赤面の代償
昼寝から目覚めたキキョウがぷらぷらとそこらを歩いていると、キッチンカーの裏手にリンドウの上着の裾が見えた。あんな所で何をやっているのだろう? 不審に思い近付いてみると、若い女の声がした。
「ですから、手紙を受け取っていただくだけでもいいんです」
「済みませんが……困ります、その、お気持ちには、お応えできないので……」
「他に想い人がいらっしゃるんですか?」
「それは……その……」
そっと忍び寄り覗き見ると、この街でよく見る常連の女性客が受け取って貰えず所在なさげな手紙を手にリンドウの前に佇んでいた。リンドウは後ろ姿しか見えないが、女性に想いを伝えられる緊張と照れからだろうか耳を赤く染めている。
溜息を一つつくと、キキョウは姿を隠すことをやめて二人の前に足を踏み出す。二人の視線がはっとキキョウに向くが、薄ら笑いを返してやる。
「お嬢ちゃん、そんな朴念仁にゃ何を言っても通じやしねぇぜ、そいつの頭ん中は和菓子の事しか詰まっちゃいねぇんだ。それよりそんな奴ぁ放っておいてオレと二人で遊んだ方がお互い楽しいと思うけどよ、どうだい」
「私、遊ぶなんて私、そんなつもりじゃありません! ……今日は、帰ります!」
キキョウの言葉に機嫌をむっと損ねた娘は肩を怒らせ不機嫌そうな強い歩調で歩き去っていった。堅物のリンドウにこっそり手紙で想いを伝えようとするような娘だ、軽い女と見られれば機嫌を損ねるだろうという狙い通りだった。
「あの……兄弟子……どうしてあんなひどい事を……」
まだ頬を染めたままのリンドウが呆然と尋ねてくるので、横目で流し見る。キキョウは今最高に機嫌が悪い、その様子は視線の鋭さで充分伝わったらしくリンドウは軽く怯えた目をして後退った。
「仕事中は手ぇ出さねぇって約束だからな、それだけは守ってやるよ」
「えっ……あの、それは、どういう……」
困惑しきったリンドウの質問には答えず、キキョウはその場をさっさと後にした。色々と用意する物がある、今日はもう仕事どころではない。必要な物と回る店を頭の中でリストアップしながら広場を抜け街へと歩き去っていった。
昼間は姿の見えなかったキキョウが夕食に現れた頃にはすっかりいつも通りの気怠げな顔に戻っていたので(どういう理由で怒っていたのかは分からないが)昼間の怒りは収まったのだろうとリンドウは内心安心しほっと息をついたのだが、その認識が誤っていたことはその後すぐに分かった。明日は休業日なので今日の後始末だけ終わらせてキッチンカーの居住スペースに戻ると、先に戻っていたキキョウがベッドに腰掛け腕を組んで待ち構えていた。入り口のドアを開けたリンドウを見やるその視線は鋭く冷たい。
「……あの、兄弟子……一体何をそんなに怒ってらっしゃるのでしょうか……? 俺に何か、失礼がありましたか……?」
ドアを半ば開け放したまま閉める動きすら咎められているような気がして動けず、こういう質問をキキョウは好まないと知ってはいるものの思い当たる事が全くないので仕方なくリンドウは尋ねた。返ってきたのは予想通りの聞えよがしな盛大な溜息だった。
「全くおめぇは何一つ分かっちゃいねぇな、呆れ返って言葉もねぇよ。そんなとこに突っ立ってねぇでとにかく入れ」
いかにも機嫌の悪そうな硬い声でそう言われ、恐縮しながらリンドウはドアを閉め、とりあえず上着を脱いでハンガーにかけ刀を外して置き、靴を脱いだ。今日は多分素直には眠らせてもらえないだろう、その確信めいた予感だけはびんびんと感じていた。
