。
「別に困りゃしねぇよ、オレの腕がありゃおめぇと子供を養うくらい造作もねぇだろ」
「そういう事ではなく! 順番が逆ではないですか!」
「ガキが出来たから結婚なんて取り立てて珍しくもねぇよ、よくある話じゃねぇか」
「俺は……そういう順番をきちんとしないのは、嫌なんです……」
顔は両側から手で固定されていて動かせないから目線だけを逸らしたリンドウを見下ろして、キキョウはくくっと笑いを漏らした。
「何がおかしいのですか……」
「オレは別に今すぐ結婚したって構わねぇぜ? おめぇを嫁に貰ってやるってのは本気だ」
「また……そんな事を言って誤魔化そうとして……」
「誤魔化しじゃねぇよ、真剣に言ってんだ。分からねぇなら分からせてやろうか?」
すっと真顔になったキキョウの強い視線に射抜かれ捕らえられて、それ以上の反論の言葉をリンドウは口にできなくなってしまった。見た目の態度などいくらでも取り繕うことは可能だろうけれども、真剣だという言葉も眼差しも信じたいという気持ちの方が強かった。今すぐ結婚したって構わない、その言葉を反芻すると胸が甘く疼いて鼓動が速まる。
「オレを、受け入れろよ……」
降りてきた唇に呼吸を塞がれ、深く繋がり合う。柔らかな舌が絡み合い互いの口腔内を味わい尽くすように舐り回すと、熱く切ない何かが胸を満たしていく。全てをこの人の思うままに受け入れたい、首に腕を回し引き寄せて肌の温もりを感じながらそう願う自分を自覚する。
唇を離してしばし見つめ合い、気まずくなってリンドウはふいと視線を逸らした。
「外に……出すなら、いいです。これ以上は折れませんよ」
「ふぅん……ま、そこら辺が落とし所か。分かったよ」
若干不満げな表情は見せたものの、リンドウの出した条件にキキョウは頷いた。そうと決まればとばかりにいそいそと動き出し、リンドウの膝を割って脚を開かせ自身の滾りに手を添える。早く迎え入れたいという期待と少しの慄きが鼓動を早めていく。
「ああっ……ん、ああぁ……っ」
充分に濡れそぼり潤みを帯びた秘口は待ち兼ねていたようにスムーズに熱く猛ったものを迎え入れる。肉壷の内壁は侵入してきたものの硬さと形をくっきりと感じ取って、その熱さに焼け爛れそうになる。
「や……ああっ……、ここっ……形、後ろより……分かって……こんな、硬いの……っ!」
「あっという間にずっぽり呑み込んじまったなぁ、ほんとに初めてか?」
「妙な、事を……聞かないで、くださ……っ、初めてに、決まって……うぅっ!」
根元まで押し込まれたものの先端に奥深くを突かれ、腹の奥底が震えるようなずしりと重い快感が全身に響き渡って身体を震わせる。全く未知の感覚に晒され、こんな感覚を味わわされ続ければどうなってしまうのかという思いと甘く身体を満たす疼きとが頭を混乱させる。根元まで肉茎を埋めたままでキキョウは幾度もぐっと腰を押し込み、奥深くに刺激を与えてくる。足りなかった部分を硬く熱いもので埋め尽くされる充足感と身体に重く響き震わせる悦楽の波がどんどん息を荒くさせ、恍惚状態に意識を引き上げていく。いつものように激しく犯されたならどうなってしまうのだろう、おかしくなってしまうのではないかという心もとなさもあったがそれよりも身体が求める欲求の方が強かった。
「や、そこ、やだっ、あ、ああっ、おくっ、だめ……っ、あっ、んんっ、んぁっ、は、ああっ!」
「おいおい、まだろくに動いちゃいねぇんだぜ、もうそんなに善がってドスケベな顔してよ……そんなにチンポが美味ぇか?」
「やっ、あ……いいっ、きもち、いいっ……ああっ、もっと、もっと、ほし……っ!」
「そんなにキュウキュウ食い締められてたら動けねぇぜ、こっちの穴も、キツいな……っ」
