かき氷は情事の後に

 軒下から一歩踏み出すと、照り付ける夏の陽光が鋭く肌を灼く。眩しさに幾分目を細めながら、リンドウは手にした桶から柄杓で水を掬い店の前に撒き始めた。あまりの暑さに往来は人通りも少なく、今日はもう店を閉めてもいいかもしれないと水を撒きながら考える。
「あっちいなぁ……ったくやってらんねぇぜ、碌に眠れやしねぇ」
 この店のもう一人の職人――キキョウが長い昼寝からようやく目覚めて起き出してきたようだった。店の入口から顔だけ覗かせて眩しそうに目を細めている。
「よくお眠りだったではないですか」
「暑すぎて何回も目ぇ覚めてたよ。汗だくで気持ち悪ぃし……」
「この暑さでは今日はもうお客さんも来なさそうですし店は閉めて、氷がありますからかき氷でも作りますか?」
「そりゃいいな。それにしても身体がベトベトで気持ち悪ぃな……裏で水でも浴びてくるわ」
 そう言うとキキョウは中へと戻っていく。庭にある井戸に水を浴びにいくのだろう。
「拭くものを忘れないでくださいね、かき氷が出来たら呼びに行きますから」
 リンドウの言葉に背中を向けたまま手を振ってキキョウが答え、奥へと引っ込んでいく。リンドウは手早く暖簾を下ろし入り口に鍵をかけ、売れ残りの生菓子を冷蔵庫へとしまう。味付けに湯で溶いて粗熱を取った抹茶と緩く伸ばした餡を用意してから冷凍庫から氷を取り出し、糸鋸で適当な大きさに切ってから手動のかき氷器に入れて器をセットし、手早く削っていく。見る間に細かく砕かれた氷が山を成していくのを二度繰り返し、出来上がった氷の山に抹茶と餡をたっぷりと掛けてかき氷が完成する。
 作業にそれなりに時間はかかった筈だが、キキョウはまだ井戸から戻ってきていない様子だった。とりあえず出来上がったかき氷を冷凍庫に入れ、縁側へと様子を見に行く。
 井戸端で下帯姿になったキキョウが釣瓶を持ち上げ、頭から水を被っていた。釣瓶を井戸の底に戻すと後ろ髪を掻き上げ、華奢な背筋が露わになる。肌の脂に弾かれた水が玉を作り陽光に煌めくその背中は、あまりにも艶かしくて思わずごくりと喉が鳴る。
 今日はもう店は閉めてしまったのだし、かき氷も冷凍庫にしまってある。昼日中からというのは気が咎めなくもないが、あんなにも艶美な背中を晒されてはリンドウとて男なのだ、劣情を抑えきれなくなる。
 縁側の踏み石に置いてあるつっかけにそっと足を入れ井戸へと歩いていく。足音に気付いてキキョウが振り向くが、それには構わず歩を進める。
「かき氷は出来たのかよ……って、何してんだ……」
 拭いていない身体と髪に滴る水で濡れるのも構わずに後ろからキキョウを抱き竦め、背筋に唇と舌を這わす。艷やかな肌は冷たい井戸水でひやりと冷えて、心地良い涼を一時もたらす。
「氷ができたから呼びに来たんじゃねぇのかよ」
「そうですが……こんな姿を見せられては、我慢できなくなります」
「暑いから抱き付くんじゃねぇよ! 何こんな真っ昼間から盛ってやがんだ!」
「かき氷は冷やしてありますから……食べる前に、しましょう」
 キキョウの耳許で囁いて軽く耳朶を噛むと、キキョウが僅かに身動ぎする。しかしながら抱き締めた腕を振り解かれ、振り返ったキキョウの掌にに額を押される。
「このクソ暑いのに何でてめぇとくっつかなきゃなんねぇんだよ、冗談じゃねぇぜ」
「離れていてはできないでしょう。それに、一汗かいてからの方がかき氷も美味しくなりますよ」
「そういう事を言ってるんじゃねぇ! 汗なんざ黙ってても嫌ってほどかくのに何でわざわざてめぇと二人して汗だくにならなきゃなんねぇんだよ!」
「そんな色っぽい姿を無防備に晒している兄弟子にも責任はあると思いますが」
「着物脱がなきゃ水被れねぇだろうが! どうしろっつうんだよ!」
 押し合いへし合いを続けながらの口論も、この炎天下ではどんどん体力を奪っていく。暑さに弱いキキョウはやがてリンドウの額を押さえた手を降ろし、前髪を掻き上げて額を晒した。