「こっち来い」
無機質な声で呼びつけられ、キキョウが手で指し示したので隣に腰掛ける。肩を竦め緊張に身体を硬くしてキキョウが次に何を言ってくるのかと身構えるが、キキョウはサイドテーブルに置いてあったコップを手に取り半分ほど入っていた水を口の中に一気に流し込んだ。腕を回され肩を抱えられたと思うと、水を飲み込まず口の中に含んだままのキキョウの顔が近付いてきて、肩を引き寄せられたのに意表を突かれその拍子に緩く開いた口が塞がれ、キキョウが開いた唇から口内に水が流れ込んでくる。
「え……んんっ……!」
思わず反射で飲み込んでしまったが、一体何を飲まされたのかが分からなかった。ただの水とはまさか思えない。
肩から手を離し口も離してキキョウは感情の読み取れない目線で無言のままリンドウを見つめてくる。気まずく思いながらその視線に晒されていると、やがて一際大きくどくりと心臓が脈打った。心拍が明らかに速くなり身体の奥底から得体の知れないもどかしさと熱が何もしていないというのに湧き上がってくる。
「あ……は、あぁっ…………あ、兄弟子、一体何を、飲ませたのですか……」
「そろそろ効いてきたみてぇだな」
楽しげに左の口の端をニィッと上げると、キキョウは中腰に立ち上がりリンドウの両肩を押し身体をベッドに倒した。触れたキキョウの掌の感覚と温度をいつもより遥かに鋭敏に感じ取ってしまい、それが強烈な快感を生み出し体の芯を痺れさせる。
「あぁっ! あ……ぁ」
「やっぱりおめぇにゃ効きすぎるみてぇだな。まぁ今日はお仕置きだからよ、そのまま気ぃ狂っちまいそうなくらい感じまくってもらうぜ」
「……だから、兄弟子は一体……何をそんなに怒ってらっしゃるんですか……」
「さあな、そんな事ぁ手前の胸に手でも当てて考えてみな。おめぇはオレのもんなんだって事を嫌ってほどたっぷり身体に教え込んでやるよ」
膝をベッドの端に乗せリンドウの上に乗り上げてきたキキョウが嗜虐的な笑みを浮かべそう告げる。キキョウの指が作務衣の結び目に触れ解かれた感触さえ鋭敏に肌に伝わってきて身体が震える。前を開けるキキョウの手が胸や腹の皮膚の上を滑り、その感触が耐え難いほどの快感を生み出す。
「ひぁっ! あっ、あ……やっ、さわら、ないで……っ、くださ……いやだっ、ああっ……!」
「いつもよりずっと感じてんだろ? 素直に気持ち良いって言えよ」
「はぁっ、あ……く、苦し……っ、から…………おねがい、ですから……さわらないで、くださ……うあぁっ!」
開けられた上着を脱がすためにキキョウが肩を撫で、その感触に思わず大きな声を上げてしまう。キキョウの手の感触と温度も布が肌を滑り擦れる感覚も大袈裟なほど敏感に感じ取りすぎてしまい、それだけで達してしまいそうなほどの大きな快感に変換される。上衣を脱がされそこらへ放り捨てられると躊躇なく下衣の留め紐にキキョウの手がかかり、服を脱がされているだけでもういつ破裂してもおかしくないほど張り詰め大きくなってしまっているものが布地を押し上げているのをキキョウの目に晒している事が意識されて羞恥が募る。それを分かっているのだろうキキョウもはっきりと下衣を押し上げ勃ち上がったものをしげしげと眺め、不意に盛り上がった部分を手で包み緩やかに上下に扱いた。
「ひぐっ! ふ、うあぁっ、あっ、ああっ、だめっ、だめです……っ! やめ、そこっ、やめて……っ! ああぁっ、はっ……くっ……う……」
