藪蛇を咥えこむ

 朝の光が射し込んでふっと目を覚ますと、目の前にはいつもの整った寝顔。暑かろうが寒かろうが関係なく、キキョウはリンドウの肩を抱き寄せて眠る。レヴンなど常夏の島ではさすがに寝苦しい思いをする事になるのだが、こうしねぇとよく眠れねぇんだよと言われてしまえば拒むのも悪いような気になってしまい出来なかった。
 抱き寄せられているから胸もほぼ密着しているし脚も絡み合っている。腰に回された腕の下は体温でやや汗ばんでいる。時計を見ると、少し早めに目が覚めたようだった。起き出そうとキキョウの腕をどけ脚を動かすと、太腿に硬いものが当たった。
「……」
 ただの朝勃ちだ。それは分かっているし自分だってなっている。別にそういう気分だからというわけではなくただの生理現象だ。だがその硬さと熱さを意識してしまうと、これが欲しいという欲求が湧き上がってくるのを感じる。昨日は眠すぎて気分が乗らないと言われ抱かれていない、たった一日抱かれなかっただけでこうも強い欲求が湧き上がってしまう己の身体の浅ましさに嫌悪の情が湧くが、どうにもこうにも抑えることができなかった。
 早めに目が覚めたからまだ時間はあるし、少しだけなら大丈夫、心の中でそんな言い訳を拵えながら掛け布団を奥へ押しやり、同じだけ下へ移動してキキョウの夜着の裾をはだけて下帯をずらし、すっかり大きく成長して上を向きそそり立つものを取り出す。
 これが、欲しい。
 力強い脈動を指先に感じるとたまらない気持ちになってきて、そっと唇で触れるとぴくりと跳ねる。顔を近付けるとキキョウの匂いが強く立ち込めてきて、ますます欲求は強くなるばかりだった。絶えきれなくなって雁首を舌先でなぞり、亀頭を口に含んで軽く吸う。それだけの刺激でも面白いほど肉茎は反応し、ぴくぴくと跳ねてみせた。少しだけと思ったにも関わらず反応が返ってくる度にもっと、もっとと欲求はどんどん膨らんでいき、口一杯に唾を溜め亀頭を舌で舐り回し、先端を舌先で突付く。唾に混じって塩辛い味が舌に広がってきて、返ってくる反応がますますリンドウを行為に没頭させる。
 一度口を離し、右手で陰嚢を柔く弄びながら舌全体を使って大きく幹を舐めあげる。太い血管の感触と熱が舌の表面に伝わってきて、どうしようもなく興奮させられ息が荒くなる。早く欲しいけれども、もっと大きくしてから。そんな猥りがましい考えが頭の中を一杯に埋め尽くしてしまって必死に舌を動かしてしまわざるをえない。少しずつ質量を増していく肉茎を懸命になって育てていく。根元を左手で掴み軽く扱きながら再び亀頭を口に含み、えづきそうになるほど喉奥まで咥えこんで舌を絡めながら引き抜くのを繰り返す。
 早くこれが欲しい、後ろがじんと疼いてひくつくのを繰り返しているのを感じると己の淫らさにたまらない羞恥が湧き起こるが、その感情すら今はただ身体を熱くするだけだった。この太く熱いものを身体の奥底まで受け入れ、内側を激しく掻き回されたい、そんな卑陋な欲望が体中を支配してしまっていた。
「そろそろやめねぇと口ん中に出しちまうぞ」
 突然頭の上の方から声がかかった。驚きにびくついて肉茎から口を離し首を回し顔を向けると、にやついたキキョウの顔が目に入った。
「あっ、兄弟子……あの、これは……その…………いつから、起きておられたのですか……?」
「おめぇがいやらしく竿舐め回してる辺りからだな。随分積極的じゃねぇか、一日しなかっただけでもう我慢できなくなっちまったのか?」
「……」
 否定したいのは山々だったが事実自分のとった行動は一日しなかっただけで我慢できなくなった人間のものだ。何も言い返す言葉がなかった。
 こんな淫猥な行動をずっと黙って眺められていたという事が耐えられないほど恥ずかしく消え入りたくなってしまうのに、それを凌駕するほど早く欲しいという欲求が強く胸を掻き立てる。
「ま、いいぜ、好きに使ってくれても。オレぁ動かねぇから自分でしな」
「……えっ」
「出来んだろ? 自分で。おら、早くしねぇと萎えちまうかもしれねぇぞ」
 からかい混じりのキキョウの口調に追い詰められ進退窮まって、リンドウは顔を歪めた。面白がって眺めているキキョウにそんな痴態を晒すのは正直嫌だ、だが情欲に火が点いてしまった今の状態のままではまともに仕事ができる状態になるまで時間がかかりそうだし、それより何より欲しくてたまらない、我慢できない。
