筑前煮の下拵えの一風変わった方法

 明日の仕込みを片付け一日の仕事を終えたリンドウがキッチンカーの居住スペースに戻ると、床に妙な物が置かれていた。ごく普通の盥に湯が張ってあり、その中に黒い粒混じりの灰色のころんとした塊が沈められている。手ほどの大きさもありそうな大きなこんにゃくだった。
「……こんにゃく…………? ですか? あの兄弟子、どうしてここにこんにゃくが……」
 ベッドの上で寝転がり脚を組んで寛いでいたキキョウにそう訊ねると、キキョウはリンドウをちらと見やっていかにも意味ありげな笑みを微かに見せた。
「すぐ分かる。いいから早く服脱げ」
「あの……今日も、その…………するのでしょうか」
「なんか文句あんのか?」
「……いえ」
 言いたい事は大いにあるがそれをぐっと呑み込んで、言われた通りにリンドウは服を脱ぎ始めた。灯りのもとで他人の眼前に裸身を晒すのは何度繰り返しても慣れずに激しい羞恥と抵抗を覚えるが、その様子を眺める事すらキキョウの楽しみの内のようで、行為の際にリンドウが自分で服を脱ぐことを要求される事は多かった。
 服を脱ぎ去り眼鏡を外してチェストの上に置いたものの恥ずかしさのあまりに動けずにいたが、キキョウからこっち来いと声がかかり振り向かざるをえなくなる。足元の盥に気を付けながら数歩の距離をベッドまで歩き、身体を起こしたキキョウに手を引かれ促されてベッドの上に横たわる。視界はぼんやりとして周囲の状況はよく掴めず、キキョウがいつ何をしてくるのかも分からない。緊張に身を縮こまらせていると、肩近くの鎖骨の下を痕が残るほど強く吸われる。
「くっ、あ……あぁ……っ」
 鋭い痛みと共に走るのは甘い疼きで、肩口から腕を撫で回す掌の温度にぞくぞくと肌が粟立つのは嫌悪からではなく期待からだ。己の全てを呑み込んでしまうような激甚たる快楽の波の記憶が身体の奥底を勝手に火照らせて震わせる。望んでいたのはこんな関係ではないのに、そう思うのにどうしても抗う事ができない。想いの伴わぬ行為を拒んでいる筈の心が快楽に押し流される身体に引き摺られて夜毎繰り返される過ちを受け入れそうになる。キキョウは遊びと割り切っているのだろうがそんな風にはとてもリンドウには考えられない。この鬱屈とした葛藤の持って行き場はどこにもなく、ただ胸の内に蟠り渦巻き続ける。答えのない問いを解こうとして堂々巡りを繰り返す心を置き去りにして身体だけが高められていく。
 首筋に舌が這い時折歯を立てられたり強く吸われ、予測できない不規則な刺激に翻弄され息が荒くなる。腹の辺りをなぞっていた指先は脇腹に移り触れるか触れないかの微妙な距離で肌をなぞられるとくすぐったさとは明らかに違う感覚がぞくりと湧き上がり背筋を震わせる。逐一快感を素直に感じ取ってしまう身体に己のものながら恨めしさが募るが、どうすることもできずに少しでも熱を逃したくてシーツを手でひっ掴む。
「は、あ、あっ、あ、あにでし……っ、やっ、やめて、くださ……あぁっ、あっ、あぁ、あ、はぁっ……」
「本当口ばっかりだよなおめぇはよ。やめてほしいなんざちっとも思ってねぇ癖にな」
「あっ、や、ほんとに……、いやっ、あぁっ……あっ、う、んっ……んん……っ」
 肌にかかる熱い吐息、ぬめる舌先、たおやかな指先、温度の高い掌、夜気に晒された素肌に感じるキキョウの感触全てが興奮を煽って性感が高まっていき、より鋭敏に快感を感じるようになっていく。心は望まぬままそんな悪循環に嵌まり込んでいき抜け出せなくなる。肩口を指先が滑りびくりと肩を震わせると触られてもいないのに勃ち上がった乳首を口に含まれ強く吸われて舌先と歯で嬲られる。もう片方のキキョウの手はリンドウの手の指の股をなぞり弄び、弱くはないのに決定的と言えるほど強くもないもどかしい快楽をじわじわと身体に与えてくる。