三十秒も保っただろうか、あっという間にリンドウは登りつめさせられ下着の中に放っていた。二度三度と精を放つ度に腰を震わせ、荒い息は整わず強すぎる快感に滲んだ涙が目尻に溜まる。その様をキキョウは愉快そうに眺めていたが、やがて下衣と下着に手をかけると一息にずり下ろした。遠慮容赦のないその動きも、普段であればそれほど気にはならないものが鋭敏になりすぎた触覚には刺激が強すぎてリンドウは身を捩り悶えた。
「ひっ……ぐ、あ……っ、あ……も、ゆるし……許して、くださ……」
「何言ってんだよ、まだまだこれからじゃねぇか。とりあえずここ、綺麗にしといてやるよ」
いかにも愉快そうな声で言うとキキョウは上体を沈め、肉茎に纏わり付いたリンドウの白濁を舐め取り始めた。ぬめる舌の熱さが一番快感に弱い箇所を容赦なく刺激してきて狂おしいほどの感覚を生み、その間にもキキョウの手は胸板と脇腹に伸びて、既に硬くしこった乳首をやわやわと嬲られながら触るか触らないかの微妙な距離で指先が脇腹を撫でる。どれか一つだけでもおかしくなってしまいそうなほど快感が強いのに、三箇所同時に責め立てられてはそれこそ気が狂ってしまいそうだった。
「やぁっ、あっ、あぁっ、もっ、またっ……また出る、からっ……やめて、くださっ……あぁっ、ひぁっ、ふ、んっ、あ、あっ、も、もう……っ!」
「いいぜ出しても、好きなだけ出せよ」
機嫌のいい声で答えるとキキョウは脇腹を撫でていた手でリンドウの肉茎の根元を支え、竿まですっぽりと口の中に収めて頬を窄め舌を絡ませながら、普段なら強すぎないほどであろうが今のリンドウにとっては地獄の責め苦とも言えるようなあまりにも鮮烈な快感を与えてくる。
「あ、ああっ、やめっ、やめっ、ひっ、あ、ああぁっ、うぅっ……! んっ……く…………」
今度も一分と保たずキキョウの口の中に吐き出された精液を、こくりと喉を鳴らしてキキョウは飲み干していく。放った後の倦怠感や虚脱感はいつもより強く感じているのに、リンドウ自身は一向に萎える気配を見せなかった。短い間に二度も放ったというのに限界近くまで硬く太いままのの形を維持している。だがもうすっかり身体に力は入らず、ぐったりと横たわったリンドウはただいつの間にか頬を濡らしていた涙の跡がひやりとするのを感じながら一向に整わない息を浅く荒く吐き出していた。
「分かってるたぁ思うが、まだ終わりじゃねぇからな」
愉快げな表情が消え冷たくリンドウを見下ろしたキキョウは、袂から瓶を取り出した。蓋を開け中の液体を手に取るとリンドウの腹に押し当て塗りたくる。油のぬるりとぬめった感触が一向に引かない鋭敏な触覚を必要以上に刺激して、びくりと身体が震えて甘ったるい吐息が漏れる。
「これにもたっぷり入ってるからよ、よく効く媚薬がな。もっと気持ち良くなれるぜ?」
「ひっ……やっ、いやですっ……! やめっ、お願いですからもうっ、くうぅっ、んんっ……やめ、て、くださ……っ」
「オレが何で怒ってんのか分かるまではやめねぇよ。どうせおめぇに当てられるとも思えねぇけどな」
腹から胸、肩や首へと油が塗り広げられていき、塗られた箇所はじんわりと熱を持ち疼き始める。甘ったるい喘ぎ声の合間にやめてくださいと繰り返し譫言のように懇願し続けるが、キキョウはリンドウの顔を一瞥すらせず手を休めなかった。時折瓶から油を注ぎ足すと腕や脚、手足の指の間にまで塗り広げていく。元々内側から熱に浮かされていた身体がさらにもどかしい熱を帯び、黙っているだけでも絶えきれないほどに熱くなっていく。僅かに残った理性のかすがいは今にも切れてしまいそうで、全てを手放して悦楽の波に呑まれ漂いたい自分の存在すら感じてしまう。