 仕方なく夜着の下と下着を脱ぎ去り、後孔に手を伸ばし人差し指を差し入れる。解さないよりはましだろうと思い指を動かしながら、大事なものが萎えてしまわないよう上体を屈め空いた方の手で肉茎を支え持ち口淫を再開する。
「なかなかいい眺めじゃねぇか。チンポしゃぶりながらてめぇで後ろ弄るなんざ、よっぽど我慢できねぇのか? それともただ好き者なだけかね」
 嘲りにも返す言葉はないし、第一何か言おうにも口は塞がってしまっている。裏筋を舐め上げ先端から零れ落ちる先走りを舐め取ると、もう萎える気配などないものはびくりとしっかりとした反応を返す。その反応に手応えを感じ、感じそうな所を重点的に
「美味そうにしゃぶるよなぁ、そんなに好きか」
 思わず顔を上げ好きではないですとムキになって言い返したい衝動に駆られるが、今とっている行動はどう考えても好いているが故のものにしか見えないだろう。実際、中を抉り蹂躙して善がり狂わせてくるこの肉棒を愛おしむ気持ちが心のどこかにあるのを否定もしきれない。指の一本や二本では足りないと、後孔がぎゅっときつく指を締め上げてくる。息を深く吸いながら締め付けを緩め中指を差し入れ指の数を増やすが、その程度では満足できないどころか欲しいという欲求をますます煽り立て逆効果になってしまう。
「んむ……ふっ…………はぁっ……あ、あっ……」
「どうしたよ、口がお留守になってんぜ。てめぇで後ろ弄るのがそんなにいいのかよ」
「あぁっ……ちが…………自分だと……うまく、できなくて……っ」
「その割にゃ蕩けた顔してるぜ。別にオレのじゃなくても中に挿れられんなら何でもいいんじゃねぇのか?」
「んっ……いやです…………これが、欲しい……」
 言いながら舌を伸ばして鈴口を舐め上げるリンドウを見て、無意識にやっているのには違いないだろうがとんでもない事を言う奴だと半ば呆れ半ば興奮といった割合でキキョウは思わされた。今すぐ押し倒して捩じ込んでやりたい衝動に駆られるが、それでは楽しみが薄れてしまう。ここは我慢のしどころとぐっと堪える。
「もう……こんなに、大きくなったし……我慢、できない……」
 自分では思うように上手く後孔を解せていない感触はあったが、もう辛抱も限界だった。後ろから指を抜いたリンドウはキキョウの腰の上に跨がり、太く育った肉茎に手を添えて後孔に宛てがう。早く欲しい、最早一時も焦れていたくなくて、躊躇なく体重をかけ腰を落とす。
「ああっ……! ああぁ……っ、はっ……う、ん……っ、ふ……」
 根元まで呑み込み、感触を確かめ味わうように筋肉を収縮させる。内側に穿たれたものは期待通りの熱さと硬さで中を埋め、深い満足感をもたらしてくれる。
「挿れただけなのにまるでイっちまいそうな顔してんな、そんなに気持ちいいのか」
「あっ、あぁっ……きもち、いい……です……っ」
「でももっと欲しいんだろ? ちゃんとてめぇで動かねぇといつまで経ってもイけねぇぞ」
 動きやすいようにとの配慮だろう、いつの間にか立ててあったキキョウの膝に両手を乗せて体重をかけ、リンドウは身体を上下に揺り動かし始めた。
 内壁が抉られ擦れ奥まで到達する度に激しい快感が身体を貫いて、頭がくらくらして動きが止まりそうになる。だがキキョウは動く気配を全く見せない、自分で動かなければ更なる快楽を貪ることはできない。もっと欲しい、心も身体も支配したその欲望が強い快感に溺れ崩折れそうになる身体をどうにか支えて腰を動かす。
「いいっ……あっ、あぁっ、いいっ、きもち、いい……っ、あっ、あっ、あぁっ、もっと……おく、まで……ほし……っ」
「充分、奥まで届いてんだろ、そんなにズッポリ咥えこんでよ。もっとでかくねぇと満足できなくなってきたのか?」
「ちがい、ます……、はっ、あ……っ、兄弟子に……っ、突いて、ほしくて……っ、んんっ、んっ、あっ、はっ……」
「オレぁ動かねぇっつったろ、せいぜい自力で頑張んな」