「そろそろいい頃合いになってきたか?」
「え…………は、あぁっ!」
 リンドウの手を離れたキキョウの手は下腹に伸び、もうすっかり硬く勃ち上がったものを掌が包み込む。望まぬままにいとも簡単にこんなにも高められてしまっている事が恥ずかしくてならずリンドウは目線を横に逸らしたが、それには構わずキキョウは陰茎からすぐに手を離すと起き上がりベッドを降りた。さすがに何をするのかと不思議になりキキョウを見やると、キキョウは盥の中からこんにゃくを取り出して用意していたらしき手拭いで水気を拭っていた。
 何故今こんにゃくなのだろう、一体何をするつもりなのだろう。解決されそうにない疑問ばかりが頭の中をぐるぐる巡るが困惑した様子のリンドウなど気にもかけずキキョウは手拭いをチェストに置きこんにゃくを手にベッドへと戻ってきた。こんにゃくの大きさは掴んだキキョウの手からいくらかはみ出すほどの長さで、ずんぐりとした円柱形の形をしているようだった。
「あの……兄弟子…………それは」
「こんにゃくじゃねぇか、それがどうした?」
「それは分かりますが……まさか今食べるわけではないですよね?」
「そんな訳ねぇだろ。まあそうビクビクしなさんな、すぐに天国に連れてってやるからよ」
 楽しげな声で告げながら仰向けに寝転んだリンドウの上に乗り上げてきたキキョウは、手にしたこんにゃくの塊をリンドウの陰茎の先に宛てがい、そのまま下へと下ろしていった。こんにゃくの中は中空になっており、内側には襞のような凸凹がびっしりと刻まれていた。人肌より少し熱いくらいに温まったぷるりと弾力のあるこんにゃくの感触と温度が陰茎を包み込み、雁首や竿に引っ掛かり擦れる度に甘やかな快感が腰から背筋を駆け上がっていく。
「やっ、あぁっ……あっ、あ、あぁっ……あに、でし……っ、ああぁっ……」
「特注で作らせてみたんだけどよ、流石に本物の

ほと

に比べりゃ負けちまうけど結構いい具合だろ? 折角いいモン持ってんのにどうせ商売女辺りとじゃあ寝んの嫌がんだろおめぇ、だから気分だけでも味あわせてやろうって兄弟子の心遣いだぜ、ありがたく受け取れよ」
 言いながらキキョウはゆるりと手を動かしこんにゃくを上下させる。温かくぷるりとしたこんにゃくが吸い付いてきて、陰茎の凹凸と襞が絡まり擦れる度にたまらない程の快感が脳を灼いて、更なる快楽を求めて勝手に腰が前後に揺れて甘ったれた声が止めどもなく喉から漏れ出す。手とも口ともまるで違う未知の感触に包まれた男茎はそれでもここに出し入れを繰り返せば尽きせぬ快楽が得られるのだと本能で知っているように震え跳ね、リンドウの理性と思考力はどんどんその本能に奪われていく。
「あっ、ああっ、だめ、だめですっ……こんなのっ、や、あ、あぁっ、こんな、あっ、た、食べ物で……っ!」
「心配しなくても粗末にゃしねぇよ。だから安心して猿みてぇに腰振ってろ」
「く、う、あぁ……あ、あぁっ、止まら、ない……っ! は、あ、あぁ、あぁっ、あああぁ……」
 理性が崩れかけ本能のままに快楽を貪るリンドウを満足気に見下ろしたキキョウは手を止め、リンドウの右手を掴んでこんにゃくに添えさせた。
「手前でやんな、できんだろ?」
「あ……」
