待ち合わせ場所には既にデミウルゴスが待機していた。〈上位道具創造クリエイト・グレーター・アイテム〉で創り出した鎧を纏い冒険者モモンの姿になったアインズは、歩速を速めて歩み寄っていった。
 デミウルゴスは半悪魔形態を取り服装も地味なローブを着ている。半悪魔形態はあからさまに異形なので住民に恐怖を与えるかもしれないが、ヤルダバオトがあまりにも仮面を付けただけのデミウルゴスそのままだったので、人前に出る時にはヤルダバオトと結び付くような要素がない方がいいと考えての措置である。デミウルゴスならば(ゲヘナが急な作戦だったとはいえ)あそこまでそのままの姿では後々困るかもしれないとかその辺りも考え至りそうなものだが意外と自己顕示欲が強い所があるのかもしれない、と他愛もない考えをアインズは浮かべた。
「おはようございますモモン殿、本日はよろしくお願いいたします」
 モモンの姿に気付いたデミウルゴスは恭しく頭を下げそう挨拶してきた。さすがにアインズ様と呼んだり必要以上の敬意を払ってきたりといったことはない、よく分かっている。説明の手間が省けて助かる。デミウルゴスのこういう察しの良さに大いに助けられているのは確かなのだが、それ以上に斜め上の方向に察せられて相当振り回されているので微妙な心持ちを覚えながらアインズは鷹揚に手を上げ礼に応えた。
「おはようございます、では早速参りましょうか」
「はい」
 モモンが先に立って歩き出し半歩後をデミウルゴスが続く。地下聖堂の王クリプトロード死の騎士デス・ナイトの敬礼を受け門を抜けて館の外に出る。エ・ランテルの三重の城門の内一番内側のこの館がある区画は行政府と食料庫がある事はデミウルゴスももう知っている筈である。どこから案内しようか、と考える。
「あちらが市民が様々な手続きを行ったり戸籍の整理を行ったりといった業務を取り仕切っている役所や簡易裁判所など行政府、そちらに進むと食料庫だ。どこから見て回ろうか」
「そうですね、では食料庫からお願いいたします」
 そのデミウルゴスの答えに、アインズは意外さを覚えつつも頷いて歩き出した。デミウルゴスならば役所の方を見たがるかと思っていた。ゆったりとした速度で歩くアインズとデミウルゴスの横を魂喰らいソウルイーターに牽かれた馬車が次々通り過ぎていく。中に積まれているのは帝国から買い付けたり所領の村から納められたりした麦だ。
「食糧の備蓄は順調に進んでいるようですね」
「ああ、ここに加え村々にも備蓄用の蔵を作り次の作戦に必要な量はもう十分に蓄えられている。目下の問題は、その作戦が済んでしまえばこの都市にこんなにも広大な食料庫は必要ない、ということだな」
 ここには市民はおらず人目を憚る必要もない為、アインズはモモンとしてではなくアインズとしてデミウルゴスの問いに答えた。エ・ランテルの広大な食料庫は元々ここが軍事拠点であり、帝国と王国の戦争に際しては最前線となり補給基地となるが故に必要だったものだ。飲食不要のアンデッドが兵となる魔導国にはそもそも必要のないものだし、王国を併呑してここに蓄えた食糧を飢えた王国の民に売り払ってしまえばいよいよ存在意義がなくなる。食料庫がいらないからといって跡地にアインズの巨大立像を建立しましょうとか言われても困るのだが、無駄な食料庫の敷地をどう利用するかについての妙案をまだアインズは思い付いていなかった。
「でしたら……そうですね、帝国の闘技場のように何か民共を楽しませるような施設を作られてはどうでしょう。国営の賭博場であれば収益も見込めますし、良いガス抜きにもなりましょう」
「賭博か……成程な。闘技場には敷地が足りんかもしれないが、他の賭博ならば十分な施設が作れるか。何軒か作ってこの辺りを歓楽街にするのも悪くはないな。しかし、この世界にはそもそもどのような賭博があるのだろうな?」
「その辺りは調査が必要となって参りますね、王国の作戦まではまだ時間がございますし、アルベドに諮って調査の人員を揃えます。合わせて古代図書館アッシュールバニパルでもこの世界でも広めるのが容易そうなゲームについて調査させましょう。まあ、アルベドはそもそもこの区画に人間が足を踏み入れる事にいい顔をしないかもしれませんが」
「ナザリックの者の人間嫌いも困ったものだな。そういえば聞いた事がなかったが、そういうお前は人間が嫌いではないのか?」
「わたくしは人間はそれ程嫌いではございません、いえ、どちらかというと好ましく思っております」
「ほう? そうは見えないが……」