「おら、下向け」
「ひっ、く、ああぁっ……あっ……」
うつ伏せに身体をひっくり返す為にキキョウが背中とベッドの間に腕を差し入れた何気ない動作すら身体を支配するもどかしさを加速させる。うつ伏せの体勢にされ夜気に晒された背中に油が滴り落ち塗り広げられる。すべらかに背中の上を手が滑っていく感覚が耐え難いほどの快感を与えてきて、三度目の吐精を迎えそうになるのをどうにか堪えやり過ごす。背中や脇、脇腹に満遍なく油を塗り込んだキキョウの手は注ぎ足した油を次は臀部に塗り広げる。
「ひ、は、はぁっ……や、あぁっ……そんなっ、ところ、まで……っ」
「全身余すとこなく塗ってやるよ。ここも、塗られたいんだろ?」
「ひっ……!」
油でぬめったキキョウの指がゆっくりと会陰をなぞりその先にある陰嚢を掌が包み込み柔く揉みしだく。ただでさえ感じやすい部分を薬で更に性感を高められているのに、その上更に身の内に籠もる淫熱ともどかしさを与えられ、リンドウの喉から高い声が漏れて背中が撓った。
「だっ、ああっ、だめっ、そこっ、やめっ……ひ、ふあぁっ、あぁっ、やめっ、くださ……あぁっ!」
「そうだよなぁ、もっと塗ってほしいとこがあんだよな」
陰嚢を包んでいた手が離れていったのも束の間、油のたっぷりついた指先が今度は後孔に宛てがわれ襞を一本一本なぞるように細かく油が塗り込まれていく。
「やだっ、やっ、あっ、いやだぁっ……! そんなとこっ、やめて、くださっ……あぁっ、あ、ああぁっ!」
油でぬめった指先は容易に後孔に呑み込まれ、出入り口の辺りでぐるぐると回すようにキキョウが指を動かして油を塗り込んでいく。ただでさえ高められた性感に物欲しげにひくついていた場所がじわりと熱に冒されていき、勝手に腰が揺れて甘ったるく高い声が絶え間なく喉から漏れ出す。今すぐ太く硬く熱いもので無理矢理押し広げられぐちゃぐちゃに掻き回され犯されたい、そんなはしたない欲求が止めどなく大きくなっていく。だがある程度油を塗り込むとキキョウの指先はあっさりと抜き取られた。
「あぁっ……あ…………んっ、ん……んぅっ……」
「こんなにひくつかせて物欲しそうな声出してよ、嫌だの何だの言ってる割にはちょっといじられりゃ欲しくてたまらなくなっちまうんだろ」
「うぅっ……ん、分かっているなら……焦らさ、ないで……ください……」
「馬鹿かおめぇは、今日はおめぇを満足させるためにしてんじゃねぇよ、お仕置きなんだぜ? そう簡単にくれてやるわけねぇだろ。おら、上向け」
媚薬入りのオイルをたっぷりと塗り込まれ熱く火照った肩口を身体をひっくり返すためにキキョウに掴まれると、たったそれだけで絶頂の瞬間のような強烈な快感が身体を走り抜けて堪らえようとする考えすら浮かばず反射的に高い声を上げてしまう。
「ひぁっ! あっ、ああぁっ……さわら、ないで……っ、くださ、あぁっ、あ、やっ、だめです、からぁっ……!」
「こんな所触られただけでイきそうになってんのか? どうしようもねぇドスケベな身体だな。おら、まだ塗ってねぇところがあんだよ」
そう告げてキキョウは指にとった油を外耳に塗りたくっていく。既に真っ赤に火照っていた耳はさらにじわじわと熱に侵食され、耳許に寄せられたキキョウの口から漏れる荒い息がかかると逃れたいのに逃れられない快感が肩と胸を震わせる。
「あと一箇所、塗ってねぇとこがあるな。どこだか言ってみな」