息を荒げキキョウは半ば無理矢理腰を引いて、今度は浅いところばかりを行き来して責め立ててくる。浅いところの襞が雁首と絡み擦れ合う感覚が肩を震わせるが、もっと奥まで激しく貫かれたい、欲求はどんどん膨らんで頭を一杯にしてしまい、両腕を背中に回し両足で腰を捉えてどうにか引き寄せようと力をこめる。
「は、あぁ……っ、あ、もっと、奥まで……ほしっ……焦らさ、ないで……くださ……っ」
「ここも悦いだろ? 可愛い声出てんじゃねぇか」
「やだぁっ……奥、もっと、突いて……ほしい、です……っ!」
己の口から出た言葉とは思えないようなはしたない要求が朦朧とした思考すら通さずに直接口から零れ出てしまう。もっと強く激しく犯されたい、そんな浅ましい欲望が体中を埋め尽くして知性や理性など意味のないものに変えてしまう。肉の欲だけが今はリンドウの所有者で、その欲望が熱く硬い滾りの形と熱をもっともっと感じ取ろうと貪欲に身体の内側の襞を蠢かせる。
「そんなに絡みついてきて、待ち切れねぇのか? しょうがねぇ奴だな」
「んっ、おねがい、ですから……ぁっ、奥まで、来て、くださ……んんっ、ふ、はぁっ……」
「それじゃすぐ終わっちまってつまらねぇだろ? その感じまくってる可愛い顔、もっと見せろよ」
「や、やぁっ、あっ、あ、あぁっ、はっ、あんっ、んっ、んあぁっ、はぁっ、ああぁっ……!」
速いリズムで浅いところを掻き回され、そこから生じる快感とそれ以上のもどかしさに甘ったるい喘ぎ声が間断なく漏れる。もう何も考えられなくなるほどどんどん高められていくのに、肝心のものは与えられない。手をついて上体を上げていたキキョウはリンドウの両脇の辺りに肘をついて身体を倒し、腰の動きを休めないままで両の乳房を揉みしだきながら左の乳首を吸い甘く歯を立てた。
「あっ、ああっ……だめっ、そこ……やあぁっ、あ、ああっ、そんなに、されたら……っ!」
キキョウの肩に手をかけ押して引き剥がそうとするがそんな力ない抵抗は何の意味も成さなかった。一番欲しいものが与えられないままで絶頂の時がどんどん近づいてきて、もどかしさに胸が張り裂けそうになる。奥に欲しい、ただもうそれだけしか考えられなくなるのに、浅い箇所にしか与えられない刺激はその欲求をどんどん強く駆り立てていく。
「胸じゃ物足りねぇか? じゃあこっち触ったら、どうなっちまうかな」
左の乳首を舐めつつきながらキキョウは左手を降ろしていき、二人の腰の間の空間に指先を割り込ませる。中指の先が陰核を捉え、やや力をこめていじり回し刺激を加えた。そう時間の経たぬうちに限界が訪れて何かが弾け飛ぶような感覚が走り、津波に攫われたように再び絶頂の感覚に呑み込まれていく。
「――……っ! ひ……は、ああぁっ……あぁっ、はっ、はっ……」
「また、イっちまったのか? 入り口、締めすぎ、だ……」
「あっ、あっ、はっ、ふ、んっ……んんっ……う……」
苦笑いしたキキョウの言葉にも朦朧とした意識はろくな反応を返せない。甘く緩やかな脱力感が全身を包むが、身体の奥底の強い疼きは少しも収まらない。もっと強く激しく奥底まで貫かれたい、頭の中を占領するのは依然としてその欲求だった。
「そんなに感じまくって、どうしようもねぇいやらしい身体だな。何回イけば気が済むんだよ」
「奥……奥で……イキたい……から……っ、もっと、深くまで……して、ください……」
「これだけイってもまだ足りねぇのかよ、まぁ好きだけどな、おめぇのそういういやらしい身体がよ」
おかしそうに口の片端を上げて笑みながらキキョウは上体を起こして両の乳房を掴み直し強く揉みしだきながら、今度は深く深く奥底まで突き行ってきた。奥深くの一番感じる部分を速いペースで繰り返し幾度も突かれ抉られ、リンドウはどうしようもないほどの快感に耐え切れずどうにか逃がそうと盛んに身を捩り腰をうねらせた。