「あぁもうやめだやめ! こんな日向のクソ暑い所で言い合っててもバテるだけだ! 中入って氷食うぞ」
 言い放ってキキョウは歩き出し、縁側に登って用意してあったタオルで身体を拭いていく。
「してくれるまでかき氷は出しません。汗をかくのが嫌でしたら俺が動きますので」
「しつけぇなおめぇも……どんだけしてぇんだよ」
「もう今すぐにでも押し倒したいです」
「真面目くさった顔でそういう事言うな! なんか怖ぇだろ! ……ったく、分かったよ、付き合ってやりゃいいんだろ。オレぁ何もしねぇからな」
 キキョウがそう吐き捨てるとリンドウは真面目くさった顔をしたまま縁側に上がり、キキョウの両肩を掴んで歩き出し、障子の裏まで引き摺っていってゆっくりと伸し掛かりキキョウの身体を畳に横たえさせた。
「布団を敷いた方がいいですか? 背中が痛いでしょうし」
「そんなのはいい、面倒臭ぇからとっとと済ませろ」
「いつもはじっくり愉しもうと仰るではありませんか。するのは好きでもされるのはお好きではないんですね」
「暑ぃから早いとこ離れたいだけだっての! さっさと済ましやがれ!」
 盛大に眉を顰めたキキョウの不機嫌そうな声もどこ吹く風で聞き流し、眼鏡を外し脇に置いたリンドウが身体を倒して唇を重ねてくる。探るように幾度か軽く唇を押し当てても拒む様子はないところをみると、言葉の通りやる気がないだけで拒む気はないのだろう。舌先を伸ばしキキョウの唇をなぞり湿すと存外素直に口元が緩み、滑り込んでくる舌先を受け入れる。
「ん……んんっ…………ふ……」
 肌を重ねているだけで汗がじとりと滲む。だがそれはこのとびきり甘美な口付けをやめる理由にはならない。いつかキキョウにそうされたようにキキョウの耳を両手で塞ぎ、腰と腰を擦り合わせて此方の熱を相手に伝える。つまらなさそうに目を閉じながらもぴくりと肩が揺れ身体が反応しているのを感じ、絡めた舌の甘さに更に没頭していく。
「んっ……この…………早く済ませろっつってんのに……」
「駄目です、もっとじっくり愉しませてください。ほら、もっと……」
「チッ、こんなねちっこい奴だとは思ってなかったぜ……とんだ誤算だった」
「キキョウさんには言われたくありません」
 ぴしゃりとキキョウの言葉を遮って、リンドウが再び唇を重ねてくる。確かにキキョウはねちっこい、その自覚は自分でもある。だがそれと今の状況とは話が別だ。ねちっこくじっくりと責められるということは、それだけ身体を密着させる時間が増えるという事を意味し、つまり暑い。どかせるものならどかしてやりたかったが腕力はリンドウの方が上だ、簡単にはどかせないだろう。つまりキキョウはただでさえうんざりするような暑さの中盛りのついた男と密着し自身も昂ぶらされて体温を上げることになる。それは嫌なのだが、交わりの回数を重ねて立派に成長したこの弟弟子は今ではすっかり手慣れた手付きでキキョウの感じる箇所を探り当ててくるし、自分からする口付けも辿々しさはとうの昔に消えた。愛しさを感じている相手でもあるし、技術も上達したので今ではすっかり普通に感じさせられてしまう。キキョウは元々男には抱かれる事の方が多かったから抱く側である事にこだわりはないのだが、気付いた時にはリンドウの方がもう後ろを犯されないままでは満足できない身体になってしまっていた。なんつうドスケベな身体だよ、益体もない感想が浮かぶ。だが元々の素質もあるだろうがそれを開花させてしまったのは明らかにキキョウなので、一応の責任は感じているからこうして暑さを耐え忍びながら付き合っている。身体の相性がいいのはよく分かっている相手だから嫌ではないのだが、とにかく暑いのが困る。汗が噴き出して止まらない。額から流れた汗がこめかみを伝って耳の裏に垂れていく。伸し掛かられ密着した部分の肌も顎の裏や脇や内腿もじっとりと汗が滲んでいる。これでは冷たい井戸水を被った意味が全くないというものだった。