 ぬめるこんにゃくの感触を右の掌に感じ、その感触に失いかけていた羞恥心が湧き上がり理性が幾分か戻ってくるが、その羞恥心と理性もひたすらに快楽を求める本能の前には風に飛ばされる紙くずのように消し飛んでしまう。勝手に手に力がこもってこんにゃくを握りしめ、上下に動かし男茎を扱き始めてしまう。食べ物でこんな事をしてはいけない、こんなはしたない姿を見られたくはない、己を制止するそんな言葉は次々浮かぶのに、身体はまるで言うことを聞かずにがむしゃらに快楽を貪る。しとどに滴る先走りの汁がこんにゃくの内側を汚してぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てる。眼鏡がないから確と知ることはできないが此方を見下ろすキキョウは侮蔑と嘲笑の入り混じった顔でこのみっともないリンドウの姿を眺めているのだろう、そう想像しただけでも居たたまれぬのに何故だか胸は高鳴り興奮はいや増してどんどんと行為へと身体は没頭していく。
「は、だめ、だめですっ……こんなの、うっ、ううっ、うあ、はっ、はっ、はっ、ああ、こんな……いや、いやだ、みないで、くださ……は、ああぁっ……」
「駄目だの嫌だの抜かす割には手は止まんねぇなぁ? ククッ、ほんとに覚えたての猿みてぇだな」
「ちが、ちがっ、やっ、ああぁっ、う、ふ、ん、んんっ、ふっ、ふっ、くぅっ……ああぅ……ん、あ、あぁ……っ」
 嫌だ、違う、どんな否定の言葉も無我夢中に悦楽を貪っている実際の身体の動きの前では欠片ほどの説得力も持たなかった。どれだけやめたいと願っても手が止まらない。もっともっと高みまでと貪欲に快楽を追い求める身体に心が引き摺られてしまっている。
 その状況に追い打ちをかけるように、そろりと忍び入ってきたキキョウの指先が臀部を割り後孔の襞をそっと撫でる。襞の数を確かめるようなキキョウの指先の動きに思わず手の動きを止めて身体をびくつかせてしまう。
「手ぇ休めるんじゃねぇよ」
「そこっ……いやです、やめて、ください……っ」
「こんだけ物欲しそうにひくつかせといて嫌とか言われてもなぁ? どうせこっちも思いっ切り犯されねぇと満足できねぇだろ?」
「そんなこと、な……いや、だっ、あぁっ、あっ! はぁっ、あっ、あっ、あぁ……ぬいて……っ、くださ……ああぁっ!」
 夜毎受け容れ拡げられている出入り口は指の一本など容易く呑み込んでしまう。容易に入り込んできたキキョウの指先はきつく締め付ける筋肉を解すように蠢き回り、その感触にもっと太く硬く熱いもので内側を掻き回される息苦しさや圧迫感と裏腹の圧倒的な快感が想起されて身体はその快楽を欲してしまう。指をより奥へ引き込むように括約筋がうねり動いてしまうのをなけなしの理性は最早止められない。
「おら、手ぇ止まってんぞ、ちゃんと動かせ」
「そんな……そこ、そんなに、されたら……あ、あぁっ……むり……う、んんっ、は、あぁっ……」
「手伝ってやらねぇとそんな事も満足にできねぇのか? 世話のかかる弟弟子サマだな」
 からかうような声色でキキョウはそう告げて、動きを止めたままだったリンドウの右手に左手を添えて上下に動かす。前と後ろ二箇所からこんこんと湧き出るように際限もなく生み出される快感が全身を走り抜け支配していく。鼓動が強く早くなり息が詰まって目が霞み、全身に不自然な力がかかって強張る。甘ったるい喘ぎ声は留めようもなく漏れ出し、キキョウの指先に思いのままに操られて高められていく。強すぎる快楽に伸し掛かられ押し潰されてしまいそうな感覚があった。手とも口とも違う複雑な襞の折り重なる弾力のある円筒を犯す感覚、食べ物を使う事に対する罪悪感と背徳感、意に染まぬまま高められていく事への拒否感と嫌悪感、流され快楽に溺れている自身に対して感じる不甲斐なさ、感じている事柄の全てがマイナスの感情であろうと興奮を高める方向へ作用し、悦楽の檻へとリンドウを戒めていく。
 嫌だ、違う、こんな浅ましい姿を晒したくない、そんな言葉が泡沫のように浮かび消えていく。意識の上に留めておけずに滑り落ちていってしまう。