 アインズの脳裏に浮かんでいたのは、聖王国の捕虜収容所にされていた街で塔の奥に隠されていた様々な内臓を滅茶苦茶に繋ぎ合わされてはらわたをはみ出したまま死なない程度に癒やして放置してあった人間達だった。精神がアンデッドと化しているアインズでもあれを見せられたのはなかなかにグロ耐性を要求された。あの扱いが出来るのに人間が嫌いではないというのは実に不思議だ。捕虜の中には繰り返し背中の皮を剥がれた人間もいたというし。そういう残虐な行為を楽しめるからこその悪魔なのだろうが、別に嫌いなわけではないどころか好きというのはアインズにはよく理解出来ない。
「確かに基本的に愚劣な下等生物ではありますが、その中途半端に知恵の付いた愚劣さが実に好ましいですね。それに利用価値もそれなりにございますし、我が国の民であれば蔑む態度を見せるのは下の下策でしょう」
「……態度に出さなければそれでよい」
 深入りすると何か聞いてはいけない事を聞いてしまう事になりそうな予感がしたので、それ以上の深入りをアインズはやめることにした。デミウルゴスならばナーベラルのように誰彼構わずあからさまに蔑んだ態度を取るようなこともないだろう。
 そのまま二人は食料庫が両脇に立ち並ぶ道を進んでいく。このまま半周すれば行政府の区画に着く。一日時間を取っていることだしそう急ぐこともないかと思いアインズはのんびりと歩を進めた。不思議なのは斜め後ろを歩くデミウルゴスが異様なほど静かだということだ。ボロを出してしまうような事態になっても困るからあまり喋らないで欲しいのは確かなのだが、そういえばこの前の玉座の間での報告会でも様子が妙だったと思い出す。
 何か悩みでもあるのだろうかとは思うのだが、デミウルゴスが悩むような事であればアインズには解決が到底不可能な複雑怪奇な事柄かもしれない。悩みを解決してはやりたいが相談されるのがあまりに高度で難解な悩みだったりしたら至高の叡智の持ち主であるアインズ・ウール・ゴウンという化けの皮が見る間に剥がれてしまうので何かあったのかと気軽に聞けないジレンマがある。どうしたものかとアインズが思いつつ歩き続けていると、やがて道の先に行政府の建物群が見えてきた。
「あそこが行政機関が集まっている区画だな。エ・ランテル一都市だけを治める為に使われていたものをそのまま流用しているから国が大きくなればその内齟齬が出てくるだろう、いずれ大幅な再開発が必要になるかとは思うが」
「成程。その辺りはアルベドの得意分野でございますね。裁判所も興味深いですがエ・ランテルでは現在これといった犯罪はなくなっていると聞き及んでおりますので、閑古鳥が鳴いているのでしょうか」
「土地関係やら商売の揉め事や離婚の調停などが主になっているようだな」
「世に争いごとの種は尽きまじ、ですね。人間とはかくも愚劣で矮小、いや非常に興味深い。ですが他の区画もございますし今回は役所だけを見学させて頂きたく存じますが、構いませんでしょうか」
「構わん、では行こう」
 役所に二人が入ると、場は一気に凍り付いた。英雄モモンが隣にいるとはいえデミウルゴスの異形の姿に不安を覚えて市民達が怯え、デミウルゴスという上位者とそれから何よりアインズという支配者が入ってきたことにより職員として働く死者の大魔法使いエルダーリッチ達が異様なまでの緊張感を見せる。
「見学だ、いつも通りにしていてくれ」
 そう軽く声をかけるものの、いつも通りに出来る者などこの場にはいないだろう。企業で言うなら社長や会長が突然抜き打ちで現場に現れるようなものである。しかも圧倒的上位者の悪魔を連れて。可哀想な事をしたなとは思うが今日はデミウルゴスの希望を叶える事が第一なので我慢してほしいとアインズは心の中で詫びた。
 緊張感溢れるロビーをゆっくりと歩く。左右を見渡してデミウルゴスは成程、と呟いた。
「建物の造り自体があまり機能的とは言い難いですし、何より雑然としすぎている。栄光あるアインズ・ウール・ゴウン魔導国を取り仕切る中核を担う行政府としての品位と品格がこの場には足りないですね。これは早急に相応しい建物に建て替えるよう計画を立てなくてはなりません」
「あまり格式張った建物になって敷居が高くなり結果市民が訪れづらくなっては困るのだが」
「ええ、そうですね。利用者の事を考えるのはとても大切です。その辺りも人間や山小人ドワーフなどから意見を聞いてよく相談する事にいたしましょう」
 穏やかな声でそう答えるとデミウルゴスは大きく裂けた口の両端を上げ笑った。その悪魔然とした笑みを見た市民から軽く悲鳴が上がる。仕方がないだろうなとアインズは思った。半悪魔形態のデミウルゴスは見るからに邪悪な蛙の悪魔だ。エ・ランテルでは異形種も珍しくはなくなってきたとはいえ悪魔は流石にいない、市民達が怯えるのも無理からぬことだ。普段の姿も悪魔と分かるとはいえあの品のいい微笑みを見せられれば女性はうっとりしたろうにな、と思うと誰に対してだかは分からないが申し訳なさが募る。デミウルゴスは怯えられようが何とも思っていないようなので市民に対して申し訳なく思えばいいだろう、多分。