 ようやく口を離したリンドウは汗の滲んだ首筋に顔を近付け、舌先で汗の匂いと味を堪能しながら時折甘く噛んでくる。同時に乳首を捏ねられ臍の辺りをゆるりとなぞられて、弱い所を責められて悔しいが甘い息が漏れてしまう。
「声、我慢しないでください、聞かせてほしいです」
「そういう事ぁ、もっと上達してから言うんだな。意地でも聞かせてやんねぇけど」
「こんなに感じてるのに?」
 臍の辺りを指先で撫でていた手が、下に降りて下帯からはみ出してきそうなほど大きく成長したものの形をつうっとなぞる。
「おまっ……そりゃ、卑怯だろ……っ! この……んんっ……!」
 堪えきれずに声を漏らしてしまうと、それに気を良くしたのかリンドウは焦らすようなゆるゆるとした手付きで昂ぶりを上下に擦り始める。
「ほらもっと……ちゃんと、声聞かせてください」
「誰、が……っ、く……んんっ、う…………はっ……」
 ねちっこくねっとりと首筋を舌先が這い回りながら、もっと直接的で強い刺激を求めてやまない昂ぶりをじっくりと焦らし責められる。今までリンドウにしてきた事が自分に返ってきているといえばそうなのだが、ねちっこいと思っているなら何も真似をすることはないだろうにとも思う。押さえきれなくなった甘ったるい呻き声が時折喉から漏れ出て、一度漏れ出てしまえばもう止まらなくなっていく。身体がどんどん熱を帯びていって、汗も次々噴き出してきて止まらない。
「はっ……あ…………んんっ、う……っ、うぅっ……」
「あぁっ……キキョウさんの、もう、こんなに硬くて、大きい……」
「焦らしてんじゃねぇよ……この……っ、それが欲しいんだろ、ならさっさと、終わらせろ……っ!」
「駄目です、まだ……もっといっぱい、感じさせたい……」
 首元を離れた唇は鎖骨を撫でて胸板を辿り、先程いじくり回されてほんのり赤みを帯びた乳首に辿り着く。リンドウはそれを唇に含むと、舌で柔らかく転がしてから甘く歯を立てる。陰部をゆるりと上下に扱いていた手も、先走りで湿った下帯の上から先端を捏ねくる動きに変わる。
「あっ……は、もう……っ、焦らすな……って、言ってんだろ……!」
「ここ、俺以外の男に感じるように開発されたと思うと、いじめてやりたくなってきました」
「んな事言ったって、しょうがねぇだろ……おめぇに会う前の話なんだからよ、っておい、聞いてんのか……ぐ、うっ!」
 乳首の付け根をやや強く食まれ、びくりと身体が跳ねて高い声を漏らしてしまう。その間も先端を弄ぶ手淫は止まず、昂ぶりはどんどん張り詰め感度も増していく。
「もう、やめ……っ、ふ、くっ…………あっ、あぁっ……!」
 下帯の隙間から挿し入れられたリンドウの熱い手が直接昂ぶりを握り込んで上下に動き、直接的で強烈な快感が身体を走り抜ける。睾丸がキュウっとせり上がってくるのを感じ、止めようとリンドウの腕に手をかけるもののびくともしない。
「ほんとに……っ、やめ、ろ……っ! も……出る……」
 制止の言葉を上げてみるもののリンドウは素知らぬ顔で愛撫を続け、滾々と滴り溢れる先走りが幹を濡らしてぬめらせ、リンドウの手の動きに合わせてぬちゅぬちゅと卑猥な音が立つ。何もしないとは言ったが何もしないまま達せられるのはどうも納得がいかない。しかしながら腕力の差は如何ともしがたく、ばたつかせようとした脚もすぐにリンドウの脚に抑え込まれた。
「だめだって……言って……この、もっ……やめ…………く、うぅっ……も、出るっ、出る、から……っ!」
 もう限界だ、そう思った刹那痛むほど強く乳首を食まれ、びくりと腰が跳ね上がり、心ならずも下帯の中に精を解き放ってしまう。
「うぅっ……く……っ、はっ、あ…………あぁっ……」
「沢山、出ましたね……こんなに出るなら、やっぱり、中で出してもらえば良かったかも……」
 陶然とした声で呟きながらリンドウは下帯の中から手を引き抜き、手を汚した白濁を舐め取っていく。