過敏になった内腿を撫でさすりながら熱い息に乗せてキキョウが問いかけてくる。絶頂が次々襲い来るような感覚に掻き乱された思考でも答えは分かっていたが答えたくなかった。そんな所にこの油を塗られてしまったら、本当に気が狂ってしまいそうだった。
「おら、ちゃんと答えねぇといつまで経っても終わらねぇぞ。オレぁおめぇの身体弄ってるだけで構わねぇんだぜ、そこらを弄られてるだけで何回イっちまうか試すってのも面白そうだしな」
言いながらキキョウの左手は内腿から胸板へ移り、油でぬめった指先がくるくると円を描いて動き乳輪と乳首を弄ぶ。緩やかなその刺激だけでも今までの愛撫で高まり熱くなった身体は制御が効かず、身体は逆らう間もなく頂上へと押し上げられ呆気なく絶頂に達してしまう。
「ひっ、あ……! ぐ……んんっ……」
「おーお、早速一回イっちまったな。ちょろっと弄っただけなのによ、堪え性がなさすぎんじゃねぇか?」
精を放つ度に、いつもの数倍の脳を痺れさせるような悦楽を感じていた。飛び散った生暖かい精液が腹や胸を汚す。身体に力も入らず憔悴しきってリンドウは目を細め荒い息を繰り返し吐き出した。身体の力の全てを精と共に吐き出してしまったような感覚があった。それでもリンドウ自身はまだ硬く太いままそそり立ち、過敏になった肌はシーツに擦れるだけで甘やかな刺激を与えてくる。やると言ったらキキョウはやるだろう、これ以上この必要以上に感じやすくなってしまった身体を弄ばれるのは苦痛以外の何物でもなかった。
「もう……無理です…………、塗って、ください……」
「だから、どこにだよ」
「俺の……その、俺の……性器に……」
「すぐ後ろ無茶苦茶に犯してもらいたがるはしたねぇ奴な割には随分お上品な言い方じゃねぇか、でもまぁいいぜ、ちゃんと言えたからな、お望み通り塗ってやるよ」
望んでなどいない、単なる消去法の結果なだけでこの結果も行き過ぎた快楽が苦痛をもたらすだろう。そもそもリンドウに選択権など与えられてはいないのだ。キキョウが一体何に怒っているのかも分からないまま仕置きを受けるという理不尽な状況だ、訳など分かるはずがない。
瓶からキキョウの手にとられた油はリンドウ自身に塗り拡げられ、油でぬめった箇所はすぐに淫熱を帯び始め黙っているだけでも再び吐精してしまいそうなほどの性感を与えてくる。肩と唇を震わせ甘く短い声混じりの吐息を吐きながらじわじわと全身を侵食するその淫熱と快感にどうにか抗い堪らえようとするが、そんな事はお構いなしにキキョウの手は無慈悲にもリンドウ自身の根元を緩く握りしめてゆるゆると上下に扱き出す。
「あ、あぁっ! だめでっ、やめ……ひぅっ! ふっ……うぅっ、んんっ、は、あっ、あ、あぁっ!」
先程射精したばかりの上に緩やかに扱かれているだけだというのに、まるで自分の体の一部ではなくなってしまったかのように熱く煮え滾った男茎は射精の瞬間が常に続いているかのような強すぎる快感を脳に伝えてきて、あっという間に限界は間近になる。
「も、あっ、だめっ、だめです、からっ……! やめて、くださ……はっ、あぁっ、またっ、また……でるからっ、もっ、あっ、だめ……っ!」
「もう出なくなるまでとことん搾り取ってやるから、好きなだけ出せよ。出してぇんだろ? おら、さっさとイっちまえ」
耳にかかる熱い息と鼓膜を震わす密やかな低い声が緩みきっていた理性の箍を外してしまう。解放の瞬間感じるであろう圧倒的な恍惚の事しか考えられなくなり、無意識の内にキキョウの背中に回した腕に力がこもり快楽を追い求めてひたすら腰が揺れ、抑える事も忘れ去った嬌声が止めどなく喉から漏れる。