「あっ、あ、いいっ、ああぁっ、い、いいっ、そんなにっ、はっ、や、ああっ、あぁんっ、おくっ、おく、いいのっ、いいっ……!」
「いいぜ、もっと、腰使え……そうだ、あぁ、たまんねぇ……おめぇん中、熱くて、キツくて……」
「ああっ、あっ、きもち、きもちいい……っ、兄弟子の……っ、熱くてっ……いいっ、そんな、硬いのゴリゴリ、されたらぁ……っ!」
強く揉みしだかれる乳房は痛みと裏腹の快感を与えてきて、それ以上に身体の中心を太く硬いもので抉られ最奥を衝かれる重く響き身体を震わす悦楽が指先までを支配してしまう。求められるまま必死に腰を揺り動かし、際限などないようにどこまでも貪欲に快楽を貪る。いくらでも欲しい、ずっとこの波の中に浸り漂っていたい、身体はどうしたって絶頂の瞬間を求めてしまうのにそんな詮のない願いさえ浮かんでしまう。強く奥を突かれる度に身体の奥底を灼いていた疼きに快感が直接響いて、満たされながらも昇りつめたいという欲求が同時に高まっていくのを感じる。胸の底が甘く疼き、温もりが欲しくなって首に手をかけて引き寄せればキキョウは逆らわず身体を倒し顔を寄せてきて激しく貪り合う口付けが交わされる。
身体が隅々まで満たされていくような感じたことのない感覚があった。身体の欲求と愛情が繋がっているようなその感覚は初めて経験するもので、目の前の人が愛おしくてたまらないという感情が溢れ出して止まらなくなる。もっと欲しい、何もかもが。ぬるついた蜜壺を抉られながら口腔内の粘膜の温かさ柔らかさを味わい、それでもまだ欲しいという気持ちが止まらなくなっていく。
「ダメだ、もう……限界、だ……っ」
「はっ、あ……あっ、も、抜いて、くださ……」
「抜かねぇよ、たっぷり、中に出してやるから……しっかり、オレのガキ、孕めよ……っ!」
「そんなっ、約束が……ちがっ、ああっ、やっ、やだぁっ、抜いて、抜いてくださ……っ! うあぁっ、あっ、あぁっ!」
脇の下から腕を回してリンドウの肩を抱え上体を倒したキキョウとリンドウの上半身は完全に密着して、リンドウは完全に逃れられない体勢になってしまう。蜜壺を穿つ律動は強さと激しさを増し、荒さを増すキキョウの息遣いと合わせて終わりの時が近い事を知らせてくる。
「やっ、やだっ、いやですっ、抜いて……っ! だめですっ、こどもっ、こども、できちゃうっ……! やぁっ、あっ、あぁっ、だめっ、だめ、だからぁ……っ!」
「やだね、おめぇに産ませたくてしょうがねぇんだよ、孕めよ、オレの子供……!」
「だめっ、だめっ、あっ、や、もうっ、イきそ、なのに……っ、だめっ、おねが……っ、ぬいて、くださ……っ、だめっ、イク、イクっ……!」
「一緒に、イくぞ……っ!」
抽送の速度が速まり、リンドウの肩を掴むキキョウの手に力がこもる。どうあっても逃れられない状況にリンドウは焦り慄いた。戦慄と焦燥と意識が遠のくほどの快感と内側に精を受けたがる身体の欲求が頭の中をぐちゃぐちゃに掻き回し混乱させる。嫌だ、欲しい、どちらも本当でしかも今は選択権すらない。雁字搦めになってこのまま頂点に到達する以外の道など残されていなかった。
「やっ、おねがっ、ぬい、てっ、あっ、いやっ、あっ、あっ、ああぁっ――…………っ!」
「……っく、うぅっ……!」
奥を深く穿たれた刹那認知できる世界の全てが白く弾け、身体が強張り呼吸すら止まった。次の瞬間には内側に感じる熱が膨らみ腹の奥底に煮え滾るような熱いものが注ぎ込まれ、すぐに意識は現実に引き戻される。
「や、ああぁ……っ、なか……っ、中に……っ、出て、ああぁっ……やっ、やだ……っ」