「っ……ざけんなよ、この……、交替だ、代われ」
 為す術もなくまんまと絶頂させられてしまった事に対する憤然とした心持ちが射精後の気怠さも掻き消してしまう。キキョウは起き上がると下帯を解き、座っているリンドウの眼前に精で塗れ汚れたものを晒す。
「とりあえずこれ、おめぇの口で綺麗にしろ」
「何もしないのでは、なかったのですか?」
「気が変わったんだよ、てめぇにやられっぱなしなんざ真っ平御免だね。おら、とっととしゃぶれ」
 不機嫌にそう言い放つと言われた通り素直にリンドウは放ったばかりで白濁に塗れた目の前のものを手に取り口に含んだ。舌全体を使いゆっくりと舐り回し、白濁を舐め取っていく。歯が当たる事もなくなったし、頬肉を窄め性器のように肉棒を包み咥えこみ刺激する事も覚えた。何よりキキョウの言葉に従順に従っているというのがいい。先程のようにリンドウがその気にさえなればいつでも立場は逆転するが、そんな事は滅多になく基本的にはキキョウがリンドウを従わせている。兄弟子という立場もあるし、控えめなリンドウの性格故の部分もあるだろうし、最初の内に後ろを犯される快楽をたっぷり身体に教え込んでおいたのもあるだろう。だからこそ今日のようにこいつは自分より力の強い男なのだと突然思い出させられる事態にはどうにも弱い。
 もう陰茎を汚した白濁はすっかり綺麗に舐め取られてしまったが、リンドウは口を離そうとはせずキキョウを高めようと懸命に舌を動かす。鼻から漏れ出す息は荒く、時折甘やかな声が混じって漏れる。欲しくてたまらなくなっているのだろうが、今日はそう簡単に与えてやるようなつもりはなかった。先程の仕業を数倍にして返してやる、温かく肉茎を包み込む口腔と感じる箇所を刺激してくる柔らかな舌の感触をじっくり楽しみながらそう画策する。
 このまま口内を滅茶苦茶に犯してやってもいいが、それだけでは面白くない。先程キキョウが味わわされた焦れったさを何倍にも大きくして感じてもらわなければならないのだ。もういいと告げて腰を引くと、キキョウは屈み込んでリンドウの服を脱がせ始めた。
 素直に服を脱がせているリンドウの目は明らかに期待で潤んでいる。そう簡単に思い通りにいかせてなるものか、そんな思いで目を眇めるが待ち切れない様子のリンドウは急かすように腰を揺らし、ついに下衣の留め紐を自分で解き始めた。その動きを手で制止すると、不可解そうな顔をしてキキョウを見る。
「何そんなにがっついてんだよ」
「早く……欲しいです……挿れてください……」
「まぁ待てよ、てめぇだけじっくり愉しんどいてオレぁナシか? そりゃ不公平ってもんだろ」
 そう言い放つと返す言葉がなかったのかリンドウはぐっと言葉に詰まった様子で黙った。その様子を満足気に眺めて勝ち誇ったような笑みを浮かべたキキョウは、リンドウの肩をそっと押し身体を横たえさせる。脇腹の辺りに顔を埋めくすぐるように舌で舐めると、ぴくりとリンドウの身体が揺れ甘い息遣いが漏れ聞こえてくる。
「キキョウさ……っ、そこは……ぁっ……」
「なんだよ、好きだろ?」
「そこだけじゃ……足りない、ですから……、他の、ところも……っ」
「そうはいかねぇよ、今日はここの気分なんだよ」
「そんな……あ、あぁっ……!」
 口を離していたので指先でつうっと脇腹をなぞると高い声が上がる。リンドウにとって脇腹はかなり弱い弱点だが、そこだけで絶頂に達せるような箇所でもない。つまり焦らし倒すにはもってこいの場所だった。
 右の脇腹を舌でなぞり時折吸い噛みながら、左の脇腹は触れるか触れないかのぎりぎりの間合いで指先を掠めなぞらせていく。緩やかな愛撫を続けていると堪えきれないのかリンドウは盛んに腰を揺らして早くとかもう挿れてくださいとか懇願してくるが、全て無視してじっくりと緩やかにリンドウの身体を高める事だけに集中する。甘ったるい喘ぎ声を絶え間なく漏らしながらリンドウはキキョウの頭と肩に手をかけ引き剥がそうとするが、快感に溺れている時のリンドウの力は普段の何分の一も出ていないだろう、キキョウを引き剥がすにはとても足りなかった。