「あぁっ! やっ、やめ……だめで、そこ……っ! そこ、あっ、そんなに、されたらぁっ……!」
 根元まで挿し込まれたキキョウの中指が一番感じやすい部分を捉え容赦なく責め立ててくる。瞼の裏がちかちかするような強烈な射精欲に急激に晒され、力がこもり強張った腰が上下して添えられたキキョウの手が既に離れてもこんにゃくを動かし続ける手の動きと合わさって限界がどんどん近付いていく。
「好きだろ? ここ。ここだけでイけちまうもんなぁ」
「や、だめですっ……、そこ、そこっ、もうっ、やめっ……あ、ああっ、イク、イクっ、出る……っ!」
「いいじゃねぇか、出せよ。イきたくてたまらねぇんだろ?」
「やだ、いやだっ……、あ、あ、あぁっ、もうっ……あっ、あ、出る、出る……っ!」
 今まで必死に押し留めていたものが筒状になったこんにゃくの先から勢いよく飛沫を上げ、白濁が胸や腹にぱたぱたと落ちどろりと垂れ落ちて肌を汚す。一本の竹のようにぴんと撓った身体は精液を思う様ぶち撒け終えるとようやく弛緩して、することを忘れていた息を補うように呼吸が荒く速くなる。何もかもが真っ白に塗り替えられた絶頂の後に待っていたのは、あろうことか食べ物を使い後ろを慰められてみっともなくも達してしまったという事実へのどうしようもない惨めさだった。だがそんな感傷にはお構いなしとばかりに、後孔へと挿し入れられる指が三本に増やされ、ゆるりとした速度で出し入れが繰り返されて蠢く指の節が敏感な孔穴を抉り擦り、絶頂に達したばかりだというのに身体は素直に反応を示して胸に甘い痛みのような疼きが蟠って肩が震える。
「や、やだ、いやですっ、あぁっ、あ、も、ああっ……動かさ、ないで……っ、くださ……あぁ、あ、あ、ああぁっ」
「サボってねぇで手ぇ動かせ。また手伝ってやんねぇとできねぇのか?」
「もう……うっ、ん……これ以上は……っ、いや、あ、あ、あぁっ、いやだっ……やめて、くださ……っ」
 口から紡がれた言葉とは裏腹に、後孔は指に犯される悦楽に酔い、惰性でこんにゃくに置かれたままだった右手もキキョウの左手が添えられて動かされる事ですぐに先程までの圧倒的な快感を思い出し勝手に動き出す。嫌なのにどうして逆らえないのだろう。こんな事をリンドウは望んでなどいないのに、身体はいとも簡単に流されてしまう。そんな自分が情けなくて悔しくてたまらないのに、どうしてもこの快感の奔流に抗うことができない。
「さて、こんなもんだろ。手は休めんじゃねぇぞ」
「あぁっ……あ……」
 内側を嬲り尽くしたキキョウの指が引き抜かれ、排泄時にも似た一種の恍惚と快感が身体を走り甘い声が漏れ出す。思わず手が止まるが、溜息を一つついたキキョウが再び手を添え上下に動かせる。これから何が起こるのかが想像できないほどもう初心ではないが、ぬめり吸い付き適度な弾力で擦れるこのこんにゃくでの自慰を行いながら犯されたなら、一体己はどうなってしまうのだろう。想像もつかないししたくもなかった。どこか知らない所へと連れて行かれてしまう、そんな正体の分からない漠然とした恐怖があるだけだ。
 着物を脱ぐのを面倒臭がったのかキキョウは下帯だけを解き放り捨て、リンドウの両腿を引っ掴み腰を引き寄せ自身の雄を宛てがう。陰部に灼けるような熱と硬い質量を感じ思わず手が止まるが休むなと短く言われ、たまらない気持ちになりながらゆるゆると手の動きを再開させる。早く犯されたがる淫蕩な身体とこんな関係は許されないと断じる固陋な心は完全に乖離して、ばらばらに引き裂かれた痛みを胸に感じながらキキョウの熱を受け容れる瞬間を待ち兼ねて甘ったるい吐息が漏れる。やがてキキョウが手で角度を調節した先端が窄まりに無遠慮に侵入を始める。