射精は幾度も続き、ようやく終わった頃にはリンドウはすっかり今自分が置かれた状況を認識してしまっていた。熱い精の迸りを受けた身体はその悦楽に震え満足している。だが、これはいけない事なのだと理解する理性も辛うじて残っていて、その理性が今現実に起こっている事態を受け止めきれずに狼狽する。狼狽えるリンドウをよそにキキョウはリンドウの脚を曲げて膝を地面に着け、リンドウの体勢は正座したまま後ろに仰け反ったような妙なものになっていた。
「まだまだ終わりじゃねぇぞ、確実に孕むように、今日はおめぇの腹ん中をオレの精でパンパンにするまでやるからな」
「そっ、そんな……もう、やだっ、やめて、くださ……やだ、あぁっ……!」
腿が吊らないようするためかキキョウはリンドウの背中に腕を回し軽く抱き起こして、硬さを保ったままのものを再び動かし始めた。先程より浅いところまでしか肉茎は押し入ってこないが、先端が当たる箇所と角度が変わったために先ほどとはまた違った刺激が生まれすぐにリンドウを翻弄する。更に斜め上の角度から挿し込まれる体勢のために膣以外の陰部も律動と共に擦られ、特に陰核への刺激が強い快感を生み出して内と外を両方責め立てられることになり、先程達したばかりだというのに飽きもせず身体は再びまた淫熱を帯びて身悶える。
「それっ、あっ……や、やだっ……あぁっ! 前も、擦れて……やだ、やめ……っ、ああっ、はぁっ、んんんっ……!」
「もうちょっと、脚閉じろ……そうだ、あぁ、すげぇ締まるな……これ、いいだろ?」
「あっ、あぁっ……やっ、こんなの……っ、おかしく、なりそ……だからぁっ……やっ、やめっ……」
「感じまくってる可愛い声出てるじゃねぇか、もっと正直に言えよ、気持ちいいんだろ?」
「や……あっ、きもちっ……きもち、よすぎて……っ、おかしく、なっちゃう……からっ……も、やめっ……や、あ、あぁっ」
忙しなく揺すられ半ば無意識の内に自分からも快楽を貪って腰を振り、蜘蛛の糸に絡め取られた獲物のように逃れようとすればするほど縛り付けられていく心地を覚える。いくら口でやめてほしいと言ったところで身体はそんな事は望んでいない、もっと激しく犯されたくて仕様がなくなっている。こんな中途半端な所で終われる筈などないのだと理解してしまっている。本当に男には戻れなくてもし妊娠でもしてしまったら、その可能性も大いにあり得る、こんな事をしてはいけないのに、そんな罪悪感すら熱を生んで身体を熱くする。
少しずつ突き入れる速度が速まっていき、情欲にぎらついた眼光に捉えられながら上体を引き寄せられ咬み付くような口付けをされる。舌を絡め合うだけでは物足りないのか甘噛みされ、予測もしなかった刺激に身体がびくつく。荒い息遣いと性急な舌先の動きがキキョウの興奮を否が応にも伝えてきて、もっと激しく犯されたいという欲求が膨らみ期待に鼓動が高鳴る。
長い口付けからようやくリンドウを解放すると、キキョウは背中から腕を外してリンドウを横たわらせ、膝を折ったリンドウの両脚を伸ばして持ち上げ肩に抱えた。この体勢はよく知っている、普段からキキョウが好む、深く繋がれる体位だ。すぐに終わらせてはもったいないという気持ちでもあるのかキキョウはゆっくりと腰を動かし始めた。先程の体位とは比較にならない奥まで押し入られ犯され、求めていたものを与えられた充足感と更なる激しさを求める欲求が吐息を熱くする。
「はっ、あっ、あっ、んっ、もっと、つよく……っ、して、くださ……っ、奥に、もっと……ほしい……っ!」
「こっちも、強くしねぇと満足できねぇんだな、どっちの穴もとんだドスケベだな」
「んんっ……そんな……意地悪……っ、言わないで、くださ……」
「事実だろ? そんなに好きなら、望み通りにしてやるよ」
楽しげに笑んだキキョウはリンドウの腰を抱え直し、力任せに強く腰を打ち付け始めた。ぶつかり合う肉の音とそれに混じって聞こえるぐちゅぐちゅと湿った水音が耳に響き渡り、望み通りに激しく内側を穿たれ抉られてその度に視界が明滅し重低音のような快感が腹の奥底から頭へと突き抜けていく。