「や、あぁっ……あっ、あ……いやですっ……そこ、ばっかり……んんっ、キキョウさんの……っ、はやく…………ほしい……っ!」
「慣らしてもねぇのにいきなり突っ込まねぇよ、ゆっくりやるからちゃんといい子で待ってな」
「う、あ、あぁ……っ、や、は……っ、そんな……っ、意地悪、ばっかり……っ!」
「そんな事ぁねぇだろ、優しくしてやってるだろ?」
 ねちっこく責め立てた脇腹からようやく頭を離したキキョウの舌が臍の辺りをぬとりと舐め、急激に襲ってきた強い刺激にリンドウの背中が跳ねる。
「ひ……っ、あっ、あぁ……、うぅ……んっ……そこっ、だめっ……だめです……っ、やっ、あぁっ、やあぁ……っ!」
 突き立てられたキキョウの舌先が臍の穴に挿し入れられ、掻き回すように動き回る。リンドウの左の脇腹を撫でていたキキョウの手は胸元に移動して、硬く尖った乳首を押し潰し捏ね回して責め立てていた。
「あぁっ、あっ、だめ、ですも……っ、やめっ、ひっ、は、あぁっ、や、も……イきそっ、だからぁっ……!」
「何が駄目なんだよ、イきゃいいだろ」
「あっ、やだ、やだっ……あぁっ! あ、も、イクっ、イク……っ、出る……っ!」
 びくりとリンドウの腰が跳ね、射精の快感が幾度も身体を震わせる。先程のキキョウと同じ様に下着の中で、その上直接触る事もなく放たせてやったという事への満足感がキキョウの胸を満たす。荒い息を整えながら潤んだ目で見上げてくるリンドウに余裕の笑みが零れる。
「おめぇのイってる顔、ほんとやらしい顔だぜ。もっとグチャグチャにしてやりたくなっちまうなぁ……。それに臍でイっちまうなんてどこまでドスケベな身体してんだよ」
「んっ……ふ…………やめて、くださいと……お願いしたのに……洗うのは俺なんですよ……?」
「んなこと言ってもてめぇだってさっき同じ事したろ、洗うのはてめぇだかんな」
 子供かと思わず呆れた声で言い放ちたくなるが、確かにそれは事実なのでそう言われてしまえば返す言葉もない。面白くなさそうに眉根を寄せながらもリンドウは黙りこくった。
「……なぁ、もうお互い出すもんも出してスッキリしたし暑ぃしこれで終いに……」
「……」
「は、なんねぇよなぁ……ったく、世話の焼ける弟弟子様だぜ」
 やれやれといった表情で長い息をキキョウがつく。世話が焼けるのはそっちの方だという言葉は飲み込みつつも、面白くなさげな顔のままリンドウは口を開いた。
「ですから、汗をかくのがお嫌ならば俺が動きますので」
「……でも本当はどうしたいと思ってんだ?」
「それは……その…………」
「奥までガンガン突いてほしいんだよなぁ? そうでねぇと満足できねぇんだろ? このドスケベな身体はよ」
「分かっているなら……言わなくても……」
 さっと顔を赤らめてリンドウは視線をぷいと横に逸らしてしまう。こういう時の反応はいつまで経っても初心なままだ。そういうところが可愛いし飽きない部分でもあるのだが。横を向いたリンドウの頬に口付けを繰り返しながら、下衣と白濁でべとつく下着を脱がせていく。
「おら、ちゃんと言わねぇと分かんねぇぞ? どうしてほしいんだよ?」
「早く……挿れて、ください…………いっぱい、奥まで突かれたい……」
「ほんとドスケベだよなぁ、好きだぜ、おめぇのそういうとこ」
 言いながら低く笑うとリンドウはぎゅっと固く目を閉じた。あれだけ自分からはしたなく欲しがっておきながら人に言われるのは恥ずかしいようだった。その様子に苦笑を浮かべながらリンドウの陰部に付着していた白濁を指でこそげ取り、割った膝の間に入って奥まった箇所でひくつき震える窄まりに精液を塗り込んでいく。
「ああっ、あ……っ…………はやくっ……はやく、欲しい、です……っ」