「うあぁっ……あっ、あ、あぁっ、は、あ、あぁ、ああぁっ……!」
「手ぇ止まってんぞ、やっぱおめぇは挿れるより挿れられる方が好きみてぇだな」
「ちがっ、ちがいま……ああっ! や、いや、だぁっ、あっ、あ、あぁっ……!」
 無遠慮に突き進んできて体内を埋め尽くしていく熱い質量の輪郭を内側の粘膜はしっかりと感じ取ってしまっている。満たされる事に悦びを感じるようになってしまった身体は圧迫感と異物感を上回る甘やかな快感を間断なく受け取り続けてしまう。身体の奥底を蹂躙してくる熱と硬さを感じる事に全神経が集中していまい、止めないように言われていた手などとっくに止まってしまっていた。息が浅くなり顎が上がり、全身でこの招かれざる侵入者を受け止める。
「手ぇ止めんなっつってんだろ、ちゃんと動かせ」
「そん、な……むり、です……う、んっ、は、ああっ、あ……あっ、あっ、ああぁ……」
「ちゃんと扱くまでオレも動かねぇからな、このまんまでいいってんならそれでもいいぜ」
「ああっ、いや、ですっ……このまま、なんて……っ! ううっ、んぁ、あっ……おねがい、ですから……っ!」
 こんな関係は間違っていると訴えかけてくる心も、貫かれた悦びに打ち震え身体の内側を思う様抉り掻き回してほしいと欲求する身体に簡単に流される。抗おうとする心を押しのけて右手が動き始め、再びこんにゃくのぬめった弾力のある感触が男茎を包み込み刺激して得も言われぬ強い快感を与えてくる。
「よし、いい子だ。じゃあお望み通りたっぷり犯してやるよ」
 満足気にキキョウは呟くとゆっくりと腰を引き、半ばまで引き抜いたものを急激に突き挿れてきた。そのまま激しい律動が始まり、荒々しく内壁を掻き回される感覚に息が詰まり突かれる度毎に背筋を通り抜けて頭の天辺まで肌の粟立つようなぞくぞくとした強烈な快感が突き抜けていく。今すぐにでも射精しそうなほど猛りきった己の男茎を本来こんな事に使うべきではない食べ物で慰めながら激しく後ろを犯されるという辱めが、こんなにも気持ちよくてたまらない。前と後ろから与えられる快感はとうの昔に許容量を大幅に超えていて、快感の強さのあまりに今にも飛びそうな意識では理性のブレーキなどかかりようもなく本能と欲求のままに前を扱く手の動きも速まっていく。
「はっ、あ、あっ、いっ、あっ、あぁっ、だめっ、もう、だめです……っ、こんなのっ、はぁっ、あっ、ああぁっ!」
「何が駄目なんだよ、随分楽しんでるみてぇじゃねぇか。なぁ?」
「ひっ! はっ、や、ああぁっ、あっ、だめっ、もうっ、だめです、から……っ! あぁっ、うごかさ、ないでっ……!」
「へぇ? じゃあ動かすのちょっくらやめてみるか?」
 嘲るような笑みを含んだ声でキキョウがそう告げ、ぴたりと動きを止める。根元まで打ち込まれた剛直の熱さ硬さや凹凸を内壁がつぶさに感じ取り、内側を押し広げられ埋め尽くされ一つに繋がっているという実感が胸を熱くさせる。もっと犯されたい、滅茶苦茶に抉られ掻き回されたい、身体がそう望むのを押し止められない。
「あぁっ……あ、あにでしっ…………」
「何だよ」
「……その…………して、ください……」
「何をだよ」
 余裕綽々で楽しんでいるのがありありと分かる声色でキキョウに訊ねられ、返す言葉にリンドウは詰まるがしばらくの逡巡の後ようやく再び口を開いた。
「俺を……俺を、もっと……犯して…………ください……」
 尻すぼみに小さくなっていくその懇願を聞いたキキョウはくっくと喉で笑みを噛み殺し、身体を倒してリンドウの耳をねとりと舐め回した。
「いいぜ、ケツん穴ほじられんのが大好きなドスケベ野郎。ちゃんと手も動かせよ」