ふと、キキョウが動きを止めた。何が起こったのかとぼんやりと見上げると、何を思い付いたのか楽しげに笑っている。
「さっきから思ってたんだけどよ、おめぇ両手が遊んでるよな」
確かに両手は遊んでいると言われればそうだ。強すぎる快感を逃そうと、シーツの上を彷徨い掴む程度の動きしかしていない。
「もっと有効に活用した方がいいんじゃねぇか?」
「活用と言われても、何を……あ……」
戸惑うリンドウの手を取るとキキョウは片方の手を乳房の上に、もう片方を恥部に宛てがった。
「自分でいじるんだよ。そうすりゃもっと気持ちいいだろ? さっさと始めろよ」
「そ、そんな……はしたない……」
「男の時に後ろ犯されながらてめぇで扱いてイってた奴の台詞かねそれが。同じ事だろ」
「それは……そうですが……」
悔しいが確かに同じ事だ、何も言い返せなかった。観念して自らの乳房を揉み、秘部に指先を伸ばし感じる箇所を探り始める。自分の身体だというのにまるで覚えのない感触と構造で、自分で自分を犯しているような妙な背徳感があった。
「んっ……あ…………これで、いいですか……あぁ……っ」
「ほんっとエロいよなおめぇはよ、まぁそういうとこがいいんだけどよ」
「そんな……させたのは、兄弟子では……あ、は、はぁっ……!」
うるさいと言わんばかりにキキョウが抽送を再開し、ただでさえ弱々しいリンドウの反論はたちまち封じられてしまう。奥深くを抉られながら自身で二箇所を慰める手もどんどん止まらなくなって大胆になっていき、淫靡な状況そのものにまで興奮してしまい身体を震わす快感は高まる一方だった。
「こんな……あぁっ、も、すぐ……っ、イっちゃいそ、で……ああぁっ……!」
「いいぜ、何度でもイけよ……その度中に一杯出してやるよ」
「そんな、あっ、あぁ……っ、だめっ、だめも……っ、イク、イっちゃう……! イク、イク……っ!」
自身を慰める手も止められないし叩きつけるような抽送も一片の容赦もなく止まらない。あっという間に頂点に昇りつめさせられ、激しく脳内を白く灼く恍惚感が意識を染めてがくがくと身体が跳ねる。そして宣言通りに、腰をぴったりと密着させ行ける限りの奥まで突き挿れられたキキョウの高ぶりも膨れて震え爆ぜ、身体の奥深くに熱を撒き散らす。朦朧とする意識の中、キキョウが軽く口付けを落としてきた、そこまではどうにか覚えているが、その後の事はもう覚えていない。
翌朝目を覚まし、身体を起こした時に漏れ出てきた白濁の量と身体の痛みや疲労の具合から推測して、記憶が途切れた後も犯されまくったのだろうという事だけは分かった。もし本当に男に戻れなかったとしたら、それだけが恐ろしくてならない。さすがにそんな無礼は働けないのでやらないが、隣で呑気に深い眠りの中にいるキキョウの頭を拳骨で殴りたい気分だった。
サイズの合わない服を着て起き出し身を清めた後ネリネの所へ服を借りに行く途中で、マジョラムに呼び止められた。どうやら夜を徹したマジョラムとオレガノ(チューベローズは途中で普通に寝たらしい)の頑張りのお蔭で元に戻る方法の調べがついたという。それを聞いたリンドウは心の底から安心してしまって、先に礼を言うべきところだったのにへなへなと地面に座り込み、良かった……と安堵の言葉を口にした。
その後無事にすぐリンドウは男に戻ることができ、マジョラムとオレガノに言い過ぎなほど礼を言ったのだが、起き出してきたキキョウがもう戻っちまったのかよと渋い顔をしたのにはさすがに怒りが抑えきれず、その日はつい不機嫌さを顔に出してしまい後日それを反省して落ち込んだのだった。
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