「慣らす間くらい我慢してろよ、何だかんだ言って痛い方が好きってんなら考えねぇでもねぇけどよ」
「違います……けどっ……、我慢、できな……から……ああぁっ!」
 まだ固く閉じている出入り口に指を挿し入れ解すようにうねらせ動かすと、こんなものでは満足できないと言いたげにリンドウの腰が盛んに揺れて甘い声が絶え間なく漏れる。こんなにもいやらしく男を誘う婬猥な奴に先刻は組み伏せられてしまっていたのかと思うとどうにも釈然とはしないが、元はキキョウなど簡単に組み敷く力のある男をこんな風に婬猥に開発してしまったのはキキョウなので責任が誰にあるかといえばキキョウだった。
 もっとと急かされて挿し入れられる指が二本に増える。もっと奥深くに、もっと太くて熱いものが早く欲しい、そんな猥りがましい思いばかりが頭の中を埋め尽くしてしまって他には何も考えられない。こうして身体を重ねるようになるまでは知りようもなかったが、動き回る二本の指の感触を思いの外鋭敏に後孔は感じ取り、優しく解される動きは身体の奥を甘く疼かせて意識をふわりと宙に浮かせて足元の定まらないような心地にさせられる。この浮き立つような不安定な心地も嫌いではないけれども、それよりも激しく熱く内側を抉り突かれる圧迫感の奥底に潜む圧倒的な快感を与えられるのが待ち切れなくて勝手に腰が揺れてしまう。
「キキョ……さっ……も、ほぐれた……でしょ……っ、んんっ、はっ……はやくっ…………ください……っ」
「まだ駄目だな、こんなんで挿れたら痛ぇぞ」
「あぁ……っ、だいじょうぶ……ですからぁ……っ、はやっ……はやくっ……は、ああ……っ、おねがい、ですからっ……ん……っ」
「まぁ待てよ、もうちょっとその焦らされて欲しくてたまんなくなってる面拝ませろよ」
 急かしてもキキョウは聞き入れるつもりはないどころか楽しんでいるらしい。先程の事を余程根に持っているのだろう。子供ですかあなたはと聞きたくもなるが、そういう所も決して嫌いではないどころか惹かれる要因の一つになっているのだからままならないものだとリンドウは思う。
 それはそれとして、じっくりといたぶるように時間をかけて解し慣らされて欲しいものが与えられないもどかしさと焦れったさばかりが募るこの状況は非常に苦しい。もう我慢の限界などとっくに超えているのに先程の反撃のつもりなのか与えられるのはゆっくりやわやわと出入り口を揉み解す指先だけだ。こんなものでは全然足りない、もっと太く硬く熱いもので滅茶苦茶に中を掻き回されたい、その欲求はとうに身体中を満たしていて外まで溢れ出てしまいそうだった。
「おっ……おねがい、ですから……っ、はや……はやくっ……、挿れて……っ!」
「まだ駄目だな、おら、まだちゃんと解れてねぇだろ? 挿れねぇとは言ってねぇんだからそう焦らずもっとじっくり愉しもうぜ?」
 言いながらキキョウは挿し入れる指をもう一本増やす。三本の指先が後孔を押し広げうねり動く感触は生々しく、欲求と疼きをますます強めるばかりだった。もう我慢がきかずに、上体を起こしキキョウの腕を掴んで力が入らないながらもあらん限りの力を込める。
「もうっ……指じゃ…………我慢、できない……です……、早く……っ、キキョウさんの、欲しい……っ!」
「あーあ、すっかりはしたねぇ事言うようになっちまって。その欲しくてたまんねぇって顔、ほんとやらしいなぁ……」
「欲しくて、もうっ……我慢、できない……です…………。お願い、ですから……っ!」
「しょうがねぇな全く、まぁ焦らされるてめぇの面も充分拝んだ事だしそろそろ許してやるよ。おら、来いよ」
 そう告げるとキキョウは胡座をかいて座り陰茎の根本を支え持って上向けて、膝の上に乗ってくるようにリンドウに促す。起き上がったリンドウは膝立ちになってキキョウと密着し、臀部を両手で割り広げて上向いている先端が入り込んでくるように位置を探りながら少しずつ腰を落とす。
「あっ……んっ、あ、あった……」