 キキョウの答えにリンドウの顔は切なげに歪むが腰の動きは止まらない。感じる箇所に当てようと懸命に腰を揺り動かす姿はどうしようもなく淫らで、どこかかえって微笑ましくすらあった。柔らかく熱く蕩け絡み付いてくる内壁の感触に、涼し気な顔をしているキキョウも内心で興奮を高められていく。
 出し挿れの動きは段々激しさを増していき、中を擦られる悦楽を覚える度に、腕を後ろに回している為前に反り出たリンドウの胸板がびくびくと震える。だらしなく緩んだ口元からは止め処なく甘い嬌声が漏れ出し、焦点の合わぬ眼で堪えきれないように首を振り巡らす。
「あぁっ、あっ、あ、あにでし……っ、おねがい、ですから……っ! ついて……くださ……、あ、あっ、んんっ!」
「オレが動かなくてもてめぇだけでちゃんとイけそうなんだろ? ちゃんとイけたら考えてやらねぇでもねぇぜ?」
「そんな……っ、あ、あぁっ、や……ほしい……っ、あにでし……っ、ああっ、おねがい……ですからぁ……っ!」
 上体を起こした姿勢を維持できなくなってリンドウは前のめりに上半身を倒し、手を突いてどうにか持ち直す。自分から腰を振って男に犯される快楽に溺れきり陶酔した淫奔な表情が眼前に迫り、興奮にキキョウはごくりと音を立て唾を飲んだ。
「イきそうなんだろ? もっとちゃんと腰振らねぇとイけねぇぞ?」
「ああっ、あっ、ひとり、じゃ……っ、イけない……からっ、はっ、あっ、おねがい、です……っ、いっぱい、突いて、くださ……っ!」
「あとちょっとだろ、たまにゃあ自力で頑張ってみな」
 どうしても願いを聞き入れてもらえず辛そうに眉根を寄せたリンドウは、それでも達したいという欲求には抗えないのか懸命に上下に身体を揺らす。強い快感に翻弄されながらそれでも自身の動きで達する勘所を掴めずにいるのか、もどかしそうに息を詰め角度や深さを変えては試行錯誤を繰り返すが後もう一歩のところでどうしても頂点まで到達できない様子だった。
 この状態をじっくり楽しむのもキキョウとしては望む所だったが、何せタイミングが悪い。今は早朝で、リンドウはそろそろ身支度を整え仕事を始めなければならない時間だ。身体の汗やその他を洗い流す時間を考えればあまり猶予はない。もっと焦らしに焦らしてこのいやらしい光景をじっくり楽しんでやりたいところだが、残念ながらそうもいかないだろう。
「ったく……仕方ねぇな」
 首の後ろに組んでいた両手を伸ばしてリンドウの腰骨を掴み、下から強く突き上げる。焦れに焦れていた身体に強い快感が突き抜け、激しく身体を揺さぶられながらリンドウは顎を上げ高い声を発した。
「ひぁっ! あっ、ああっ、や、あぅっ、そんな……っ、ああっ、そんなに、急に……っ、されたらぁっ……っ!」
「イきてぇんだろ? 時間もねぇから今回は特別だぜ」
「だめ、ですっ、あっ、あぁっ、すぐっ……すぐ、もうっ、もっ……だめっ、やっ、あぁっ、イキそ……っ、イッちゃ……、ああっ、イクっ、イク……っ!」
 全身を包む強い悦楽に陶酔しきった表情でリンドウの身体が仰け反りがくがくと震える。それと同時にきつく締め付けられ、襲い来る快感の波に逆らわずに自身を包み込みうねる熱く蕩けたリンドウの内側に熱を解放し吐き出していく。受け止める度にリンドウは身震いし甘く呻いた。
 一頻り放出が終わると、精魂尽き果てた様子のリンドウの身体が前のめりに倒れ、胸に凭れかかってくる。
「おいおい大丈夫かよ、これから仕事だろ」
「あんなに……焦らして……激しく、するから……」
「今日はオレのせいじゃねぇぞ、おめぇから始めたんだからな。おめぇが一人でさっさとイってりゃ問題はなかったんだぜ? それを折角仕事に間に合うように終わらせてやったってのに文句言われる筋合いはねぇよ」
 そう言われてしまえば、確かに今日はリンドウから先に手を出したのでぐうの音も出ない。反論したくても何も言えなかった。
 だがどちらにしろ、もうしばらくは動けそうにない。凭れ掛かり密着した肌の温度を感じながら深く息を吸い込んでは吐き、柔らかい手付きで頭を撫でられる感触の心地よさに浸り、どこかぼやけた意識のままで早く身支度をしなくてはと気は焦るものの全身を包む気怠い絶頂の余韻はまだ活動を許してはくれないようだった。

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