「この者は魔導王の側近、君たちに無闇矢鱈に危害を加えたりはしない。万一そのような事があっても私が止めるので安心してほしい」
 怯えた者達へそう声を掛けると、不安を消しきれない様子ながらも市民達は頷いた。モモンへの市民の信頼は絶大だ、だがこんな風に名声と信頼を統治に利用出来るなど冒険者になる事を考えた当時のアインズが思い付いていた筈がない。アインズの考えていた事などこの世界で活動する為のアンダーカバーとして情報収集と現地資金調達に使えればいいな程度である。統治に使う事を思い付いたのはあくまでもデミウルゴス(と多分アルベド)なのだがこの誤解もどう解いていいものやら分からないし、そもそも解いてはいけないのではないだろうかという気もする。
 役所を出た後は城壁を抜け街で一番賑やかな区画に出る。三カ国の商人や数多くの冒険者が引っ切りなしに往来していた往時程の賑わいはまだ取り戻せていないが、亜人や異形種も交えた往来はそれなりに賑やかだ。交易都市としてのエ・ランテルの賑わいもどうにか取り戻したいものだが、それもデミウルゴスに相談してみれば何かいい案があるかもしれないとアインズは思い付く。
「私が冒険者として活動していた頃はこの街はもっと賑やかだった。王国、帝国、法国の三カ国の商人や冒険者などで活気に溢れていたものだ」
「それは、魔導王陛下の治世に対する批判と受け取ってよろしいのでしょうか?」
「結果としてはそうなるだろうな。ただ私は、この街が昔の賑わいを取り戻し人々の顔に笑顔が戻ればいいと考えているだけだ」
 その言葉にデミウルゴスは、ふむ、と手を(多分)顎の辺りに掛けしばし考える。
「この国は様々な種が共存する場所、交易相手を何も人間に限定する事もないでしょう。人間の勢力圏の外にある亜人の国との交易を魔導王陛下に奏上してみましょう」
「亜人の国か、成程な。だがそもそも交易が成立するのか?」
「亜人共の世界では力こそが正義です。こちらの力を少し見せてから交渉に持ち込めば十分応じてもらえる公算が高いと考えますよ。無論、その前に相手の戦力等の情報を十分に収集しておく事は大前提となりますが」
 人間の勢力圏の外の亜人の国との交易、成程アインズは思い付きもしなかった発想だった。調査に時間は掛かるだろうし交易ルートの確保等の問題もあるがかもしれないが十分検討の価値はある。しかしその前にそもそもどのような国がどこにあるのか、という基本的な情報が不足している。未踏の領域を開拓する冒険者の育成は喫緊の課題と思われた。ナザリックの手の者を使って法国や評議国を万一にも刺激するのは出来れば今は避けたい。
「ならばその調査の為には亜人の国まで到達出来る程の力を持った冒険者の育成が必要になってくるだろうが、アンデッドの統治する国に人が集まるとは思えんな」
「育成する冒険者にしても人間のような脆弱な者に限定する必要はありません。アインズ様の崇高なる理念を理解すれば亜人にも冒険者になりたいと思う者はおりましょう。どの程度人が集まっているのかも気になりますね」
「冒険者組合はもうすぐだが……少し待て。あそこの店の串焼き肉はなかなか美味いとナーベが言っていた、食べてみるといい」
「ほう、彼女が。それならば頂きましょう」
 デミウルゴスを待たせアインズは串焼き肉の露店にやや早足で歩いて行った。
「これはモモン様、いつもご贔屓にして頂いてどうも」
「うむ。一本貰えるか」
「はい、どうぞ」
 肉を受け取りいつものように代金を払おうとすると、店主は恐縮した様子で手を上げた。そういえばアインズがこの店から串焼き肉を最後に買ったのは魔導国建国前、もう大分前の事である。その後パンドラズ・アクターがどう対応していたのかが分からない。まさかこんな所で引き継ぎ不足を露呈することになろうとは、と思うもののこんな細かい所までアインズが想定している訳がないので仕方がない。
「そんな、我々を守って頂いているモモン様から代金なんて受け取れません」
「そんな事を言ってくれるな、こういう所はしっかりとしておかなければいけないだろう。労働の報酬として正当な対価を受け取る事は基本的だがとても大切な事だ、その点は私も魔導王の言う事に賛成している。魔導国の国民としては、きちんと対価を受け取ってほしいものだな」
「モモン様……!」
 そうしてようやく代金を受け取って貰えた事に内心ほっとしてアインズはデミウルゴスの元へと戻った。モモンに対する露店の親父の崇敬の念が爆上がりしている事は勿論気付いていない。