「あぁっ、はっ、は、あっ、またっ、また出る……っ! イクっ、あっ、あぁっ、イクっ、イク……――っ!」
腰の辺りが強張り、二度三度と吐精が繰り返される。だというのに媚薬に冒され支配された身体は勢いを衰えさせず、キキョウの手の中にある男茎もまだしっかりと勃ち上がったままだった。
「まだまだいけそうじゃねぇか、今度はまた舐めてやろうか?」
「あ、もっ、もうっ……やめて、くださいっ……くるし……から……っ」
「苦しくねぇとお仕置きになんねぇだろ。どうしてオレが怒ってんのか、そろそろ少しは見当付いたか?」
問われたもののキキョウが何故こんなに怒っているのかなどリンドウには到底見当が付いていなかった。切っ掛けが何だったのかは明らかだ、昼間常連の女性と二人きりになり手紙を差し出されて想いを伝えられた現場を見られたのが恐らく原因だろう。だがリンドウは申し出をはっきり断ったし手紙も受け取らなかった。それならキキョウは何を怒っているのだろう。
「……その、俺が……女性と、二人きりになって、いたから、でしょうか……?」
「あ? いくらオレでもそこまで心狭かねぇぞ、舐めてんのかおめぇ。大体それならあのへっぽこアドバイザーがおめぇだろうが誰彼構わず距離が近すぎんの黙って見てるかよ」
明らかにキキョウは機嫌を損ね、不快げに眉根が寄る。言われてみれば嫉妬深いキキョウの事だ、確かにランチのリンドウ(だけではなく他の男性にもだが)への距離の近さが放っておかれているのは不思議なほどだ。だがそれならば、何をこんなにもキキョウは怒っているのだろう。
「答えられたら勘弁しといてやろうかとも思ったけどよ、徹底的に躾けてやんねぇとなんねぇみてぇだな」
冷たく言い放つとキキョウは横に置いていた油の瓶を再び手に取り、逆さに傾けて中身を全て掌に出すとそれを己の肉茎に塗り込んでいった。
「これ入ったら、おめぇん中、一体どうなっちまうだろうなぁ?」
薄っすらと微笑を湛えて愉快げに問うキキョウの言葉に、リンドウの顔から血の気が引く。度を越えた快感は苦痛と同義だ。このキキョウの言葉は地獄の責め苦を今からリンドウに味わわせるという事を宣告している。
「やっ、やめてください! そんな事をされたら、気が変になってしまいます!」
「いいじゃねぇか、構わねぇぜ。ぶっ壊れるまで犯し倒してやるよ」
「あぁっ、あっ!」
脚を割り開き腿を抱え持つキキョウの掌の熱さに過敏になった触覚が大きく反応してしまい、半ば悲鳴めいた声を上げてしまう。大して慣らしてもいないのに無理くり先端がめり込んできたが、身体がそう仕込まれてしまっている通りにいきむ要領で出入り口を広げる一連の筋肉の動きが無意識の内に行われリンドウの内側はキキョウの肉茎を自然に迎え入れていた。
「やっ、あっ、ああぁっ……!」
「さっきちょろっと弄っただけだってのにもうここまで一気に入っちまったぞ、ほんとやらしい穴だよ、なっ!」
「ひああぁっ! あっ、ああぁっ! やっ、あ……っ!」
背中に両腕が回されて肩を抱えられ、その手を支点に半ばまで入ったものをキキョウが一気に奥まで押し込む。もちろん痛みがないわけではなかったが、それ以上に気が狂ってしまいそうなほどの快感が身体中を駆け抜け吹き荒れた。
「ドスケベなおめぇの事だから早く突きまくってほしいんだろうけどよ、薬が馴染むまでちょっと待っとけよ、耐えきれねぇほど気持ち良くしてやるからよ」