「ゆっくりで、いいぞ……入ってくる感覚も、じっくり楽しみてぇだろ?」
「むりです……もう、がまん、できない……っ」
 先端をゆっくりと受け入れ呑み込んだ後は、もっと奥まで欲しいという欲求のあまりの強さに負けて体重をかけ一気に腰を落とす。擦れる痛みは多少あったが、ようやく根元まで肉茎を受け入れ内側を埋め尽くされ押し広げられた満足感の前では些細に過ぎた。しばらくそのまま動かずに内側を満たされる感覚をじっくりと味わう。
「ああ……あっ…………いっ、いい……きもち、いい……っ」
「挿れられただけでイっちまいそうな顔して、ほんっと好きだよなぁおめぇも。誰のでもそうなっちまうんじゃねぇのか?」
「あっ、やだっ……いやです……っ! キキョウさん以外の、なんて……っ、ほしく、ないです……っ!」
「分かった分かった、そう必死にならなくてもんな事ぁ分かってるよ。ちょっとからかっただけだろ、なぁ?」
 からかい混じりの愉快げな口調で言いながら、下からの突き上げをキキョウが突然開始した。繰り返し幾度も奥深くを犯されて抉られる度に目の前が白く眩むような強烈な快感が襲ってきて、制御できない高い嬌声がもう抑えるという事すら頭にも浮かべられずに感じるまま放たれる。
「あぁっ! あっ、ああっ、は、やあっ、ああぁっ、おく……っ、おくっ、いっぱい……きてる……っ! だめ、だめで……っ! やっ、ああぁっ!」
「あんまりでけぇ声出すとご近所さんに聞こえちまうぜ? おめぇもちゃんと腰動かせよ、おら、下向け」
 言われた通り下を向くと上向いたキキョウが唇を合わせてきて、下から突き上げられながら口内を貪られる。思考などどろどろに溶かされてしまいそうな快感と熱に上下から責め立てられ、もう何も考えられずにひたすら快楽を貪ろうと腰を揺すり舌を絡め合う。風もほとんど入ってはこず日陰にいても蒸し暑さは相当のもので、その上情欲に火照った身体を密着させ激しく揺らしているのだから二人とももう既に汗みずくで、滴る汗で畳は湿ってきていた。それでもどれだけ汗が噴き出し流れ落ち、キキョウの肩にかけた手が滑っても、高みに昇りつめようとしている身体の動きを止めることなどできはしない。もっと、もっと欲しい、この熱に浸っていたい、その思いに頭の中は埋め尽くされてしまう。身体の内側を激しく掻き回され抉られる快感がじわじわと回る毒のように全身を徐々に侵して支配していってしまう。絡ませ合う舌の甘さに夢中になっている間に深く密着した腰の間にキキョウの手が割って入り、激しく後ろを犯されることに興奮し密着した腹の間で摩擦による刺激を受け再び大きく硬く形を成したリンドウの昂ぶりを緩く握りしめる。
「はっ! あっ、ああっ! やっ、そこっ、だめっ、や、ああっ……あっ、あぁっ、すぐっ、すぐ、出ちゃう、からぁっ! だめっ、あっ、イク、イクっ……でるっ、でちゃ……ああぁっ!」
 呆気なく白濁が舞い飛び、ぱたぱたと垂れ落ちてキキョウの手を汚す。だがそれには構わずキキョウは腰の動きも手の動きも止めなかった。
「何遍イってもいいぜ? まだ後ろでイってねぇだろ? イきてぇよなぁ? もっとしっかり腰振れよ?」
「ああっ……後ろっ……後ろで……っ、イきたい……っ、キキョウさんの……もっと、ほしい……っ!」
「まだ足りねぇのかよ、随分と業突く張りだな」
 さもおかしそうに笑うとキキョウは再びリンドウに下を向かせて唇を重ね、腰に回していた手を上げて脇の下から回しリンドウの肩を抑え込んで下からの突き上げを一層強くした。それに応えるようにリンドウの動きも激しくなっていく。
「んんっ! んっ、んぐ……っ、ふ……んんっ、んぁっ、あうっ…………んっ、んんっ、んっ……」