 頂戴いたします、と品良く串焼き肉をデミウルゴスは受け取ったので品良く食べるのだろうとアインズは思っていたのだが、デミウルゴスは口を開けると串を飲み込む勢いで口の中に入れ刺さっていた肉を全て口の中に収めた。普段の人型ならばいざ知らず、大口の半悪魔形態では品良く食べるというのもなかなか難しいのかもしれない。
「成程、豚の餌としてはなかなか上等です。腕がいいのでしょうね、もっと質のいい肉を使えるようになれば更に上の味が見込めます。それから味付けが少々大味ですので、調味料なども工夫の余地があるかもしれません」
「豚の餌とかナーベのような事を言うな……。しかし、食肉用の家畜の飼育は検討してもいいかもしれんな。味のいい肉料理が食べられるというのは魔導国としての売りにもなるだろう。その辺りのノウハウは既に牧場を営んでいるお前が一番知っていそうだが」
「アベリオンシープは食用には適しませんので……。ですがアインズ様の命があれば既に住民用に畜産を営んでいるカルネ村をモデルケースとして質の高い食肉用の牧場を作るというのも確かに面白いかもしれませんね」
「それから調味料か……この世界では魔法で作り出しているそうだが」
「低位階の魔法でしょう、不純物の多いあまり質の良くないものしか作れないようで。紙を作る魔法は位階が上がると質の高い物が出来ると耳にしたことがございますので、調味料についてもより上の位階の魔法を開発させる、という方法もあるかと。同時に、それに拠らない岩塩や塩湖等からの食塩の精製等についても検討してもよろしいでしょう。とはいっても海が真水という話ですので、岩塩や塩湖が存在していない可能性もございますが。そもそもこの世界の人々は位階魔法が伝わって調味料を作る魔法が開発される迄はどうやって調味料を確保していたのでしょうね。原材料さえ確保できれば精製などの技術は古代図書館アッシュールバニパルで調べて魔導国の国民向けに質の高い調味料を作る事も出来るでしょう」
「なかなか興味深い問題だな……魔法の開発依頼も含めて今度フールーダにでも聞いてみるか。いや、帝国魔法省をちゃんと通して依頼した方がいいか? 食関連については私だけではなかなか気が回らなくてな、こうして誰かと街を歩くというのはやはり有意義なものだ」
 話している内に冒険者組合の前へと辿り着く。ここだとアインズに言われ建物を見上げたデミウルゴスの言いたいことは分かる。品位と品格が足りないと言いたいのだろう。国の機関となったわけだし冒険者組合も国の機関として見合った建物にすべきか? と考えるが組織の形がまだはっきりしていないのに箱だけを大きく立派にしても仕方がないというのも事実だ。とりあえずその問題は後回しにする事にして、アインズはドアを開け中へと進んでいった。
「モモン様、いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょう」
 受付嬢がわざわざカウンターから出てきてモモンを出迎えるが、後から入ってきたデミウルゴスを見て固まる。アンデッドや天使の次は悪魔を出迎える事になるとは彼女も思わなかっただろう。前に来た時一緒にいたメイドも人間じゃなくて人造人間ホムンクルスだ、と教えたらどんな顔をするのかには少し興味があったがさすがにそれはやりすぎだし別に遊びに来た訳ではないので早々にアインズは用件を切り出す事にした。
「彼は魔導王の側近だ。今日は彼に街を案内していてな、冒険者組合の現状についても話を聞きたいそうなのだ。組合長殿はおられるか?」
「はい、今呼んで参ります」
 一礼すると受付嬢は階段を上がっていく。しばらく待つと受付嬢とアインザックが階段を降りてきた。
「やあモモン君、先日は世話になった、どうもありがとう」
「いえ、お気になさらず。組合長、こちら魔導王の側近デミウルゴス殿です。何でも冒険者組合について話を聞きたいのだそうで」
 デミウルゴスを紹介するとさしものアインザックもぎょっとした顔をしたが、あの魔導王の配下ならば何でもありとでも納得してくれたのかすぐに平静の様子へと戻った。冒険者組合の現在の状況を知りたいのは本当はデミウルゴスではなくてアインズだ。長いこと聖王国に出張していたのでその間何か変化があったのかなど知りたい。その辺りはデミウルゴスならば(どういう方向にかは知らないが)察してくれるだろうと思い特に説明は入れず突き進む事にした。
「只今ご紹介に与りましたデミウルゴスと申します、どうぞよろしくお願いいたします。さて、国家の下での冒険者組合の再編、というのが差し当たってのこちらの業務かと認識しておりますが、進捗状況など伺えますでしょうか? 仕組み作りはどの程度進んでいるのか、組織としての完成度はどの程度のものなのか、人員の集まり具合、質、その他諸々をお聞かせ願いたいのですが」