「やっ、いやだっ……やめ、やめてください……っ! いやだっ、あぁっ……」
力の入らない身体を必死に捩るが何の抵抗にもなりはしない、その間にも内壁に吸収された薬は内側にもどかしさを伴う熱を生じさせ意識を甘く蕩かしていく。敏感になった内壁が感じ取る肉茎の太さや硬さがいつも以上に意識されてしまって、たまらない気持ちにさせられて腰から腿にかけてが緊張し力がかかり震える。
「ふぅん、そろそろ効いてきたか? 早く欲しくてたまらねぇってそのエロい顔鏡で見せてやりてぇな」
「やっ、ちがっ、やめ……やめて、くださいっ……! こんな、こんなの、動かれたらっ……おかしく、なっちゃいます……っ」
「そんな欲しくてたまらねぇって顔で言っても何の説得力もねぇぜ。それに何度も言ってるけどよ、これはお仕置きなんだぜ、気持ち良すぎておかしくなっちまうくらいじゃねぇとお仕置きになんねぇだろうが」
「や、いやです……っ、ゆるして、ゆるしてくださ……っ! もうっ、もう、しませんから……っ!」
「何をだよ? 分かってねぇのに適当な事言ってんじゃねぇよ」
冷たい声色で言い放つと、キキョウは抜けるか抜けないかのぎりぎりの辺りまでゆっくりと腰を引き、直後に力任せに根元まで一気に肉茎を突き入れた。ゆっくりと内壁を擦られる感覚も一気に奥底を強く突かれる感覚もどちらもが頭の芯を痺れさせ指先に至るまで全身を支配してしまうような強い快楽をもたらす。
「ひぁっ! がっ……ぐ……ふ、ん…………ああっ、あ……」
「好きなんだろ? ガツガツ奥を突かれんのがよ」
「あっ、あぁっ、はっ、ふぁっ、あぅっ、んっ、んっ、あっ、ああぁっ、や、やっ、だめ、だめっ、なかっ、なか、おかしっ、からぁ……っ!」
容赦のない力強い律動が始まり、中を擦られ抉られ奥底を突かれる全ての感覚が絶頂のそれのように視界の奥を白くちらつかせ、悦楽の頂きに留め置かれ恍惚に浸り続けるあまりに己が何者であるかさえも曖昧になっていき、リンドウは快感を貪るだけのリンドウという名前の付いたただの肉の塊になっていってしまう。苦しい、息ができない、それすらも気の遠くなるような歓喜を強めるだけで気持ちいいと苦しいの区別すら最早付けられない。
「中、イキっぱなしですげぇな……前もダラダラ垂れ流してんぞ、そんなにいいのかよ」
潤み霞む目を向けると、リンドウ自身の先端からはとろとろと白濁が流れ落ち下腹を汚して脇腹を伝いシーツにまで垂れ落ちていた。羞恥は湧くがそれが何に対しての羞恥なのかももう薄らぼんやりとしてはっきりとしない。感じる恥ずかしさが身体の熱を煽るだけの結果になってしまう。
「はっ、やっ、あぁっ、くるしっ……もっ、くるし、からぁっ……! ひっ、あ、あぁっ、ふっ、う、んんっ、はっ、あぁっ、あっ、もっ、ゆるし……ゆるしてっ、くださ……あぁっ!」
「こんなもんで勘弁してやるはずねぇだろ、もっと悦くしてやるよ」
「あぁっ、や、らっ、らめぇっ……! あうっ、ふ、うあ……っ、おくっ、おくっ、そんなに、ついたらぁっ……! らめっ、やっ、あぁっ、も……むりっ、むり、れすからぁ……っ! ひっ、は……、は、あっ、も、ゆるし……ゆるし、てぇっ……!」
「これに懲りたら女に言い寄られて鼻の下伸ばすなんて真似もうすんじゃねぇぞ」
「ひゃっ、あぁっ、ちが、ちがっ……! ちゃんと、ことわった……のにぃっ、あっ、あぁっ、ああぁっ!」