 熱くて熱くて、溶けて一つになってしまいそうだった。だが決して溶け合うことなどないからこそ体内に入り込んだ異物は内側を抉り犯し脳を灼くような快感を与えてくる。あまりにも気持ち良すぎてどうにかなってしまいそうだった、いやもうどうにかなってしまっているのかもしれない。自分の今の状態についてすら正常な判断が下せない。今は何も考えずただ全身を包み震わす強烈な悦楽に身を浸していたかった。
「んぁっ……は……あっ、すきっ、キキョ、さぁっ……すき、です……っ、キキョウさ……っ!」
「俺も、だから……もっと、口付け、させろ……」
 思わず顎が上がって口が離れたことが不満だったのだろう、キキョウのその要求にリンドウは素直に応えて下を向き再び深く唇を重ね合わせた。暑さと熱でただでさえ朦朧とした意識は強烈な快感に冒されて最早機能せず、ただ寄せては返す快楽の波に揺られるばかりだった。
「んぁっ……あっ、イきそっ……後ろで、後ろで……っ、イっちゃう……っ! あっ、ああっ、だめ、もっ、ああぁっ、イク、イクっ、キキョウさっ……、キキョウさぁ……っ!」
「こうなりゃもうヤケだ、イきっぱなしにさせてやるから好きなだけイけよ……っ!」
「だめっ、もっ、イクっ、イっ……ああぁ……――っ!」
 キキョウの腕の中でリンドウの背中が後ろに撓り、びくびくと幾度も身体を震わせる。だが絶頂の余韻に浸る間もなく、脱力したリンドウの身体は畳の上に横たえられて正常位に移行し引き続きキキョウに犯され続ける。
「ひっ、いっ、あぁっ! あっ、あっ、またイクっ、やっ、キキョ……さっ、あぁっ、またっ、イっちゃう、から、キキョ、さ……っ!」
「何遍でも、イっていいっつったろ? 好きなだけ、イけよ……!」
「ああっ、や、やだ……っ、おくっ、おくに……っ、出して、ほしい……からぁっ……! キキョウ、さんと……っ、いっしょに……イきたい……っ!」
「そんな事、言われちまったら……くれてやるしか、なくなるじゃねぇか……」
 若干余裕を失った様子のキキョウの声が低く響く。言葉の内容を薄ぼんやりと認識し、期待に増々胸が高鳴り一滴残らず絞り尽くそうと腰の動きも激しくなる。
「ああっ……ほしい……っ、おくに、いっぱい……だして、くださ……っ!」
「今、嫌っていうほど、出してやるよ……っ!」
 ラストスパートとばかりにキキョウの動きが強く激しくなり、激しく奥を突かれる快感が絶え間なく全身を走り抜けてキキョウを感じる以外の事は何もできなくなってしまう。やがて一際強く打ち込まれた楔が最奥に到達して膨らみ、爆ぜて腹の奥を熱で満たしていく。
「あっ、あ……ああぁっ…………!」
 身体の奥に感じる確かな熱に全身が震え他に替えのきかない充足感が胸を満たす。まだ繋がったままでキキョウが身体を倒し、労るような優しい口付けを幾度も落としてくる。
「はっ……あ…………キキョウ、さん……すきです…………すき……」
「オレもだよ」
 絶頂の余韻が引くまでキキョウは優しい口付けを繰り返し、頭を撫で髪を梳き、密やかな低い声で語りかけてくる。このひと時がもたらす穏やかで優しい幸福感がたまらなく好きだった。行為のもたらす激しい悦楽も好きだけれども、より満たされているのはこの穏やかな時間の方だった。
 ゆったりとした時間が流れて余韻も熱も引いた頃、キキョウがはぁと一つ溜息をついた。
「さっき流したばっかりだってのにまた汗でベトベトだぜ……仕方ねぇからまた流してくるか」
「あ、それなら俺も流したいです……」
「おめぇはオレが終わってからにしろ、それまで近付くんじゃねぇぞ。また欲情されたら同じ事の繰り返しになっちまうだろ」
 苦い顔でキキョウに言われ、無防備な姿を晒す方が悪いとも言えなくなり渋々頷くと、キキョウは着替えを取りに奥の部屋に入っていった。それにしても、一汗かいてそれを流してから食べるよく冷えたかき氷はさぞ美味しいだろう。かき氷を食べるのに夢中になるキキョウの顔を想像してリンドウの頬に楽しげな笑みが自然に浮かんだ。

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