「……失礼ですが、報告は定期的に書類で出させて頂いておりますが」
「私はこれまで遠く離れた地で仕事をしておりまして、首都たるこのエ・ランテルの情勢には然程詳しくないのです。提出して頂いた書類には確認の意味でも後程勿論目を通しますが、本日の事はアインズ様にもご報告申し上げますので出来ればお答え願えれば助かるのですがね?」
 ナイスだデミウルゴス、ともし人目がなかったら心からの賞賛をアインズは送っていただろう。書類で出してくれていたアインザックには気の毒だが、書類を一々探し出して確認するより今ここで聞けた方がアインズにとっては手間も労力も省けて大変助かる。魔導王に報告する、と言われてはアインザックもそれ以上強く出られなかったのか了承を返し、組合長室で冒険者組合の現状について詳しく聞く事が出来た。
 人は集まりつつあるものの実力は大体がカッパーアイアン相当、育成は必須のようだ。この前のマーレの報告では冒険者育成用のダンジョンは概ね完成しつつあるようだからそろそろ実用に向けての試運転段階に移るべきかもしれないと考える。
 亜人や異形種からも冒険者を募る件について利点も合わせてデミウルゴスが話してくれる。有能なのは助かるが斜め上の方向にかっ飛んでいく可能性を秘めているので話を任せきりの今の状況は実はとても怖い。だが今はアインズはモモンなので余計な口を挟むのもおかしい為アインズは何も言えずにいた。
「それであれば、帝国で行ったように魔導王陛下御自らご説明頂くのが一番効果的かと。亜人や異形種は強者に従う傾向が殊の外強いですので、強き者の言葉であれば真剣に耳を傾けます」
「それも道理ですね……その件は私からアインズ様に奏上してみましょう。組合側としては人間の亜人や異形種に対する忌避感への対策が必須かと思いますがその点はどのように考えますか?」
「魔導国の現状であればそれ程の心配はないとは思いますが……種族を超えた連帯感を育めるような訓練でも行えれば状況も変わってくるのではないかと」
「成程……共に死線を越えれば多少は連帯感が生まれますかね? それであれば現在作成中の冒険者育成用ダンジョンには組合側で指定したチームで入る、というシステムにしてはどうですか? チーム構成は人間種亜人種異形種混合です。初回だけ、あるいは所属パーティが決まるまでは組合指定チームで訓練する、という方式ではどうでしょう」
「最初からパーティを組んでいる者は少数ですからその方式でも大きな問題は出ないかと思います。既に所属パーティが決まっている者は対象から外せば異論も出ないでしょう」
「となると……より綿密で精密な冒険者管理の体制が必要になりますね。建物の建て替えと人員の増員が必要でしょう」
「建物はこのままでも特に問題はないかと……」
「栄光あるアインズ・ウール・ゴウン魔導国の傘下たる機関なのですから、このような見窄らしいあばら屋では困ります。確か冒険者への武器防具の貸し出しなどもアインズ様はお考えのようですのでこの建物では手狭ですし用途に見合った設計も必要となるでしょう。近日中に山小人ドワーフの建築工を寄越しますので具体的な間取りなどについてその者と話し合うように。外装はこちらで指定します。人員についてもこちらで試算を出して各部署に必要な人数を知らせますのでそれに従い人員を集めて教育して下さい」
「はぁ……」
 ナザリックを見慣れているデミウルゴスからすればこの冒険者組合は確かにあばら屋かもしれないが、この世にナザリックのような場所がある事すら知らないアインザックは呆気にとられている。すまないアインザック、心の中だけでアインズは詫びた。外装をあまり派手にされても(アインズの心理的な要因で主に)困るので後で釘を刺しておく必要があるだろう。
 それにしてもこのどんどん自分から仕事を作り出して背負い込んでいくデミウルゴスのスタイルにアインズは不安を覚えていた。ようやく聖王国関連が一段落ついてデミウルゴスの手が少し空いたと思ったらこれなので(疲労しないのは知っているが)過労死とかしないだろうかと心配になる。過労死はしないのも知っているのだがストレスが溜まったりはしないだろうか、もしかして仕事のしすぎで様子が少しおかしいのでは、次々と心配が浮かんできて、こんな自分からブラック真っ逆さまの働き方をするデミウルゴスの意識をどうにか改革する必要があるのでは、とホワイトな働き方の国を目指すアインズは考えた。上役がまず手本を示さなければ下の者は付いては来ない、魔導国では魔導王アインズと宰相アルベドに次ぐ地位の高さの階層守護者たるデミウルゴスがこれでは困るのだ。この国をブラックにはしないとヘロヘロさんにアインズは誓ったのだ。