「耳まで真っ赤にしてデレデレしやがって、悪ぃ気はしてなかったんだろ? そんな気も起きなくなるほどオレじゃねぇと満足できねぇようにしっかり躾け直してやるよ」
「ちがっ、ちがいま……っ! もっ、もうっ、あにでしとじゃ、ないと……っ、まんぞく、できな、あっ……からぁっ! もうっ、ゆるして、ゆるして、くらさ……ひあっ、あ、あぁっ!」
身体の中が灼けるように熱い。中でも激しく擦られ抉られる内壁はドロドロに溶けてしまいそうなほど熱く爛れ、一突き毎に絶頂の波が津波のように押し寄せてきてそれが途絶えることがない。両の乳首を指先で捏ねくり弄ばれながら幾度となく力任せに最奥を突かれ、既にもう自分が感じているものが苦しみなのか痛みなのか快感なのか何なのかなど分からないしそれどころか自分と世界の境界線さえ曖昧で、己の形が保てないような心地になる。呂律の回らない舌を必死に動かして許しを乞うが、キキョウがそれを聞き入れる気配はなかった。
「そろそろ……っ、出すぞっ……! アレ塗っちまったからオレも今日はちょっとやそっとじゃ収まらねぇから、おめぇの腹ん中オレの精で一杯にしねぇと終わんねぇぞ……何回イけるか新記録挑戦してみるか?」
「ひゃっ、は、ふ、も、もう、むり……っ、ひぁっ、あっ、あぁっ、むり、ですからぁっ! ゆるし……っ、いっ、ぐ……は、あぁっ!」
「どうせ中に欲しいんだろ? 今、たっぷり、くれてやるよ……っ!」
乳首を責め倒していた指先が離れていき、腰骨をキキョウの両手ががしりと掴む。抽送の動きは中に射精するという意図をはっきりと表して一層強く速くなり、押し寄せる快感の波に呑み込まれ沈みただ溺れていく。
「はぁっ、あっ、あっ、ひゃっ、ふぁっ、ふ、は、はげしっ、そんなっ、つよく、したらぁ……っ! へんにっ、へんに、なっちゃ、からぁっ、あっ、はぁっ、は、ふ、んんっ……ひっ、うぁっ、ああぁっ……!」
「んっ、ふ……おら、出すぞっ……ちゃんと全部、受け止めろよ……っ!」
どんどん太さを増していた肉茎が最奥に突き入れられ動きを止めると狭い虚の中で膨らみ跳ね爆ぜた。どくどくと中に注ぎ込まれるものの熱さに腰が震え、恍惚が全身を包み吐息を甘くする。
だが勿論それで終わりではなかった。抜かないままで犯され続け、リンドウ自身は何度目かなどもう数えるだけの思考力も残っていなかったが、キキョウにとっては五度目の射精の直前、リンドウの身体からふっと力が抜けた。後ろも緩み、僅かに開いた隙間からたっぷりと中に吐き出された白濁がシーツに漏れ出す。ぐったりと横たわったリンドウの瞼は閉じ息は穏やかさを取り戻しつつあった。どうやらやりすぎて気絶させてしまったらしかった。
チッと一つ舌打ちするとキキョウはリンドウの後孔から肉茎を抜き、リンドウの肩の辺りに膝を立て自身を扱き、粘度の低くなってきた白濁を頬目掛けて吐き出した。頬や口、眼鏡が白濁に塗れ汚れるのを見て溜息を一つつくと、まだ満足してはいない表情ながらも仕方ないといった風情でキキョウはリンドウの横に身体を横たえ布団を被った。
次の朝、乾いてしまって顔と眼鏡にこびりついた精液にリンドウが気付いて如何にして誰にも気付かれずに洗い流すかで頭を悩ませるまでが仕置きの内容だった。これに懲りてもう男だろうが女だろうが他の奴に向かって頬を染めるような事などあるまいと、慌てふためくリンドウをキキョウは薄く開けた横目で楽しげに眺めながら狸寝入りを決め込んだ。
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