 熱い息遣いと共に低い声が耳に直接流れ込んできて肩が震え甘えた吐息が漏れる。キキョウの身体はすぐに離れ、腰を掴まれ態勢を整えられる。早く奥深くを突き抉り犯して何も考えられなくなるほどの快楽を浴びせて溺れさせてほしい、最早思考の回らぬ意識に上るのはそんな欲求ばかりだった。キキョウの動きはすぐに再開され、力強い抽送が繰り返されリンドウの身体の奥深くまでキキョウが侵入し暴いて丸裸にしていく。嘘などつけない、何も偽れない。目も眩むほどの悦楽の前にひたすらそれを希求する肉欲の塊でしかなくなってしまう。自らを慰める右手の動きももう止められず、こんな事は間違っている、それなのにどうして、そんな疑問も己に感じる不甲斐なさも快楽の津波の大波の前に呑まれ溶け消えてしまう。
「はぁっ、ああっ、あっ、あっ、だめっ、あにでしっ、やぁっ、あっ、だめですっ……もう、もうっ……!」
「どうしたよ、もうイっちまいそうなのか? 前と後ろどっちがイきそうなんだよ」
「ああぁっ、あぁっ、ど、どっち、どっちもっ! どっちも、もう……っ、イきそ……だからっ、あぁっ、ああぁっ!」
「掘られながらこんにゃくでシコってイくなんざ本もんの変態だよなぁ、どうせだからどっちもイけよ」
 違う、違う。そんな単語も快楽の海に泡沫と溶け消えて、深く奥を突かれる度毎に頭の芯まで痺れるような強烈な快感が身体を駆け抜ける。扱く右手の動きも強さと激しさを増して、限界はすぐそこまでもう見えていた。何もかも訳が分からなくなり重さを失ってふわりと宙に浮いたような心地がする。それなのに突き挿れられる剛直の与えてくる衝撃は受け止めて余るほど強烈で、甘ったるい喘ぎ声と共に吐き出される息はどんどん荒く浅くなる。
「あっ、あぁっ、も、イク……っ、イク、イっちゃ……あ、あ、ああぁっ! もうっ、もうっ、イクっ……――!」
 限界を突き抜け張り詰めていたものが破裂し、がくがくと大きく身体が震えた次の瞬間には前も絶頂を迎え飛び散った精液が再び胸や腹に飛び散りどろりと垂れ落ちていく。
「くっ……う…………キツいな……っ!」
 一際強い締め付けにたまらずキキョウも限界がきたのか苦しげに呻いて吐精し、リンドウの内側に熱を放っていく。
「あぁ……っ、あ…………あ」
 前後でたて続けに絶頂したリンドウの意識は最早朦朧として、元々はっきりしない視界はもうまともに機能しておらずキキョウの荒い息もどこか遠く聞こえる。強烈な眠気に襲われ、そこでリンドウの意識はふっと途切れた。

 次の日の朝起き出してみると、珍しく早起きをしていたキキョウが先般のこんにゃくを四つ切りにして念入りに洗っていた。嫌な予感がしつつも何に使うのですかと聞くと、煮付けを作るという。やめてくれといくら懇願しても洗えば食えるし食い物は無駄にしちゃいけねぇだろの一点張りで聞いてはもらえなかった。
 結局キキョウは鶏肉、人参、牛蒡、蓮根をミツバから貰ってきて、問題のこんにゃくを加えて筑前煮を作ってしまった。仕事をこなしながらもそれを平気で口にするキキョウが気になって仕方がない。そして最悪な事に、そこにブーケガルニが通りかかってしまった。
「おーキキョウ、何食ってんだ? 美味そうな匂いだな~!」
「お前さんも食うか?」
「おっ、それじゃお言葉に甘えてありがたく食わせてもらうぜ~!」
 そんな会話が背後で交わされる。あのこんにゃくがどう使われたものであるのかも知らずにブーケガルニが口にするのかと考えるとどうにもこうにも生きた心地もせず、リンドウはそっとその場を離れたのだった。

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