 毎日農作物の世話をする必要がある農民は別として、街で暮らす者には週一でいいので休日を普及させたいと考えているし、その草案を(アルベドを納得させるようなクオリティで)作らなければならない。アインズの言葉ならば黒と言えば白も黒となるなんていうのは時と場合によるようで、人間を下等生物と蔑んでいて奴隷のように働けばいいのだから休暇など過ぎた贅沢、とか言いそうなアルベドを納得させるのはなかなか骨が折れそうである。
 大体の話も終わったようなので冒険者組合を出て城壁を抜け、今も建設が行われている亜人・異形種の住居区画を進む。山小人ドワーフの監督のもと骸骨スケルトンを始めとした低級アンデッドが休みなく働き整地や建築を行っている。山小人ドワーフの国でも労働力としてのアンデッドは評判がいいようだし、その実績をもって帝国にももう少し積極的に売り込みをかけてもいいかもしれないな、と上機嫌にアインズは考えた。
「モモン殿……実は、折り入ってお話ししたい事があるのですが。出来れば二人きりで」
 恐る恐るといった様子で唐突にデミウルゴスにそう言われ、疚しいところなど何もないのにアインズは思わずどきりとした。二人きりで一体何を話したいというのだろう。何もミスは犯していないつもりだがついに化けの皮が剥がれてしまっただろうかとつい悪い方に考えてしまう。
「いいだろう、ならば案内のついででもある、共同墓地へ行こう。あそこならば人目もないから誰に聞かれる心配もなかろう」
 出来る限り平静を装ってアインズが答えるとデミウルゴスは僅かに頷いた。やはりどうも様子がおかしい。不審には思うものの人には聞かれたくない話なのだろうからとりあえず墓地へと向かう。
 魔導王の側近を案内して街を回っている旨を門番に告げ門を開けてもらい墓地へと入る。アンデッド騒ぎで入った時も思ったがエ・ランテルの共同墓地は墓石が雑然と並びあまりいい雰囲気ではない。話に聞いたところでは新しい死者を葬る為に前に埋めていた骨を掘り返し砕いてしまうような扱いをするそうなので死者というか死体への畏敬の念はあまりないようだから、墓地もいっそ大掛かりな整備計画を立ててもいいかもしれないとぼんやりとアインズは考えた。しかしお骨への畏敬の念の薄さは元日本人の鈴木悟アインズには理解が難しい感覚である。さしもの鈴木悟も弔った母の骨が掘り返され砕かれたりしたら激怒しただろう。
 やや気詰まりながらも双方無言で歩き続け、やがて墓地の奥深く、カジットとかいう愚か者が儀式を行っていた霊廟の前へと到着する。ここまで来れば誰にも聞かれる心配はないとは思うものの油断は禁物、アインズはアイテムボックスを開き盗聴防止のマジックアイテムを取り出して効果を発動させた。
「さて、話を聞こうかデミウルゴスよ。お前は私に何を言いたいのだ? 何やら重要な話のようだが……」
 そうアインズが声を掛けるとデミウルゴスの肩が震えた。どうした? と思っているとデミウルゴスは勢いよく地面に手を突き土下座の体勢をとった。突然の行動にアインズは面食らう。
「何卒、何卒アインズ様! わたくしをお見捨てにならないで下さいませ! いえ、わたくしだけならば如何様にも耐えましょう、この命をもってお詫びする事も何も惜しくはございません、ですが、わたくしを疎まれる余りに万一アインズ様がお隠れになるような事があっては他の者に申し訳が立ちません! 何卒、何卒……!」
 土下座のまま必死な声色で懇願するデミウルゴスの言葉の内容にもアインズは大いに困惑させられた。一体こいつは何を言っているんだ? というのが素直な感想である。一体何がどうなってどこからアインズがデミウルゴスを見捨てるという話になっているのだろう。話の筋道がまるで見えない。
 とりあえず訳も分からず土下座されているのも困惑の一因だし、魔導王の側近がモモンに土下座している光景というのも万一誰かに見られたら説明が面倒な光景だ。アインズはデミウルゴスの前に屈み込み、肩に手を掛けた。
「落ち着け、とりあえずまずは顔を上げるのだデミウルゴスよ、話はそれからだ。一体何がどうして私がお前を見捨てるという話になっているのだ? 順序立てて最初から説明せよ」
 出来るだけ穏やかにそうアインズが声を掛けると、躊躇いながらもデミウルゴスは顔を上げた。
「恐れながら……大変罪深い許されざる行為であったとは思うのですが、先日アインズ様が第六階層を訪れておられた時に偶然わたくしも居合わせまして……その、聞いてしまったのです。アインズ様がマンドラゴラに話されていた内容を……」
 デミウルゴスらしからぬ訥々としたその告白の内容に、アインズの頭の中は真っ白になった。その後、強烈な動揺が襲い掛かってきて沈静化がかかる。
 ……あれ、聞かれてたの!?
 あの愚痴を聞かれていたのならば今更アインズが何をどう取り繕おうが無駄である。取り繕うにしてもいい案がまるで浮かばない。
「愚かなわたくしめに何卒お教えください、わたくしはアインズ様について一体何を誤解しているのでしょうか? 話をしたくないからと遠い地へ飛ばされる程に疎まれるような不敬を働いてしまったのでしょうか? 己で気付けぬ不明を恥じる他ありませんが、申し訳ございません、どれだけ考えようとも答えがまるで見つからず……!」
「よい、デミウルゴスよ。お前が悪いわけではないのだ。お前は何も悪くはない、考えてもみよ、お前はナザリックに成功と利益しか齎していない。お前を疎んじる……というか遠ざけていたのは私の勝手な都合だ、すまなかった」
「アインズ様が謝られる事など何も!」
「いや、全ては私の責任なのだ。あの愚痴を聞いていたのであろう? ならば分かった筈だ。支配者としての私は取り繕った姿に過ぎず、お前達の考えるような万年先を見通すような智者でも何でもない。お前達を騙していた事に怒ってもいいのだぞ」
「とんでもない事でございます! それにアインズ様の超越した叡智はこれまでの結果に全て表れております!」
「……よいか、これから先言う事は全て真実だ。謙遜も何もない。お前がもし私の言を信じない素振りを見せたならば話はそこで終わりだ。分かったな」
「はっ……」
 デミウルゴスが了承を見せたのを確認して、アインズは深く長いため息をついた。ついにこの時が来てしまった。ふとした事から化けの皮を剥がされるよりは良かったのかもしれないが、自分で剥がなければならないというのもなかなかに苦しいものがある。そしてデミウルゴスの忠誠心の篤さはよく知っているが、アインズが大したことはない人物だと知ってそれでも尚今までのような忠節を尽くしてくれるのかどうかについてはまるで確信が持てない。それでもあのマンドラゴラへの愚痴を聞かれていたのならば何も誤魔化しようがないのだから仕方がないだろう。全てを詳らかにするしかない。後の事は後で考えることにしよう、と腹を括りアインズは口を開いた。
「お前の誤解は、私がお前以上の智者であるという事だ。お前は私の数百倍、いや数千倍は頭がいいだろうな」
「恐れながら、信じぬという訳ではございませんがそれではこれまでのアインズ様の成された数々の業績に説明が付かなくなってしまいます。カルネ村をお救いになったのはそれでは一体……」
「主に気紛れだ、それにこの世界での己の力を確認するという狙いしかなかったな。決して世界征服の為の実験などではなかった。この世界への足掛かりとしてはいい拠点が確保できたが、それとて明確に狙ってやったわけではない」
「では、冒険者モモンは……」
「情報収集と通貨獲得の手段程度にしか考えていなかったぞ。統治に使うというのはあくまでお前が考えたことで私はそれをさも自分が考えていたように装った。腹は立たないのか」
「偉大なる支配者として我々の前で振る舞って下さっていた事に深く感謝こそすれ腹を立てるなどそのような恐れ多いことがどうして出来ましょうか。しかし帝国をあの短期間で無血で属国化した手腕などわたくしでは到底及びも付かぬ事……申し訳ございません、アインズ様が真実を仰っているという事は重々承知しておりますが、未だ信じかねるというのが正直なところでございまして……」
「帝国についてはどうしてああなったのか私の方が聞きたい。私はただ冒険者の勧誘に帝国の闘技場に行って、そこにたまたまジルクニフが観戦に来ていたので挨拶しただけだ。そうしたら突然属国になりたいと言われた。ああいうのを青天の霹靂と言うのだろうな」
「ドワーフの国との外交交渉の見事な成功は……」
「あれはゴンドという現状に不満を持つ水先案内人にたまたま運良く出会えたのが大きかった。そうでなければドワーフの住む都市さえ見つかったかどうか危ういし、見つけたとしてもクアゴアに滅ぼされた後だったろうな。あれは最高のタイミングだった」
 答えると、デミウルゴスは言葉もないようで呆然とした表情で黙りこくった。言ってしまったな、という思いはあるもののある種肩の荷が下りたような心地もして不思議と心が軽くなるのをアインズは感じた。これだけの無様を正直に告白したのだ、幻滅されても愛想を尽かされても仕方がない事をやらかしてしまったのだからもっと後悔すべきなのだろうが、それならそれでという諦めに似たものがアインズの胸にあった。もしこの場で反旗を翻されたとしても対処する手段は無数にあるのだし、あの愚痴を聞かれていた以上どう足掻いても誤魔化しようがなかった。なるようになれ、という自棄糞のような心境かもしれない。冷静に考えればデミウルゴスに反旗を翻されるなど有り得ない程の痛手だし信頼を失うような言動は全力で避けるべきなのだが、本音を全部聞かれていた以上もうどうしようもない。
「お前と話をする事を避けていたのも私が智者ではないという事が理由だ。お前ならば少し突っ込んだ話をすれば私の頭脳の程度など容易に見抜いてしまうだろうからな、その事態を恐れていたが故だ。遠方での仕事を命じたのは単純にお前が一番適任だろうと判断したからだがあまり顔を合わせなくて済むので都合が良かったのも事実だな……とにかくお前が何か不興を買うような行いをしたという事ではない。情けない支配者だろう、幻滅したか」
「幻滅などそのような事……! アインズ様は常に我々の為に偉大なる支配者としての態度をお見せ下さっていたのです、感謝しかございません」
「騙されていたとは思わないのか、私はお前達の思うような偉大な支配者などではないのだぞ」
「例えアインズ様が全能でなくとも、智を必要とするならばわたくしやアルベドが、武を必要とするならばコキュートスやシャルティアが力の限り補佐いたします。その為にこそ我々は存在するのです。むしろアインズ様のお手を煩わせお心を悩ませていた今までについてこそ我等の至らなさをお詫びせねばなりません」
 デミウルゴスの訴える声色は必死で余裕がなく、そこに嘘偽りの色などは全くなかった。必要な用心とはいえ、真実を知れば反旗を翻すのではないかと疑って身構えていた己の身汚さをアインズは少々恥じた。NPCの忠誠は絶対と安心しきって用心を怠るのは愚か者の所業だろうが、普段は優雅な笑みを絶やさないデミウルゴスがこうも必死に訴えているのだからこの言葉は恐らくは心からのものなのだろう。
 とりあえず、少し前からデミウルゴスの様子がおかしかった原因は判明した。見捨てられるのではないかという不安、それだけでこの悪魔は子供のように怯えていたのだ。NPCは友人達の子供のようなもの、とは思っていたものの自分には扱いきれない程頭が切れすぎるし常に冷静なデミウルゴスがそんな一面を見せるとは考えもしていなかったアインズは一抹の申し訳なさと共に意外な驚きも抱いていた。
「お前達はよくやっている、この件については……隠し切れなかった私のミスだろう。周囲の確認を怠るべきではなかったな」
「そんな事を仰らないで下さいませアインズ様。今回の事がなければわたくしはアインズ様のお心を知る事が出来ずにこの先もずっと御身を悩ませ続けていたのです。お仕えできる喜びを甘受するばかりで真のお心をお察しできなかったこれまでの不忠も誠にお詫びのしようがございません」
「よせ、お前の忠義はよく分かっている。いや、ナザリックの全ての者の忠義、と言うべきだな。さて、お前にはこうして真実がバレてしまった訳だが、私はこの先どうすればいいと思う」
「全てはアインズ様のお心のままに。もし他の者にも知らしめろという事であればわたくしから皆によく説明いたします」
 期待していたのはそういう答えではなかったのだが、と判断を丸投げされた事にアインズは若干の恨めしさを感じた。自分も説明をデミウルゴスに大体丸投げしていることは勿論棚に上げている。
「……いや、いい。お前達は偉大な支配者を望んでいるのであろう? ならばそれに応えるのは私に課せられた責務というものだ。お前の期待に応え切れなかったのは申し訳なく思うが」
「なんと慈悲深い……! そのお心こそまさに支配者たるに相応しいものかと」
「世辞はいい。ただな、一つ相談なのだが……お前達の為に支配者である為にする苦労は厭わぬが、一つだけどうしても耐えかねる事があるのだ……」
「アインズ様を悩ませるような事があるのは実に座視しがたい状況です。即座に解決されなければなりません」
「王たるもの不寝番が付くのは当然というのは分かるのだが……せめて隣の部屋で待機させるようには出来ないか……? 二十四時間一秒たりとも一人になる時間がないというのはなかなか辛いのだ」
「それであれば即座に解決いたします。今日の夜から早速ゆっくりとお休みいただけるようになるかと」
「……即答だな、流石というべきか」
 そうしてエ・ランテルの居城に戻り夜を迎えたアインズの寝室には離れた場所にいるメイドを呼ぶための魔法のベルが設置され、夜の間メイドは隣の部屋で待機する事になったのだった。
 渋るメイド達を納得させたのはアルベドの鬼の形相と殺気であり、その背後には「万が一間違いが起こってメイドがお手付きになってもお世継ぎが期待できるという意味では歓迎できるが、私は出来れば君かシャルティアの子供がお世継ぎになってくれる事を希望するね」というデミウルゴスの囁きがあったのはアインズの与り知らぬ事である。

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